不動産相続 | 相続登記
相続登記の申請書の書き方と
必要書類まとめ
記載例つきで項目ごとに解説。遺産分割・遺言・法定相続分のケース別必要書類、よくある記載ミス・補正事例、提出方法まで完全ガイド。
「相続登記が義務化されたのはわかったけれど、申請書って何を書けばいいの?」「法務局に行けば教えてもらえるの?」と感じている方も多いのではないでしょうか。相続登記の申請書(登記申請書)は、法務省が書式を公開しており、自分で作成することが可能です。ただし、記載する内容が細かく、不動産の情報・相続の経緯・申請する権利の種類など、正確に記入しなければ補正(書き直し)や却下になることがあります。この記事では、申請書の書き方を項目ごとに記載例つきで解説し、どのケースでどの書類が必要かを一覧で整理しました。手続きが初めての方でも迷わず進められるよう、わかりやすくお伝えします。
著者:田中由美より
銀行員時代、「相続登記の申請書って難しくて…」と窓口に来られたお客さまを何度もお見かけしました。確かに初めて見ると専門用語が並んでいて戸惑いますが、書き方さえわかれば一つひとつは難しくありません。私自身、自分の祖父の相続で申請書を作成した経験があります。そのときに感じた「ここが一番わかりにくかった」という点を特に丁寧に解説していますので、安心して読み進めてください。
相続登記の申請書(登記申請書)とは?
相続登記の申請書とは、法務局(登記所)に提出する「所有権移転登記申請書」のことです。亡くなった方(被相続人)から相続人への不動産の名義変更を法律的に有効にするために必要な公式書類です。
申請書の種類と相続の3つのパターン
相続登記の申請書は1種類ですが、「どのように相続したか」によって記載内容と必要書類が変わります。主に以下の3パターンに分かれます。
① 遺産分割協議による相続
相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で、誰が何を相続するかを決めた場合。最も一般的なパターン。
② 遺言書による相続
被相続人が遺言書を残しており、その内容に従って相続する場合。遺言書の種類(公正証書・自筆等)で必要書類が異なる。
③ 法定相続分による相続
遺産分割協議を行わず、法律で定められた割合(法定相続分)のまま共有名義で登記する場合。書類は最もシンプル。
⚠️ どのパターンか確認してから書類収集を始めよう
パターンによって必要書類が大きく異なります。先に「どのケースに該当するか」を確認してから書類収集に入ることで、二度手間を防げます。遺言書の有無、相続人全員の合意状況を確認してください。
登記申請書の書き方:項目別解説
法務局が公開している登記申請書の書式に沿って、各記載項目を解説します。以下は「遺産分割協議による相続」の申請書を例にした説明です。
① 登記の目的
記載例:
所有権移転
「所有権移転」と記載します。相続によって不動産の所有権が被相続人から相続人に移るためです。「相続による所有権移転」と書く場合もありますが、法務局の書式では「所有権移転」だけでも通ります。
② 原因
記載例:
令和〇年〇月〇日相続
被相続人が亡くなった年月日(死亡日)を記載します。「令和〇年〇月〇日相続」という形式で記入します。日付は死亡診断書や戸籍の記載から確認してください。遺産分割協議が成立した日ではなく、あくまで「死亡日」です。
③ 相続人(申請人)
記載例:
(被相続人 田中一郎)
東京都〇〇区〇〇町1丁目2番3号
相続人 田中由美 印
()内に被相続人の名前を記載し、その下に相続人(不動産を取得する人)の住所・氏名を記入します。印鑑は認印でも可(法務局への提出は実印不要)ですが、遺産分割協議書には実印が必要です。法人が相続人の場合は法人名と代表者名を記載します。
④ 添付情報
記載例(遺産分割協議の場合):
登記原因証明情報(遺産分割協議書・戸籍謄本等)
住所証明情報(住民票の写し)
代理権限証明情報(委任状)※司法書士に依頼する場合
添付する書類の名称を記載します。「登記原因証明情報」は相続を証明する書類一式(戸籍謄本・遺産分割協議書等)を指します。「住所証明情報」は取得する相続人の住民票のことです。
⑤ 申請年月日・申請先法務局
記載例:
令和〇年〇月〇日申請
〇〇法務局 〇〇出張所 御中
申請する日(法務局に提出する日)と、申請先の法務局名を記載します。申請先は「不動産が所在する地域を管轄する法務局」です。法務局の管轄は法務省ウェブサイト「管轄のご案内」で確認できます。郵送の場合は郵送日ではなく受付日が申請日になります。
⑥ 課税価格・登録免許税
記載例:
課税価格 金〇〇〇〇万円
登録免許税 金〇〇万円
課税価格は固定資産税評価額(1,000円未満切り捨て)、登録免許税はその0.4%(100円未満切り捨て、最低1,000円)を記載します。登録免許税は収入印紙で納付し、申請書に貼り付けます(消印不要)。土地・建物が複数ある場合はすべての評価額を合算します。
⑦ 不動産の表示
記載例(土地の場合):
所 在 東京都〇〇区〇〇町一丁目
地 番 2番3
地 目 宅地
地 積 100.00平方メートル
記載例(建物の場合):
所 在 東京都〇〇区〇〇町一丁目2番地3
家屋番号 2番3
種 類 居宅
構 造 木造スレート葺2階建
床面積 1階 〇〇.00平方メートル
2階 〇〇.00平方メートル
不動産の情報は、登記事項証明書の記載を正確に転記します。住所と「地番」は異なることが多いため要注意です(住所は「〇〇町1丁目2-3」でも地番は「2番3」など)。建物の構造・面積なども登記事項証明書の記載に従ってください。少しでも異なると補正の対象になります。
ケース別:必要書類の完全一覧
相続のパターン別に必要な書類をまとめました。どのケースに当てはまるかを確認し、書類収集の漏れがないようにしてください。
【パターンA】遺産分割協議による相続
| 書類名 | 取得先 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 登記申請書 | 法務局書式(無料DL)・自作 | 無料 |
| 遺産分割協議書(実印押印) | 相続人全員が作成・実印押印 | 自作(無料)〜司法書士費用 |
| 被相続人の出生〜死亡の連続戸籍謄本(除籍・改製原戸籍含む) | 本籍地の市区町村(郵送可) | 1通750〜1,000円 |
| 被相続人の住民票除票(または戸籍附票) | 最後の住所地の市区町村 | 1通300〜350円 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各自の本籍地の市区町村 | 1通750〜1,000円 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 各自の住所地の市区町村 | 1通300円程度 |
| 不動産を取得する相続人の住民票 | 住所地の市区町村 | 1通300〜350円 |
| 固定資産税評価証明書 | 不動産所在地の市区町村税務課 | 1通300〜400円 |
| 登録免許税(収入印紙) | 郵便局・法務局内窓口 | 固定資産評価額×0.4% |
【パターンB】公正証書遺言による相続
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 登記申請書 | パターンAと同じ |
| 公正証書遺言(原本) | 公証役場が保管。再発行は公証役場で請求可。遺言の内容(不動産の記載)を確認すること。 |
| 被相続人の死亡がわかる戸籍謄本(除籍) | 出生からの連続戸籍は不要。死亡事実が確認できる除籍謄本・改製原戸籍でよい場合が多い。 |
| 相続人の戸籍謄本 | 遺言書で指定された相続人(受遺者)のみ |
| 不動産を取得する相続人の住民票 | 同上 |
| 固定資産税評価証明書・登録免許税 | パターンAと同じ |
【パターンC】自筆証書遺言による相続
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 検認済みの自筆証書遺言(原本) | 家庭裁判所の検認手続きを経たもの。検認調書(または検認済みの証明書)を添付。 ※法務局保管制度を利用した場合は検認不要。保管証明書を添付。 |
| その他の書類 | パターンBとほぼ同じ(戸籍謄本・住民票・固定資産評価証明書・登録免許税) |
【パターンD】法定相続分による相続(共有登記)
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 被相続人の出生〜死亡の連続戸籍謄本 | パターンAと同じ |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 全員分が必要 |
| 相続人全員の住民票 | 共有名義となる全員分が必要(パターンAとの大きな違い) |
| 印鑑証明書・遺産分割協議書 | 不要(協議なしで法定割合のまま登記するため) |
| 固定資産税評価証明書・登録免許税 | パターンAと同じ |
💡 法定相続情報一覧図を活用しよう
戸籍謄本の束を何セットも用意するのは手間とコストがかかります。法務局に「法定相続情報一覧図」を作成・認証してもらうと、以後の手続き(金融機関・相続税申告等)で戸籍謄本の代わりに使えて大変便利です。作成費用は無料。相続登記の申請と同時に作成依頼もできます。
相続登記に使う遺産分割協議書の書き方と注意点
遺産分割協議によって相続登記を行う場合、「遺産分割協議書」の作成が必要です。書式は自由ですが、相続登記に使用するためにはいくつかの必須事項と注意点があります。
遺産分割協議書の必須記載事項
| 項目 | 記載内容・注意点 |
|---|---|
| 被相続人の情報 | 氏名・生年月日・死亡日・最後の本籍・最後の住所を記載する。戸籍謄本・住民票除票と一致させること。 |
| 相続人全員の氏名・住所 | 全相続人の住所・氏名を記載し、それぞれが実印で押印する。一人でも欠けると無効になる。 |
| 不動産の表示 | 登記事項証明書の記載を一字一句正確に転記する。所在・地番・地目・地積(土地)、所在・家屋番号・種類・構造・床面積(建物)。誤記は補正の対象になる。 |
| 誰が何を取得するかの明記 | 「上記不動産は相続人○○が取得する」と明確に記載する。持分で共有する場合は各人の持分割合も記載(例:持分2分の1)。 |
| 協議成立年月日 | 全相続人が署名・押印した日付。法務局への登記申請書の「原因」とは異なるため混同しないよう注意。 |
| 相続人全員の実印と印鑑証明書 | 遺産分割協議書への押印は実印でなければならない。印鑑証明書(市区町村発行)を添付して登記申請する。 |
遺産分割協議書の記載例(一部)
遺産分割協議書
被相続人 田中一郎(昭和○○年○月○日生、令和○年○月○日死亡)
最後の本籍 東京都○○区○○町○丁目○番
上記被相続人の遺産について、相続人全員で協議した結果、以下の通り分割することを決定した。
第1条(不動産)
次の不動産は、相続人 田中由美が取得する。
所 在 東京都○○区○○町○丁目
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 ○○○.○○平方メートル
令和○年○月○日
相続人(長女) 東京都○○区○○ 田中由美 ㊞
相続人(長男) 神奈川県○○市○○ 田中太郎 ㊞
⚠️ 協議書作成でよくある間違い
- 不動産の記載が登記事項証明書と異なる(補正の最大原因)
- 相続人の一人が欠けた状態で協議書を作成してしまう(やり直しになる)
- 実印ではなく認印を押してしまう(法務局で受け付けてもらえない)
- 協議書に日付がない(有効性が問われる場合がある)
- 不動産以外の財産(預貯金等)も含めて記載したい場合、過不足なく全財産を網羅する
申請書の提出方法:窓口・郵送・オンライン
登記申請書の提出方法は3種類あります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを確認して、自分に合った方法を選んでください。
| 提出方法 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 窓口持参 | その場で不備を指摘してもらえる。不明点をすぐに確認できる。 | 法務局が遠い場合は移動コスト・時間がかかる。平日日中のみ対応(土日は不可)。 |
| 郵送申請 | 遠方でも申請可。自宅から手続きできる。 | 書類に不備があると補正の連絡が来るまで時間がかかる。返信用封筒が必要。本人確認書類の同封も要確認。 |
| オンライン申請(登記・供託オンライン申請システム) | 24時間申請可。法務局に行く手間なし。電子納付が使える(収入印紙不要)。 | マイナンバーカード・ICカードリーダーが必要。添付書類は郵送または窓口持参が必要な場合あり。初めての方には設定が煩雑なことも。 |
郵送申請のポイント
- 送付先は「不動産所在地を管轄する法務局」(住所は法務省サイトで確認)
- 収入印紙は申請書に貼り付けて同封(消印不要)
- 返信用封筒(切手貼付・宛名記入済み)を同封する
- 書留・簡易書留など追跡できる郵便方法を選ぶ
- 申請書類はコピーを手元に保管してから送付する
- 不備があれば電話で補正の連絡が来る。連絡先(電話番号)を申請書に記載しておくこと
よくある記載ミスと補正事例
相続登記の申請で補正(書き直し)が発生しやすい典型的なミスを紹介します。事前に把握しておくことで、やり直しを防げます。
| よくあるミス | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 地番と住所を混同 | 日常で使う住居表示と登記上の地番は異なる。「1丁目2-3」と「1番2号」など。 | 登記事項証明書の表記を忠実に転記する。 |
| 戸籍の取得漏れ | 改製原戸籍・除籍謄本の一部が抜けていると連続性が証明できない。 | 市区町村窓口で「出生から死亡まで連続してほしい」と伝えて請求する。 |
| 遺産分割協議書の不動産記載ミス | 地積・家屋番号・構造の誤記。登記事項証明書を参照せずに記載。 | 協議書の不動産情報は登記事項証明書から転記する。 |
| 課税価格の計算ミス | 固定資産評価額の1,000円未満切り捨て・登録免許税の100円未満切り捨てを忘れる。 | 計算後に切り捨てを必ず確認する。 |
| 収入印紙の貼り方 | 割印(消印)が必要と思い貼ってしまう方がいる。割印は不要。 | 収入印紙は申請書の所定欄に貼るだけ。割印不要。 |
| 申請先法務局の間違い | 自分の住所の法務局に提出してしまう。 | 申請先は「不動産が所在する地域の管轄法務局」。法務省サイトで確認する。 |
| 印鑑証明書の有効期限切れ | 遺産分割協議書に添付する印鑑証明書に有効期限はないが、金融機関等では3ヶ月以内のものを求められることがある。 | 相続登記自体に期限はないが、他の手続きと並行するなら新しいものを取得する。 |
法定相続情報一覧図の作成方法と活用メリット
「法定相続情報一覧図」とは、被相続人と相続人の関係を一枚の図に整理し、法務局が認証したものです。2017年5月に開始された制度で、相続手続きを大幅に効率化できます。
法定相続情報一覧図のメリット
戸籍謄本を何度も集め直さなくて良い
一覧図1枚で複数の手続き(銀行・証券・相続登記・相続税申告)に対応できる。
何枚でも無料で発行可能
法務局が認証した一覧図のコピーを必要な枚数(金融機関の数分など)発行してもらえる。費用は無料。
5年間保管してもらえる
法務局が5年間保管するため、後から追加交付の申請が可能。
作成の流れ
STEP 1|相続関係を一覧図にまとめる
法務省の書式または自作で被相続人・配偶者・子などの関係を図示する。戸籍の情報(氏名・生年月日・続柄等)を記載する。
STEP 2|戸籍謄本等と一緒に法務局へ申出
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」と戸籍謄本一式を法務局(相続登記の申請先と同じで可)に提出する。
STEP 3|認証された一覧図を受け取る
通常1〜2週間で認証済みの一覧図が交付される。必要枚数を指定して複数交付を受けることができる。
⚠️ 注意点
法定相続情報一覧図は、相続登記の申請書と同時に申出することができます。ただし、金融機関によっては一覧図だけでは対応せず、戸籍謄本原本の提示を求める場合もあります。事前に各機関に確認してください。
申請書作成で困ったときの相談先
申請書の作成や書類収集で行き詰まったときは、以下の窓口・サービスを活用してください。
| 相談先 | 内容・特徴 | 費用 |
|---|---|---|
| 法務局の登記相談窓口 | 書式・書き方の確認ができる。要予約(法務局によって対応が異なる)。ただし書類の代理作成はできない。 | 無料 |
| 司法書士会の無料相談 | 各都道府県司法書士会が実施。電話・来所・オンライン相談あり。 | 無料 |
| 司法書士事務所への依頼 | 書類収集から申請書作成・提出まで一任できる。複雑なケース・時間がない場合に最適。 | 5〜15万円程度 |
| 法テラス(日本司法支援センター) | 収入・資産が一定以下の場合、弁護士・司法書士費用の立替制度あり。審査が必要。 | 条件により無料〜立替 |
相続登記の申請書に関するよくある質問
田中由美からひと言
申請書の書き方で一番大切なのは、「登記事項証明書に書いてある内容をそのまま転記する」という点です。日常の住所と地番は違う・建物の構造の表記が違う、といったことが補正の大半の原因です。私の経験でも、最初に登記事項証明書をしっかり読んでから申請書を書いたら、一発で通りました。焦らず、丁寧に進めることが最短への道です。相続登記の全体の流れと合わせて確認しながら進めてください。
この記事のまとめ
この記事で解説した重要ポイントを最後に確認しましょう。
【相続登記申請書 最終チェックリスト】
- 相続のパターン(遺産分割・遺言・法定相続分)を最初に確認してから書類収集に入る
- 申請書の書式は法務省の公式ウェブサイトから無料でダウンロードできる(記載例つき)
- 不動産の表示は登記事項証明書の記載を忠実に転記する(住所と地番は違う)
- 「原因」の日付は被相続人が亡くなった死亡日(遺産分割が成立した日ではない)
- 登録免許税は固定資産評価額×0.4%、収入印紙で納付(割印不要)
- 遺産分割協議書への押印は実印のみ有効(印鑑証明書の添付が必要)
- 申請先は不動産が所在する地域の管轄法務局(自分の住所の法務局ではない点に注意)
- 戸籍は被相続人の出生から死亡まで連続したものが必要(一部欠けると補正対象になる)
- 法定相続情報一覧図を作成しておくと、銀行・証券・相続税申告など以後の手続きで戸籍謄本の提出を省略できる
- 補正の連絡が来ても慌てず、法務局の担当者に内容を丁寧に確認してから対応する
申請書の作成は、手順を踏めば決して難しくありません。不安な点が残る場合は法務局の無料相談窓口や司法書士に積極的に相談してください。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら確実に進めましょう。

