相続した実家を売却する手順と税金の注意点|3,000万円控除・空き家特例も元銀行員AFPが解説

相続した実家を売却する手順のイメージ 不動産相続

相続 × 実家の売却

相続した実家の売却手順と
税金の注意点を完全解説

3,000万円特別控除・空き家特例・取得費加算——
節税できる特例を活用して手取りを最大化しましょう。

売却の流れを6ステップで解説 節税特例を徹底解説 共有の場合の注意点も

「相続した実家、誰も住む予定がないので売りたい」「売却すると税金はどれくらいかかるの?」——実家の相続を受けた後の売却を検討している方は多いですが、税金の仕組みや手続きがわからないと不安ですよね。この記事では、相続した実家を売却する際の6つの手順・かかる税金・活用できる節税特例(3,000万円控除・空き家特例・取得費加算)まで詳しく解説します。

著者より

銀行員時代に相続後の不動産売却の相談を受けた中で、最も多かった後悔が「もっと早く売るべきだった」でした。相続から時間が経つほど建物が劣化して売却額が下がります。また、相続税の申告期限から3年以内の売却でないと「取得費加算の特例」が使えなくなる場合もあります。
「とりあえず後で考えよう」と放置していると、気づけば5年10年が経ってしまうことも。売却を検討しているなら、できるだけ早く動き出すことをお勧めします。税理士・不動産業者には早めに相談しましょう。
— 田中由美(AFP・相続診断士・元銀行員)

相続した実家を売却する前に確認すべきこと

確認事項 確認方法 なぜ重要か
登記名義(誰の名前か) 法務局で登記事項証明書を取得 名義が被相続人のままだと売却できない。相続登記が必要
抵当権・担保の有無 登記事項証明書の「権利部(乙区)」を確認 残債がある場合、売却前に完済または売却代金で清算が必要
遺産分割協議の完了 遺産分割協議書の有無を確認 相続人全員の合意がないと売却できない。共有の場合も全員の合意が必要
被相続人が居住していたか 住民票・固定資産税の課税明細書を確認 空き家特例(3,000万円控除)の適用要件に関わる
相続税の申告状況 税理士または税務署に確認 申告期限後3年以内の売却で「取得費加算の特例」が使える
境界確定の有無 測量図(地積測量図)を法務局で確認 境界が不明確だと売却できない場合や価格が下がる場合がある

相続した実家を売却する6ステップ

1

遺産分割協議・相続登記を完了する

遺産分割協議で不動産を誰が取得するか決め、遺産分割協議書を作成します。その後、法務局で相続登記(名義変更)を行います。相続登記は司法書士に依頼するとスムーズです(費用5〜15万円程度)。2024年から3年以内の登記が義務化されています。

2

税理士に税務相談をする(売却前)

売却前に税理士へ相談し、適用できる節税特例(3,000万円特別控除・空き家特例・取得費加算の特例)を確認します。特例の適用可否によって手取り額が大きく変わるため、売却時期・方法の検討が重要です。特に相続税申告から3年以内かどうかは必ず確認してください。

3

不動産業者に査定を依頼する(複数社)

不動産一括査定サービスや地域の不動産業者に査定を依頼します(無料)。最低でも3社以上の査定を取ることで、適正価格が把握できます。査定額に差がある場合は、各業者の根拠・売却実績・得意エリアを確認して業者を選びましょう。

4

媒介契約を締結して売却活動を開始する

選んだ不動産業者と「媒介契約」を締結します。一般媒介(複数業者に依頼可)・専任媒介・専属専任媒介の3種類があります。内覧会・チラシ配布・ポータルサイト掲載などで買い手を探します。一般的に3〜6ヶ月程度で買い手が見つかります。

5

売買契約・引き渡し

買い手が決まったら売買契約書を締結します(手付金の授受)。その後、残代金の受領と物件の引き渡しが行われます。引き渡し時には同時に所有権移転登記(司法書士が対応)が行われます。引き渡し前に物件の現地確認・書類の確認を行います。

6

翌年に確定申告を行う

売却した翌年の2月16日〜3月15日に確定申告を行います。譲渡所得がある場合も、特例(3,000万円控除等)を適用する場合も確定申告が必要です。税理士に依頼することで適切な申告と節税が可能です。申告漏れは追徴課税の対象になるため注意してください。

売却でかかる税金:譲渡所得税の計算方法

相続した不動産を売却すると、売却益(譲渡所得)に対して譲渡所得税・住民税が課税されます。計算式と税率を把握しておきましょう。

【譲渡所得の計算式】

譲渡所得 = 売却額 − 取得費 − 売却費用

・取得費:被相続人が不動産を購入した際の価格(証明書類がない場合は売却額の5%を取得費とみなす)

・売却費用:仲介手数料・測量費・解体費用・印紙税など

・取得から5年以内(短期):税率39.63% / 5年超(長期):税率20.315%(相続した日ではなく被相続人が取得した日を起点とする)

譲渡区分 所有期間 所得税率 住民税率 合計税率
長期譲渡所得 売却した年の1月1日時点で5年超 15%(+復興特別所得税0.315%) 5% 20.315%
短期譲渡所得 売却した年の1月1日時点で5年以下 30%(+復興特別所得税0.63%) 9% 39.63%

所有期間の計算は「被相続人の取得日」から

相続した不動産の所有期間は、被相続人(亡くなった方)が取得した日から計算します(相続した日からではない)。例えば被相続人が30年前に購入した実家を相続して1年後に売却しても「長期譲渡(5年超)」として20.315%の税率が適用されます。これは相続人に有利な規定です。

節税できる3つの特例を徹底解説

特例①:空き家(被相続人居住用財産)の3,000万円特別控除

被相続人(亡くなった方)が1人で住んでいた実家を相続して売却する場合、売却益から最大3,000万円を控除できる特例です(2027年まで延長・2024年改正により要件変更あり)。

要件 詳細
被相続人の居住状況 被相続人が相続直前まで居住していたこと(老人ホーム等への入居も一定条件下でOK)
建物の状態 昭和56年5月31日以前に建築された建物(旧耐震基準)である、または売却時に建物を解体していること
売却の時期 相続から3年が経過した年の12月31日までに売却すること(例:令和6年1月に相続→令和9年12月31日まで)
売却金額 1億円以下(2024年改正。複数の相続人で相続した場合は各自の売却分の合計)
控除額 最大3,000万円(2024年改正:相続人が3人以上の場合は各自2,000万円が上限)

特例②:取得費加算の特例

相続税を納めた場合、その一部を不動産の取得費に加算できる特例です。二重課税(相続税と譲渡所得税の両方)を緩和するための制度です。

項目 内容
適用要件 相続税の申告書提出期限の翌日以後3年以内(相続開始から約3年10か月以内)に売却すること
加算できる金額 支払った相続税のうち「売却した不動産の相続税評価額÷相続税の課税価格」に相当する割合を取得費に加算
効果 取得費が増えることで譲渡所得が減り、譲渡所得税が軽減される
空き家特例との関係 空き家特例(3,000万円控除)と取得費加算の特例は同一の売却に対して同時に適用できない(選択適用)

特例③:マイホームの3,000万円特別控除(居住用財産)

相続人自身が被相続人の実家に住んでいた(または引っ越して居住した)場合に適用できる特例です。

項目 内容
適用要件 相続人自身が実際に居住していたマイホームを売却すること。居住しなくなってから3年が経過した年の12月31日まで
控除額 最大3,000万円(配偶者・家族への売却には不適用)
空き家特例との違い こちらは「相続人が居住していた」ことが要件。空き家特例は「被相続人が居住していた(空き家になった後に売却)」が要件

売却に必要な書類一覧

書類 取得先 用途
登記事項証明書(全部事項証明書) 法務局 所有権・抵当権等の確認
固定資産税評価証明書 市区町村役場 売買価格の参考・登録免許税計算
印鑑証明書(3ヶ月以内) 市区町村役場 売買契約・所有権移転登記
住民票 市区町村役場 住所確認・登記申請
遺産分割協議書 相続時に作成 相続登記・売却の根拠書類
建物の取得当時の売買契約書・建築確認済証 保管書類より 取得費の証明(ない場合は売却額の5%が取得費)
相続税申告書(控) 相続時の申告書類 取得費加算の特例の計算に必要

売却費用の概算シミュレーション

3,000万円で売却した場合の費用・税金の概算例です(空き家特例・取得費加算なしの場合)。

項目 金額(概算)
売却額 3,000万円
−仲介手数料(売却額×3%+6万円×1.1) 約105万円
−印紙税(売買契約書) 約1万円
−登記費用(所有権移転抹消等・司法書士含む) 約5〜10万円
−譲渡所得税(取得費が売却額の5%=150万円として。長期譲渡の場合) 約566万円
手取り概算(税金等差し引き後) 約2,319万円
(参考)空き家特例3,000万円控除適用後の税額 0円(控除後の課税所得がマイナスになるため)

特例活用で大きく変わる手取り額

上記のシミュレーションでは空き家特例(3,000万円控除)を適用しない場合、譲渡所得税だけで566万円かかります。しかし空き家特例を適用すると税額がゼロになり、手取り額が大幅に増えます。要件を満たすかどうかを売却前に必ず税理士に確認してください。

共有の実家を売却する場合の注意点

注意点 詳細
全員の同意が必要 共有の不動産を売却するには全員の同意(署名・押印)が必要。一人でも反対すると売れない
売却代金の分配 持分割合(例:長男1/2・次男1/4・三男1/4)に応じて売却代金を分配する。分配割合を協議書に記載しておくとトラブルを防げる
確定申告は各自別々に 共有の不動産を売却した場合、各自が自分の持分に対応する譲渡所得を申告する。特例(3,000万円控除等)も各自が要件を満たす必要がある
空き家特例の適用(2024年改正) 2024年の改正により、相続人が3人以上いる場合は各自2,000万円(以前は3,000万円)が控除上限となった

不動産業者の選び方|売却を成功させる6つのポイント

① 地域の売買実績が豊富か

地域の相場を熟知した業者ほど適正価格での売却が期待できます。過去1〜2年の地元売買実績件数を確認しましょう。大手と地域密着型を両方比べるのが理想です。

② 査定額の根拠を説明できるか

「相場はこれくらいです」だけでなく、周辺の成約事例・路線価・物件の状態を踏まえた具体的な根拠を説明できる業者を選びましょう。高額査定に飛びつくのは危険です。

③ 相続物件の取り扱い経験があるか

相続物件には相続登記・共有・境界問題など特有の課題があります。相続後の不動産売却の経験が豊富で、司法書士・税理士と連携できる業者が安心です。

④ 担当者の対応・説明が丁寧か

売却活動中は担当者との連絡が頻繁になります。質問への回答が迅速・丁寧で、専門用語をわかりやすく説明できる担当者を選びましょう。担当者の質が売却成否を左右します。

⑤ 媒介契約の種類を理解して選ぶ

一般媒介(複数業者に同時依頼可)・専任媒介(1社のみ・自己発見OK)・専属専任媒介(1社のみ・自己発見NG)の3種類があります。売却を急ぐなら専任系、幅広く探したいなら一般媒介も選択肢です。

⑥ 仲介手数料の交渉に応じるか

仲介手数料の上限は法定(売却額×3%+6万円×1.1)ですが、交渉次第で値引きできる場合もあります。ただし手数料だけで選ぶと売却活動が手抜きになるリスクもあります。実績・質とのバランスで判断しましょう。

ケーススタディ|実家売却のよくある失敗例と成功のポイント

ケース 状況 失敗・問題 対策・教訓
ケース1 父の死後5年以上そのままにしていた空き家実家を売却 空き家特例(3,000万円控除)の期限(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)を超過。適用できず566万円の税金が発生した 空き家特例は「相続から3年が経過した年の12月31日まで」が期限。相続後は早めに税理士に相談することが必須
ケース2 兄弟3人で共有した実家を売却しようとしたが1人が反対 共有の場合、全員の同意なしに売却はできない。反対する兄弟の持分だけを買い取るか、調停に持ち込む以外に手がなくなった 遺産分割時に「売却して代金を分ける換価分割」か「誰かが単独で相続する代償分割」にするのが最善。共有のまま相続することのリスクを理解する
ケース3 相続した実家を売却したが確定申告を忘れた 数年後に税務署から「お尋ね」文書が届き、申告漏れが発覚。延滞税・無申告加算税が加算され総額が増加した 不動産売却は必ず翌年の確定申告が必要(損失の場合でも特例適用には申告が必要)。売却後は必ず税理士に確定申告を依頼する
ケース4 取得費の書類(売買契約書)がなく5%概算取得費で申告 50年前に2,000万円で購入した実家が取得費150万円(5%)として計算され、税金が高額になった 売買契約書がなくても、固定資産台帳・建築確認申請書・住宅ローン通帳など証拠書類として使える可能性がある。税理士に相談して取得費の証明方法を検討する
ケース5 相続登記を完了せずに売却活動を進めたが手続きが混乱 売買契約直前になって相続登記が完了していないことが判明。引き渡し日を延期することになり買主を困らせた 相続登記は司法書士に依頼して早期に完了させておく。2024年4月から相続登記は3年以内が義務化されており、早めの対応が重要

専門家に依頼する場合の費用目安

司法書士(相続登記)

5〜15万円

相続登記の手続き代行費用。不動産の数・評価額・複雑さによって変動。登録免許税(固定資産評価額×0.4%)は別途必要。

税理士(売却時の確定申告)

5〜20万円

譲渡所得の確定申告代行費用。特例(空き家特例・取得費加算)の適用が絡む複雑なケースほど費用は高め。節税効果が費用を大きく上回る場合が多い。

不動産業者(仲介手数料)

上限:売却額×3%+6万円×1.1

3,000万円売却の場合、上限は約105万円。直接買い取り(不動産会社が直接購入)の場合は仲介手数料ゼロだが売却価格が市場価格より安くなる傾向がある。

土地家屋調査士(境界確定)

30〜80万円

境界が不明確な場合の測量・境界確定費用。隣地との合意が難しい場合はさらに費用・時間がかかる。売却前に境界を明確にすることで売却がスムーズになる。

解体業者(建物解体)

100〜300万円

木造一戸建て(30〜40坪)の場合の目安。アスベスト含有・地中埋設物がある場合は費用が大幅に増加することもある。解体費用は譲渡費用として取得費に算入できる。

ハウスクリーニング(売却前清掃)

5〜20万円

内覧前の清掃・整理費用。空き家になった実家はゴミ・家具の処分(遺品整理)も必要。遺品整理業者への依頼は5〜30万円程度。買主への印象を良くするために重要。

売却前・売却後のチェックリスト

確認事項 タイミング
遺産分割協議・相続登記を完了したか 売却前
抵当権・担保の有無を確認したか(登記事項証明書で確認) 売却前
税理士に節税特例の適用可否を確認したか(空き家特例・取得費加算等) 売却前
不動産業者の査定を複数社から取ったか 売却前
被相続人の取得当時の売買契約書・建築費用の書類を探したか(取得費証明) 売却前
売却代金の分配方法(共有の場合)を遺産分割協議書に記載したか 売却前
売却した翌年に確定申告(3月15日まで)の準備をしたか 売却後

よくある質問

Q. 相続した実家に住んでいない場合でも売却できますか?

はい、売却できます。相続した不動産に実際に住まなくても、相続登記(名義変更)を完了させれば売却が可能です。むしろ空き家になった実家の場合、早めに売却することで維持費・固定資産税・管理の手間を省けます。売却の際は税理士・司法書士・不動産業者と連携して進めましょう。

Q. 被相続人の取得時の書類(売買契約書等)が見つからない場合はどうなりますか?

取得費を証明する書類(売買契約書・建築費用の領収書など)が見つからない場合は、「概算取得費」として売却額の5%を取得費として計算できます(所得税法施行令169条)。例えば3,000万円で売却した場合、取得費は150万円として計算します。実際の取得費より低くなることが多く、税負担が重くなる可能性があります。書類を探し続けることに加え、市区町村の固定資産台帳・建築確認申請書類なども参考として活用できる場合があります。

Q. 相続登記が完了していない状態で売却活動を始めてもいいですか?

売却活動(査定・媒介契約・買い手探し)は相続登記完了前に始めることができます。ただし、売買契約の締結・引き渡しには相続登記が完了していることが前提になります。実務上は「相続登記と売買を同時進行」させることも多く、契約日・引き渡し日までに相続登記を完了させるスケジュールで進めることが一般的です。司法書士と相談して段取りを組みましょう。

Q. 売却益がない(赤字)場合でも確定申告は必要ですか?

売却益がない(譲渡損失がある)場合、基本的に確定申告は不要です。ただし、居住用財産を売却して損失が出た場合の「居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除特例」など、損失を他の所得と通算できる特例を使う場合は確定申告が必要です。また空き家特例を適用するためには黒字・赤字にかかわらず確定申告が必要です。状況に応じて税理士に確認してください。

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まとめ

相続した実家の売却は、手順を正しく踏み、節税特例を活用することで手取り額を大きく増やせます。特に空き家特例(3,000万円控除)は大きな節税効果があるため、要件を必ず売却前に確認してください。

  • 売却前に相続登記・抵当権の確認・節税特例の要件確認を必ず行う
  • 譲渡所得税は長期(5年超)20.315%・短期(5年以下)39.63%
  • 空き家特例(3,000万円控除):被相続人が居住、相続から3年以内の売却
  • 取得費加算の特例:相続税申告から3年以内の売却で取得費に加算できる
  • 不動産業者は3社以上に査定を依頼して適正価格を把握する
  • 売却の翌年に確定申告(2〜3月)が必要
  • 税理士・司法書士・不動産業者と早めに連携することが成功の鍵

不動産を複数の相続人で分ける方法実家を相続したくない場合の対処法もあわせてご確認ください。相続手続きの全体像を把握することで、スムーズな売却が実現します。

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