相続放棄を専門家に頼む費用の相場|弁護士・司法書士・行政書士の違いと選び方を元銀行員AFPが解説

相続放棄

INHERITANCE GUIDE

相続放棄を専門家に頼む費用の相場
弁護士・司法書士・行政書士の
違いと選び方を元銀行員AFPが解説

「相続放棄を依頼したいけれど、費用がいくらかかるのか不安…」専門家別の費用相場と選び方を徹底解説します。

相続放棄の手続き自体は裁判所に申述書を提出するだけですが、「戸籍謄本の収集が大変」「書類の書き方がわからない」「親族への通知や次順位相続人への影響が心配」という理由で専門家に依頼する方は多いです。私が銀行員時代に相談を受けた方の多くも、「費用がいくらかかるかわからなくて不安で動けない」とおっしゃっていました。まず相場を知ることで、動く決心がつきます。

著者より

銀行員時代に、「専門家に頼みたいけど費用が怖くて」と言って相談に来られた方がいました。50代の男性で、お母様の相続放棄の手続きをしたいのに、「弁護士に頼んだら何十万もかかるんでしょう」と最初から身構えていました。概算の費用相場をお伝えしたら、「え、それだけですか」と拍子抜けされた顔が今でも忘れられません。

ところが別の方は、「費用が心配で誰にも相談できない」とためらっているうちに、相続放棄の3ヶ月の熟慮期間を超えてしまいました。結局、単純承認として多額の負債を引き継ぐことになったのです。私はその場でどうすることもできず、申し訳ない気持ちで見送るしかありませんでした。

費用の不安で動けなくなる前に、まず相場を知ってほしい。あの時、もっと早くに費用の情報を届けられていれば——その思いがこの記事を書く原動力になっています。

相続放棄の専門家依頼:費用の全体像

相続放棄を専門家に依頼する場合、主な費用は「専門家報酬」と「実費(戸籍取得費・切手代等)」に分かれます。実費は誰に依頼しても必ずかかるコストです。

費用の種類 内容 目安金額
専門家報酬 弁護士・司法書士・行政書士への依頼料 3万円〜15万円
戸籍謄本の取得費用 被相続人・相続人の戸籍謄本(1通450円) 1,000円〜5,000円程度
住民票の取得費用 被相続人の除票・相続人の住民票(1通300円) 300円〜900円程度
裁判所費用(収入印紙) 家庭裁判所への申述一件あたり 800円
郵便切手代 裁判所への書類送付・通知用 500円〜1,000円程度
相続人が複数の場合の加算 相続人が増えるごとに費用が加算されることが多い 1人追加あたり1〜3万円

弁護士・司法書士・行政書士の費用と特徴を比較

相続放棄の手続きを依頼できる専門家には、弁護士・司法書士・行政書士があります。それぞれ費用・できること・向いているケースが異なります。

比較項目 弁護士 司法書士 行政書士
費用相場(1人分) 5〜15万円 3〜8万円 2〜5万円
書類作成・収集 ✅ 可能 ✅ 可能 ✅ 可能(書類作成のみ)
裁判所への代理申述 ✅ 可能 ✅ 可能 ❌ 不可(本人申述が必要)
債権者対応・交渉 ✅ 可能 ❌ 140万円超は不可 ❌ 不可
訴訟対応(裁判) ✅ 可能 ❌ 不可 ❌ 不可
向いているケース 複雑な事情あり・債権者とのトラブルあり・訴訟可能性あり シンプルな相続放棄・費用を抑えたい 書類作成のサポートだけほしい
弁護士と司法書士の費用を比較するイメージ

弁護士に依頼する場合の費用詳細

弁護士への依頼は費用が高めですが、債権者対応・次順位相続人への通知・訴訟リスクへの対応まで一括して依頼できるため、複雑な案件では最も安心です。

📋 費用の内訳(標準的なケース)

  • 着手金:3〜5万円(非返還)
  • 報酬金:申述完了後に3〜10万円
  • 追加費用:相続人が増えると1人あたり1〜3万円
  • 実費:戸籍・住民票・印紙・切手代
  • 期限超過の例外申述:さらに2〜5万円加算

✅ 弁護士に依頼すると安心なケース

  • 債権者から直接連絡・督促が来ている
  • 3ヶ月の期限が近い・または過ぎてしまった
  • 親の保証人契約や連帯保証の詳細が不明
  • 次順位相続人(祖父母・兄弟等)への影響を調整したい
  • 遺産を巡って親族間でトラブルが起きている

⚠ 注意点

  • 費用は事務所によって大きく異なる
  • 初回相談は無料の事務所が多い
  • 法テラスを利用すれば費用を立替・分割払いにできる場合あり
  • 見積りを複数取って比較することを推奨

司法書士に依頼する場合の費用詳細

司法書士は弁護士より費用が安く、単純な相続放棄であれば十分に対応できます。相続人が複数いる場合でも、人数に応じた費用体系を持つ事務所が多いです。

状況・パターン 費用目安 備考
相続人1人のシンプルな放棄 3〜5万円 戸籍収集〜申述書作成〜提出まで
相続人2〜3人の放棄 5〜10万円 2人目以降は1人あたり1〜2万円程度の加算
未成年者・代理人が絡む場合 8〜15万円 特別代理人の選任申立てなど追加手続きが必要
期限超過後の例外的放棄 8〜20万円 上申書の作成・証拠収集が必要。弁護士への依頼が推奨される場合もある

法テラス(日本司法支援センター)を使う方法

費用が心配な場合は、法テラス(国が設立した法的支援機関)を活用する方法があります。収入・資産が一定基準以下の方を対象に、弁護士費用の立替制度や無料法律相談を利用できます。

🏛️ 法テラスでできること

  • 無料法律相談(30分×3回まで)
  • 弁護士費用の立替制度(審査通過後)
  • 分割返済(月5,000円〜)
  • 生活保護受給者は返済免除になる場合あり

📋 法テラスの収入基準(目安)

  • 単身:月収約18万2,000円以下
  • 2人世帯:月収約25万1,000円以下
  • 3人世帯:月収約27万2,000円以下
  • 4人世帯:月収約29万9,000円以下
  • 資産基準あり(預貯金・不動産等)

📞 法テラスの利用方法

  • 電話:0120-078374(サポートダイヤル)
  • ネット:公式サイトから相談予約
  • 窓口:全国に法テラス事務所あり
  • 弁護士・司法書士事務所経由でも利用可
自分で相続放棄する手続きのイメージ

自分で相続放棄する場合の費用と手間

費用を節約したい場合は、専門家に頼まず自分で相続放棄の手続きをすることも可能です。ただし、書類の収集・申述書の作成など、一定の手間がかかります。

手続きの内容 費用 難易度
戸籍謄本の収集 1通450円〜 ★★☆(慣れれば可能)
申述書の作成 無料(裁判所書式) ★★☆(書き方を正確に守る必要あり)
家庭裁判所への提出 収入印紙800円+切手代 ★☆☆(窓口提出または郵送)
照会書への回答 無料 ★☆☆(記載内容に注意)
期限超過・複雑な事情がある場合 自力は困難 ★★★(専門家必須)

⚠ 自力手続きで失敗しやすいポイント

「戸籍謄本が足りなかった」「照会書の回答内容が不適切で再提出になった」「相続開始を知った日の記載が誤っていた」など、書類のミスで手続きが遅れて3ヶ月の期限を超えてしまうケースがあります。期限が迫っている場合は専門家への依頼を強くおすすめします。

専門家選びのポイントと確認すべき事項

費用だけでなく、信頼できる専門家を選ぶことも重要です。依頼前に必ず確認すべき事項をまとめます。

💬

初回相談での確認事項

  • 費用の総額(報酬+実費)を明示してもらう
  • 追加費用が発生するケースを確認する
  • 対応のスピード感(いつまでに手続きできるか)
  • 担当者が最後まで一貫して担当するか
  • 連絡手段(電話・メール・面談)の確認
🔍

信頼できる事務所の見分け方

  • 相続放棄の実績・件数が明示されている
  • 費用の内訳が明確(費用見積書を発行してもらえる)
  • 初回相談が無料で対応が丁寧
  • 専門家(弁護士・司法書士)の氏名・登録番号が公表されている
  • 過度なセールスをしない

注意すべき事務所の特徴

  • 費用の総額を明示しない
  • 「絶対に放棄できる」など根拠のない保証をする
  • 相続放棄以外のサービスを強く勧める
  • 担当者が頻繁に変わる
  • 専門家の資格・登録番号を公開していない

費用別ケーススタディ:相続放棄の依頼パターン

ケース 依頼先 費用合計 選んだ理由
ケース①
相続人1人・シンプルな放棄
司法書士 約4万円 借金のみで財産なし。シンプルな案件のため費用を抑えた
ケース②
相続人3名・子ども2人含む
司法書士 約9万円 相続人が多いが単純な放棄のため司法書士で対応できた
ケース③
債権者からの督促あり
弁護士 約12万円 督促電話への対応を弁護士に委任することで精神的負担が軽減
ケース④
3ヶ月超の期限超過
弁護士 約18万円 例外申述のための上申書・証拠収集が必要で弁護士一択だった
ケース⑤
収入少なく法テラス利用
弁護士(法テラス経由) 立替後 月5,000円返済 収入基準を満たし法テラスの立替制度を利用。初期費用ゼロで依頼できた

相続放棄の費用チェックリスト

確認 チェック項目 備考
専門家報酬の総額(実費含む)を見積りで確認した 必ず書面で提示してもらう
法テラスの収入基準に該当するか確認した 基準以下なら立替制度が利用できる
追加費用の発生条件を確認した 相続人の増加・書類追加等で変わる
依頼先の専門家の実績・資格を確認した 弁護士は弁護士会、司法書士は司法書士会で確認できる
3ヶ月の期限内に依頼・手続きが完了できるスケジュールを確認した 期限が迫っている場合は早急に連絡を
依頼後の連絡方法・担当者を確認した 担当者が変わる場合は事前に確認する

相続放棄の専門家依頼:地域別・規模別の費用傾向

専門家報酬は事務所の規模・地域によっても差があります。都市部の大手事務所は品質が高い反面、費用が高めになる傾向があります。地方の個人事務所は安価ですが、相続放棄の実績数に差があることも。費用と実績のバランスで選ぶことが重要です。

事務所の種別 費用感 向いているケース・特徴
都市部・大手弁護士法人 高め(10〜20万円) 訴訟リスクあり・債権者対応が複雑なケース。スタッフが多く対応が迅速
地方の個人弁護士事務所 中程度(5〜12万円) 地域密着で丁寧な対応が期待できる。相続放棄の実績は事前確認が必要
相続専門の司法書士事務所 安め(3〜8万円) 相続放棄の実績が豊富なことが多い。シンプルな案件は最もコスパが高い
オンライン専門の事務所 安め〜中程度(2〜7万円) 遠方でも対応可。書類は郵送で完結。費用を抑えたい場合に向いている

次順位相続人(親族)への連絡と費用の考え方

子が相続放棄をすると、相続権が親・兄弟姉妹へと移ります。次順位相続人への連絡・通知は義務ではありませんが、道義的には知らせることが一般的です。また、次順位相続人が多い場合は、全員分の放棄手続きを一括で専門家に依頼することで費用を抑えられる場合があります。

📞 次順位相続人への連絡の内容

  • 自分が相続放棄したことを伝える
  • 次順位相続人に相続権が移ることを説明する
  • 放棄するかどうかの判断を促す
  • 専門家の紹介(同じ事務所での対応も可能)

💰 全員一括依頼でのコスト効率

  • 同じ事務所に全員分を依頼すると戸籍収集費用を共有できる場合がある
  • まとめて依頼すると1人あたりの費用が安くなることも
  • 次順位者が高齢の場合は特に迅速な対応が求められる
  • 3ヶ月の期限は次順位者にとっても同様に始まる

相続放棄の手続き開始から完了までのタイムライン

専門家に依頼した場合の一般的な手続きの流れと所要期間を把握しておくと、スケジュール管理がしやすくなります。

1日

初回相談・依頼決定

電話・オンライン・訪問で初回相談(多くは無料)。費用の見積り・依頼内容の確認・委任契約の締結を行います。

1週

戸籍謄本・必要書類の収集

専門家が戸籍収集を代行してくれる場合がほとんどです。被相続人の出生〜死亡の戸籍・相続人全員の戸籍を収集します。

2週

申述書の作成・確認・署名

専門家が申述書を作成し、依頼人が内容を確認して署名・押印します。オンライン確認・郵送対応の事務所も多いです。

3週

家庭裁判所への申述書提出

専門家が代理で提出(または申述人が窓口提出)します。裁判所から照会書が郵送される場合があります。

4週

照会書への回答・裁判所の審理

裁判所から郵送で届く照会書に回答します。内容は「放棄の理由・財産の有無・放棄の意思」などです。回答後、裁判所が審理します。

完了

申述受理・受理証明書の取得

裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届き手続き完了です。債権者への提示用に「受理証明書」を取得することも可能です(1通150円)。

専門家に依頼する際に準備しておく書類リスト

初回相談時に以下の書類を準備しておくと、スムーズに手続きが進みます。すべてが揃っていなくても相談は始められますが、手元にある書類はあらかじめ確認しておきましょう。

書類の種類 具体的な内容 必須度
被相続人の死亡証明 死亡診断書(写し)または戸籍謄本 必須
相続人の確認書類 依頼人(相続人)の戸籍謄本・住民票・印鑑証明 必須
借金関係の書類 請求書・督促状・ローン契約書・残高証明書 あれば
相続財産の証明書類 預金通帳・不動産登記事項証明書・固定資産評価証明 あれば
被相続人の住所確認 住民票の除票(最後の住所を確認するため) 必須
未成年者がいる場合 未成年者の戸籍・法定代理人(親権者)の証明書類 必須(該当時)

田中由美からのアドバイス

「費用が高いから専門家には頼めない」とためらって期限を過ぎてしまうケースを、銀行員時代に何度も見てきました。実は、単純な相続放棄であれば司法書士に3〜5万円で依頼でき、法テラスを使えば実質ゼロ円から動くこともできます。費用の心配よりも「まず相談に行く」ことが一番大切です。初回相談は多くの事務所が無料です。期限が過ぎてしまった場合の対処法も参考にしながら、早めに行動してください。

よくある質問

Q. 行政書士に相続放棄を依頼することはできますか?
行政書士は申述書の作成(書類作成)はできますが、裁判所への代理申述や債権者との交渉はできません。裁判所への申述は本人が行う必要があります。シンプルな書類作成サポートのみなら費用は安いですが、手続き全体を任せるなら司法書士または弁護士への依頼をおすすめします。
Q. 相続放棄の依頼後、何日で手続きが完了しますか?
依頼から申述書提出まで通常1〜2週間、受理まで裁判所の審理で1〜4週間かかります。書類が揃っていてシンプルな案件なら合計で1ヶ月以内に完了することが多いです。ただし戸籍収集に時間がかかる場合はもう少し長くなります。期限が迫っている場合は依頼時に必ず伝えてください。
Q. 複数の専門家に見積りを取ることはマナー違反ですか?
まったく問題ありません。費用は事務所によって大きく異なるため、複数の事務所に相談・見積りを依頼することは一般的に推奨されています。ただし相談内容を詳しく伝えることで正確な見積りが得られます。
Q. 遠方に住んでいても専門家に依頼できますか?
はい、可能です。相続放棄の手続きは書面・郵送で進めることができるため、オンライン相談や郵送のみで対応できる事務所も多いです。ただし家庭裁判所への提出は申述人(本人)の管轄裁判所(被相続人の最後の住所地)が基準になります。
Q. 依頼した後にキャンセルした場合、費用はかかりますか?
着手金を支払い済みの場合、着手金は原則として返還されません。ただし契約前・着手前であればキャンセル可能なことがほとんどです。依頼前に「キャンセル時の取り扱い」について確認することをおすすめします。

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まとめ

  • 弁護士への依頼費用:5〜15万円。債権者対応・訴訟まで対応可能
  • 司法書士への依頼費用:3〜8万円。シンプルな放棄ならコスパが高い
  • 行政書士は書類作成のみ対応。代理申述・交渉はできない
  • 法テラスを利用すれば費用の立替・分割払いが可能(収入基準あり)
  • 自力での手続きも可能だが期限超過・複雑な事情がある場合は専門家必須
  • 複数の事務所に見積りを取ることを推奨。費用の総額(実費含む)を必ず確認する

相続放棄の手続き方法相続放棄後の借金の扱いもあわせて確認してください。限定承認との違い相続手続き全体の流れも参考にしながら、早めに専門家に相談することをおすすめします。

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