相続した車の名義変更手続きと廃車の方法|陸運局・軽自動車・費用まで元銀行員AFPが解説

相続税

Vehicle Inheritance Guide

相続した車の名義変更手続きと廃車の方法

陸運局での手順・必要書類・軽自動車の違い・費用まで
元銀行員AFP田中由美がわかりやすく解説

普通車・軽自動車どちらも解説 廃車の方法も詳しく 自動車税・費用の目安あり

「親が亡くなって車が残されたけど、名義変更はどうすればいい?」「そのまま乗り続けてもいいの?」——相続の中でも、車の手続きは見落とされがちなポイントです。不動産や銀行口座と違って「すぐに困らない」ため後回しにされやすいですが、名義変更をしないまま乗り続けると自動車保険が無効になるリスクや、事故時の補償問題が生じることがあります。また、廃車にする場合も正しい手順を踏まないと自動車税の請求が止まりません。この記事では、相続した車の名義変更・廃車手続きを、必要書類・費用・注意点まで含めて元銀行員AFP・相続診断士の田中由美がわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 相続した車を名義変更しないとどうなるか
  • 普通車の名義変更に必要な書類と陸運局での手順
  • 軽自動車の名義変更に必要な書類と軽自動車検査協会での手順
  • 廃車(永久抹消・一時抹消)の手続きと必要書類
  • 自動車税・自動車重量税の還付と手続き
  • 相続した車を売却する場合の注意点
  • 手続きにかかる費用の目安

車も相続財産——名義変更しないまま乗り続けるリスク

亡くなった方が所有していた車は、預貯金や不動産と同じく相続財産です。相続発生後は相続人が引き継ぐことになりますが、名義変更(移転登録)をしないまま使い続けることは法律上問題があり、実際に様々なトラブルにつながります。

リスク① 自動車保険の問題

任意保険・自賠責保険は「記名被保険者」や「車両所有者」に紐づいています。名義変更をしないまま事故が起きると、保険が適用されないケースや補償額が制限されるケースがあります。早急に保険会社への連絡と名義変更が必要です。

リスク② 自動車税の請求が続く

自動車税は毎年4月1日時点の登録名義人に課税されます。名義変更をしないままでは亡くなった方の名義宛に引き続き請求が来ます。廃車・売却の場合も名義変更または廃車手続きをしないと税の請求が止まりません。

リスク③ 遺産分割後の手続きが困難に

時間が経つほど手続きに必要な書類(戸籍謄本など)の収集が難しくなり、相続人が増える(数次相続)可能性もあります。できるだけ早期に手続きを完了させることが大切です。

リスク④ 車検・売却ができない

車検は車検証の所有者が手続きします。名義変更していないと、売却時・廃車時にも支障が生じます。特に売却する場合、買取業者から名義変更を求められることが一般的です。

名義変更の期限について

道路運送車両法では、自動車の所有者に変更があった場合「15日以内」に移転登録(名義変更)を申請することが義務付けられています(同法第13条)。ただし、実際には相続手続き全体(遺産分割協議など)に時間がかかるため、現実的には遺産分割協議が完了し次第、速やかに行うことが求められます。罰則規定(過料)が存在するため、できるだけ早めに対応してください。

車の名義変更に必要な書類が並んだイメージ

普通車(登録自動車)の相続名義変更手続き

普通車(3ナンバー・5ナンバーなど登録自動車)の名義変更は、車の使用の本拠地(通常は新しい所有者の住所地)を管轄する運輸支局(陸運局)で行います。

必要書類一覧

書類 取得先・備考
移転登録申請書(第1号様式) 運輸支局の窓口で入手(無料)
手数料納付書 運輸支局の窓口で入手(無料)
自動車検査証(車検証) 車内のグローブボックス等に保管されているもの
遺産分割協議書または遺言書 相続人全員の実印押印が必要(遺産分割協議書の場合)
被相続人の戸籍謄本(除籍) 死亡の事実と相続人全員が確認できるもの(出生〜死亡の連続した戸籍)
相続人全員の印鑑証明書 発行から3か月以内のもの。市区町村役場で取得
新所有者の住民票 発行から3か月以内のもの
自動車税・自動車重量税の領収証 未納がないことの確認のため
車庫証明書 新所有者の保管場所を管轄する警察署で事前取得(申請から約1週間)
ナンバープレート(管轄変更の場合) 住所が変わって管轄の運輸支局が変わる場合、当日持参して返納する

法定相続情報一覧図が使える場合

法定相続情報一覧図(法務局が証明した家族関係図)があれば、戸籍謄本の束の代わりに利用できます。複数の相続手続きを並行して進めている場合は、事前に取得しておくと大変便利です。詳しくは市区町村役場での相続手続きの記事をご参照ください。

手続きのステップ

1

車庫証明書を警察署で取得する(約1週間)

新所有者の駐車場(保管場所)を管轄する警察署に申請します。申請書・保管場所の地図・使用権を証する書面(駐車場の賃貸契約書等)が必要。申請から交付まで通常3〜7日かかります。費用は地域によりますが概ね2,500〜3,000円程度です。

2

必要書類を揃える

上記の書類一覧を参考に、戸籍謄本・印鑑証明書・住民票を市区町村役場で取得します。遺産分割協議書には相続人全員の実印による押印が必要です。書類漏れが一番多い失敗パターンです。事前に管轄の運輸支局に電話確認するか、公式サイトで最新の必要書類リストを確認してください。

3

運輸支局(陸運局)で申請する

管轄の運輸支局に出向き、申請書・手数料納付書を窓口で入手して記入します。書類一式を窓口に提出し、審査後に新しい車検証が交付されます。所要時間は書類が揃っていれば当日中(1〜2時間程度)に完了することが多いです。管轄が変わる場合は新しいナンバープレートに交換します。

4

自動車保険(任意保険)の名義変更も忘れずに

運輸支局での手続きが完了したら、加入している任意保険会社にも連絡して名義変更を行います。保険契約者や記名被保険者を変更しないと、万が一の事故の際に保険金が支払われない可能性があります。保険会社によって手続き方法が異なるため、早めに問い合わせてください。

軽自動車の相続名義変更手続き

軽自動車の名義変更は、普通車(運輸支局)とは窓口が異なり、軽自動車検査協会で行います。手続きの流れは基本的に同じですが、必要書類が一部異なります。

普通車との主な違い

項目 普通車 軽自動車
手続き窓口 運輸支局(陸運局) 軽自動車検査協会
印鑑証明書 相続人全員分が必要 新所有者のみでよい
車庫証明書 原則必要 原則不要(地域によって異なる)
申請書 第1号様式(実印押印) 軽第1号様式(認印可)
相続人の実印 全員の実印が必要 新所有者の認印でよい
手数料 約500円(登録手数料) 無料〜500円程度

軽自動車の場合の必要書類(相続による名義変更)

  • 軽自動車届出済証(車検証に相当するもの)
  • 軽自動車届出済証記入申請書(軽自動車検査協会の窓口で入手)
  • 遺産分割協議書(または相続証明書類)
  • 被相続人の戸籍謄本(死亡が確認できるもの)と相続人の戸籍謄本
  • 新所有者の住民票(発行から3か月以内)
  • 新所有者の印鑑(認印可)
  • 新所有者の印鑑証明書(実印使用の場合)
廃車手続きをする日本人のイメージ

廃車手続きの方法——3種類から選ぶ

相続した車を乗らない・売却もしない場合は廃車手続きが必要です。廃車には目的に応じて3種類あります。

PERMANENT CANCEL

永久抹消登録

車を解体・廃棄して二度と使わない場合の手続き。登録が完全に抹消され、自動車税の課税もなくなります。解体業者(自動車リサイクル業者)に依頼して「解体報告記録」を取得したうえで運輸支局に申請します。

→ 完全に処分する場合に選択

TEMPORARY CANCEL

一時抹消登録

一時的に使用しないが、将来また使う可能性がある場合の手続き。ナンバープレートを返納し、一時的に公道走行できない状態にします。自動車税の課税が停止されます。将来再登録(中古車として再使用)も可能です。

→ しばらく保管しておく場合に選択

EXPORT CANCEL

輸出抹消仮登録

車を海外へ輸出する場合の手続き。輸出業者が代行することが多く、輸出証明書の取得が必要です。日本国内での登録が抹消され、自動車税の課税が止まります。

→ 海外輸出する場合に選択

廃車(永久抹消)の手続き手順

1

自動車リサイクル業者に解体を依頼する

廃車を引き取ってくれる業者(廃車買取業者・ディーラー・カーショップ等)に連絡します。車の状態によっては買取金額がつくこともあります。業者が解体後に「解体報告記録がなされた旨の通知」を発行します。

2

運輸支局で永久抹消登録申請を行う

解体報告後、運輸支局に永久抹消登録申請書・車検証・ナンバープレート・解体報告記録の通知を持参して申請します。相続による廃車の場合は、加えて遺産分割協議書・戸籍謄本・印鑑証明書も必要です。

3

自動車重量税の還付を申請する

車検の有効期限が残っている場合、自動車重量税が月割りで還付されます。永久抹消登録と同時に還付申請書を提出することで、後日口座に振り込まれます(少額の場合が多い)。忘れずに申請しましょう。

自動車税の還付と手続き

相続した車を廃車にした場合、自動車税の還付を受けられる可能性があります。仕組みと手続きを理解しておきましょう。

税金の種類 廃車した場合の還付 手続き先
自動車税(種別割) 月割りで還付あり(廃車月の翌月分〜年度末まで)。4月に解体すれば11か月分が戻る 各都道府県の自動車税事務所(廃車後に還付通知が届く)
自動車重量税 車検有効期限の残存期間に応じて月割り還付あり(2か月以上残存が条件) 運輸支局(永久抹消登録と同時に申請)
自賠責保険料 残存期間分を保険会社に請求して解約返戻金を受取れる(1か月以上残存が条件) 加入保険会社

自動車税の未払いに注意

相続した車の自動車税が未払いのまま名義変更・廃車手続きをしようとすると、窓口で指摘されて滞納税額の一括納付を求められることがあります。被相続人が亡くなった年度の自動車税については、相続人が支払義務を引き継ぎます。手続き前に自動車税の納付状況を確認し、未納分は先に支払いを済ませておくとスムーズです。なお、軽自動車税(種別割)は市区町村税(普通車の自動車税は都道府県税)であるため、問い合わせ先が異なります。軽自動車については市区町村の税務課に確認してください。

軽自動車の名義変更手続きのステップ

1

書類を揃えて軽自動車検査協会へ持参する

軽自動車検査協会の窓口で申請書(軽第1号様式)を入手して記入します。管轄は車の使用の本拠地(新所有者の住所地)によって決まります。普通車と異なり車庫証明書が原則不要なため、書類準備がシンプルです。被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本と、新所有者への相続を証明する書類(遺産分割協議書等)を持参してください。軽自動車検査協会は午前中の早い時間帯に訪問すると比較的スムーズです。

2

窓口で申請・新しい車検証を受け取る

書類を窓口に提出すると審査が行われ、問題がなければその場で新しい軽自動車届出済証(車検証)が交付されます。管轄が変わる場合は新しいナンバープレートに付け替えます。手続きは普通車より簡単で、書類が揃っていれば30分〜1時間程度で完了することが多いです。手数料は地域によって異なりますが、数百円程度と低コストです。

3

自動車保険の名義変更と軽自動車税の変更手続き

軽自動車検査協会での手続き完了後は、任意保険会社への連絡と名義変更を行います。保険の記名被保険者を変更しないと保険が適用されないリスクがあります。また、軽自動車税(種別割)の変更についても、名義変更後に管轄の市区町村に連絡することで、次年度以降の請求先が正しく変更されます。

相続した車を売却する場合の注意点

相続した車を買取業者に売却する場合は、一般的に先に相続人への名義変更を完了させてから売却するのが基本です。ただし、一部の業者では「相続手続き代行付き買取」に対応しているところもあります。

売却前に名義変更する方法

相続人に名義変更後に売却する方法。最も一般的で、どの業者でも対応可能。名義変更の手間と費用(数万円)はかかりますが、手続きがシンプルで安心です。

業者が名義変更を代行する方法

「相続手続き対応」と明記している廃車・買取業者に依頼する方法。業者が名義変更を含む手続きを代行してくれる場合があります。必要書類の準備は依頼者側で行う必要があります。

売却代金の相続税申告

相続した車を売却して得た代金は相続財産の換価(売却)に当たります。相続税の申告が必要な場合は、車の評価額(相続開始時の市場価値)を相続税申告書に含める必要があります。詳しくは税理士に確認してください。

相続した車の評価額(相続税計算用)

相続税申告における自動車の評価額は、「相続開始時における売買実例価額」または「業者間流通価格(中古車市場価格)」をもとに算定します。中古車査定書(業者発行)や自動車ディーラーの見積もりが参考になります。年式・走行距離・車種によって大きく異なりますが、高価な車(高級外車・旧車等)は税理士に相談することをお勧めします。

田中由美の実体験:相続した車でトラブルになったケース

銀行員時代、相続のご相談でよくあったのが「車の名義変更を後回しにしていたせいで困った」というケースです。

あるお客様は、お父様が亡くなられた後、農作業用の軽トラックをそのまま使い続けていました。名義変更をしないまま1年以上経ったある日、農道で接触事故を起こしてしまいました。相手方が保険会社に連絡したところ、車検証の名義人(亡くなった父)と実際の使用者(息子)が異なることが発覚。任意保険の契約も父名義のままだったため、保険会社との交渉が非常に複雑になり、最終的に解決まで半年以上かかってしまいました。

また別のケースでは、相続した車を「誰が使うか決まっていない」という理由でそのまま放置していたところ、数年後に売却しようとした時点で相続人が増えており(数次相続)、全員の同意を取り直すのに大変な労力がかかった、というご相談もいただきました。

車は「後でいいか」とつい後回しになりますが、早めに手続きを済ませることが家族全員を守ることになります。相続手続き全体の流れを把握したうえで、車の名義変更も計画的に進めてください。

手続きにかかる費用の目安

手続き 費用の目安 備考
車庫証明書(普通車) 2,500〜3,000円 警察署の手数料(地域差あり)
登録手数料(普通車) 500円 運輸支局での移転登録費用
ナンバープレート代(管轄変更時) 1,500〜5,000円 希望ナンバーの場合は別途費用
戸籍謄本・住民票等 1通450〜750円 枚数によって変動
印鑑証明書 1通300〜400円 市区町村によって異なる
行政書士・司法書士への代行依頼 20,000〜50,000円 書類収集・申請代行まで含む場合
廃車手続き(解体業者) 無料〜5,000円(車の状態による) 価値がある車は買取金額がつく場合も
自動車重量税還付(廃車時) 車検残存期間に応じて数百〜数万円 運輸支局で申請。2か月以上残存が条件

相続手続きで専門家に任せるべきケース

車の名義変更・廃車手続きは、書類が揃えば自分で行うことも十分可能です。ただし、以下のケースでは専門家(行政書士・司法書士)への依頼を検討してください。

相続人が多い・遠方にいる

遺産分割協議書への全員の実印押印が必要なため、相続人が多い・連絡が取りにくい場合は書類の回送に時間がかかります。行政書士に依頼すれば効率的に進められます。

相続人の間で揉めている

「誰が車を取得するか」を巡って相続人間で意見が対立している場合、法的に正しい手続きを進めるために弁護士に相談することをお勧めします。

相続放棄した場合

相続放棄した相続人は、原則として車を含む全財産を相続できません。ただし次の相続人が管理を引き受けるまでは保管義務が残ります。法律上の扱いが複雑なため、専門家への相談をお勧めします。

住所が遠方で陸運局に行けない

陸運局は管轄が決まっており、原則として新所有者の住所を管轄する支局で手続きが必要です。遠方在住で物理的に行けない場合は行政書士に代行を依頼できます(委任状が必要)。

専門家の選び方については相続手続きを依頼する専門家の選び方の記事も参考にしてください。車の名義変更手続きは主に行政書士が専門ですが、相続手続き全体(遺産分割協議書の作成等)を含む依頼は司法書士・弁護士も対応しています。

相続した車の名義変更でよくあるトラブルと対処法

トラブル①

車検証に記載の住所と実際の住所が違う

亡くなった方が引越し後も住所変更手続きをしていなかったケースです。この場合、住所のつながりを証明するために「住民票の除票」「戸籍の附票」など追加書類が必要になります。事前に車検証の住所と戸籍上の住所を確認しておきましょう。

対処:住民票の除票・戸籍の附票で住所のつながりを証明する

トラブル②

車検証の「所有者」がローン会社・ディーラーになっている

自動車ローンが残っている場合、車検証の「所有者」欄はローン会社やディーラーになっていることがあります。この場合は先にローンを完済して「所有権解除」の手続きを行い、所有者を被相続人名義に変更してから相続の名義変更を行う必要があります。

対処:ローン会社に連絡して完済・所有権解除の手続きを先に行う

トラブル③

車が長期間動かせない状態(廃車同然)だった

相続した車が長年放置されて動かない・車検切れになっているケースです。公道を走れない車の移動には陸送が必要(費用が発生)。車検切れの車のまま廃車にする場合も通常の廃車手続きは可能ですが、一時的に仮ナンバーを取得(市区町村役場で申請)しないと公道を走れません。

対処:仮ナンバー取得または陸送で廃車業者に引き渡す

トラブル④

車の所在が不明(どこに駐車しているかわからない)

遠方在住で車の置き場所がわからない場合があります。車検証を確認すれば「使用の本拠の位置」(車を保管していた場所)が記載されているため、まずそこを確認します。駐車場のオーナーに連絡を取って状況を確認し、早めに引き取り・処分の判断をする必要があります。

対処:車検証の「使用の本拠の位置」を確認して駐車場オーナーに連絡する

相続手続き全体の中での車の位置づけ

相続手続きは不動産・金融資産・車など複数の財産について並行して進める必要があります。車の名義変更は不動産登記や銀行口座の手続きに比べて見落とされがちですが、保険リスク・税金問題の観点から早期対応が重要です。

財産の種類 手続き期限の目安 優先度
相続税申告 相続開始から10か月以内 最優先
相続放棄 相続開始を知った日から3か月以内 最優先
不動産相続登記 知った日から3年以内(義務)
銀行口座の解約・名義変更 法的期限なし(早めが望ましい)
車の名義変更 15日以内(道路運送車両法)
その他の動産(家財等) 法的期限なし

相続手続き全体の流れについては相続手続きの流れと期限まとめの記事で詳しく解説しています。不動産の相続登記については不動産の相続登記の手続きと費用の記事もあわせてご覧ください。また、銀行口座の相続手続きについては金融機関の相続手続きの記事が参考になります。

生前にできる車の相続対策

相続発生後の手続きを円滑にするために、親が元気なうちから確認・準備できることがあります。

車の所有状況を把握しておく

親が何台の車を持っているか、ローンが残っているか、自動車保険の加入状況はどうか、普段どこに駐車しているかを事前に確認しておきましょう。エンディングノートに記載してもらうのも有効です。

遺言書で車の取得者を指定する

遺言書に「車は〇〇に相続させる」と明記しておけば、遺産分割協議なしで名義変更が可能です。特に高価な車や複数の相続人がいる場合は遺言書による指定が手続きを大幅に簡略化します。

生前に売却・廃車の検討

高齢になって運転をやめた場合、元気なうちに車を売却または廃車にしておくと、相続時の手続きが一つ減ります。高齢ドライバーの免許返納と合わせて検討するとよいでしょう。

よくある質問(Q&A)

Q. 相続した車を名義変更せずにそのまま乗り続けるとどうなりますか?

A. 道路運送車両法上は15日以内の名義変更が義務で、違反すると過料が科される可能性があります。また、任意保険の契約が故人名義のままだと事故時に保険金の支払いで問題が生じるリスクがあります。自動車税も故人の名義宛に請求が続きます。実務上は遺産分割協議が完了してからでないと名義変更ができないため、協議が終わり次第すぐに手続きを進めることが重要です。名義変更ができていない期間は、少なくとも任意保険の手続きだけでも早めに保険会社に連絡してください。

Q. 遺産分割協議書なしで名義変更できますか?

A. 遺言書がある場合は遺産分割協議書の代わりに遺言書(公正証書遺言または検認済みの自筆証書遺言)を使って名義変更が可能です。また、相続人が一人しかいない(単独相続)場合も、遺産分割協議書は不要で、被相続人との相続関係を証明する戸籍謄本等で手続きできます。相続人が複数いる場合は必ず遺産分割協議書または全員の合意を示す書面が必要です。軽自動車の場合は「相続に関する申立書」という書式で、相続人全員の署名・押印で対応できる場合があります(軽自動車検査協会に確認してください)。

Q. 車のローンが残っている場合、相続人はローンを引き継ぐ必要がありますか?

A. はい、原則として相続人はローン残債(負の財産)も引き継ぎます。ただし、車のローン会社に連絡すれば、残債の一括返済または新たな名義人でのローン継続契約を再締結する選択肢があります。ローン会社が所有権を持っている場合(車検証の所有者がローン会社)は、先に残債を完済して所有権解除をしてもらわないと名義変更ができません。また、相続放棄を選択した場合はローン残債も含む全財産を相続しないことになり、車の名義変更も原則としてできません(相続放棄後に財産を処分すると単純承認とみなされるリスクがあります)。不安な場合は早めに司法書士・弁護士に相談してください。

Q. 手続きを自分でやる場合、陸運局は予約が必要ですか?

A. 多くの運輸支局では予約制度を設けていません(窓口に直接行く方式)。ただし、混雑状況は地域によって異なります。月末や年度末(3月)は特に混雑する傾向があるため、平日の午前中(開庁直後)を狙うとスムーズです。一部の手続きでは事前に書類の確認(電話・メール相談)ができる場合もあります。国土交通省の公式サイトや各運輸支局のウェブサイトで最新の窓口情報を確認してから訪問することをお勧めします。また、行政書士に依頼した場合は書類の確認から申請まで全て代行してもらえるため、陸運局に行く必要はありません。

この記事のまとめ

相続した車の名義変更・廃車のまとめ

  • 相続した車は預貯金・不動産と同じく相続財産であり、名義変更(移転登録)は道路運送車両法上15日以内が義務。実際は遺産分割協議が完了次第、速やかに手続きを行うことが重要
  • 名義変更をしないまま乗り続けると任意保険のトラブル・自動車税の問題・売却時の支障など様々なリスクが生じる。少なくとも任意保険の手続きだけは早めに保険会社に連絡する
  • 普通車の名義変更は管轄の運輸支局(陸運局)で行う。車庫証明書・戸籍謄本・遺産分割協議書・印鑑証明書等が必要。書類が揃えば当日中に完了する場合が多い
  • 軽自動車の名義変更は軽自動車検査協会で行う。普通車に比べて必要書類が少なく(相続人全員の印鑑証明書不要・車庫証明不要の場合が多い)、手続きがシンプル
  • 廃車は目的に応じて「永久抹消登録」「一時抹消登録」「輸出抹消仮登録」の3種類がある。車を解体・処分する場合は「永久抹消登録」を選択し、自動車税・自動車重量税の還付を忘れずに申請する
  • 車検証の所有者がローン会社になっている場合は先に残債完済・所有権解除を行ってから名義変更の手続きを進める必要がある
  • 車検証の住所と戸籍上の住所が異なる場合は住民票の除票・戸籍の附票で住所のつながりを証明する追加書類が必要になる。事前確認が重要
  • 相続人が多い・遠方在住・書類準備が困難な場合は行政書士への依頼(費用目安:20,000〜50,000円)が効率的。相続争いがある場合は弁護士に相談する
  • 生前対策として遺言書で車の取得者を指定しておくと、遺産分割協議なしで名義変更ができ、相続人の負担を大幅に軽減できる

相続した車の手続きは「後でいいか」と後回しにしがちですが、保険リスク・税金問題の観点から早期対応が重要です。相続手続き全体の流れはこちらの記事で確認できます。専門家への依頼を検討している方は相続手続きの専門家選びの記事も参考にしてください。書類の準備から名義変更完了まで、一つひとつ丁寧に進めていきましょう。

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