法定相続分の計算方法【ケース別シミュレーション付き】わかりやすく解説

法定相続分の計算を説明する資料と電卓のイメージ 法定相続・相続人

相続 × 法定相続分

法定相続分の
計算方法を解説

配偶者と子・配偶者と親・兄弟だけなど——
7つのケース別シミュレーションで計算方法を徹底解説します。

7ケースのシミュレーション 具体的な金額で解説 元銀行員AFPが監修

「法定相続分ってどう計算するの?」「自分の場合は何割もらえるの?」——相続が発生すると、まず気になるのが法定相続分の計算ではないでしょうか。法定相続分は遺言書がない場合の遺産分割の基準となるだけでなく、遺留分の計算にも使われます。この記事では、7つのケース別に具体的な金額で法定相続分を計算しながら、わかりやすく解説します。ご自身の家族構成に当てはめてシミュレーションしてみてください。

著者より

銀行で相続業務を担当していた頃、「私はいくらもらえるの?」と不安そうに来店されるお客様が非常に多くいました。法定相続分は「決まったルール」があるので、覚えてしまえばシンプルです。ただし、家族構成によってパターンが異なり、子の有無・配偶者の有無・再婚の有無などで計算が変わります。
この記事では7つのケースを具体例で解説しますので、自分のケースを探して計算してみてください。遺言書がない場合はこの比率が遺産分割の出発点になります。
— 田中由美(AFP・相続診断士・元銀行員)

法定相続分とは何か

法定相続分とは、遺言書がない場合に民法で定められた各相続人の相続割合のことです(民法900条・901条)。相続人全員で話し合い(遺産分割協議)をする際の「目安・出発点」となります。ただし、法定相続分は強制ではなく、相続人全員が合意すれば自由に変更することができます。

法定相続分が使われる場面

  • 遺言書がない場合の遺産分割協議の出発点
  • 遺産分割調停・審判の基準
  • 遺留分の計算(法定相続分×1/2)
  • 相続税の計算(法定相続分で按分)
  • 相続放棄・限定承認の判断の基準

法定相続分は変更できる

  • 相続人全員の合意があれば法定相続分と異なる分割も可能
  • 遺言書があればその内容が優先される
  • 特別受益・寄与分がある場合は調整される
  • 遺産分割協議書に全員が署名・押印すれば法的効力が生じる
  • 一人でも反対すれば法定相続分が基準になる

相続順位と法定相続分の早見表

法定相続人の範囲と優先順位によって、法定相続分が決まります。以下の表を参考にしてください。

相続人の構成 配偶者の相続分 その他の相続人の相続分 根拠法令
配偶者のみ 全部(1/1) 民法900条1号
配偶者+子(第1順位) 1/2 1/2(子全体) 民法900条1号
配偶者+直系尊属(第2順位) 2/3 1/3(直系尊属全体) 民法900条2号
配偶者+兄弟姉妹(第3順位) 3/4 1/4(兄弟姉妹全体) 民法900条3号
子のみ(配偶者なし) 全部(子全体で均等) 民法900条4号
直系尊属のみ(配偶者・子なし) 全部(均等) 民法900条4号
兄弟姉妹のみ(配偶者・子・尊属なし) 全部(均等) 民法900条4号

ケース別シミュレーション(遺産総額3,000万円の場合)

以下では、遺産総額3,000万円を例に、7つのケース別に法定相続分の計算方法を詳しく解説します。

ケース①:配偶者と子ども2人が相続人の場合

設定:父が死亡。相続人は妻・長男・次男

遺産総額:3,000万円(不動産1,500万円・預貯金1,000万円・その他500万円)

相続人 法定相続分の割合 相続額(3,000万円の場合) 計算の根拠
妻(配偶者) 1/2 1,500万円 配偶者の法定相続分(民法900条1号)
長男 1/4 750万円 子全体の1/2を人数で均等割り(1/2÷2人)
次男 1/4 750万円 子全体の1/2を人数で均等割り(1/2÷2人)
合計 1/1(全額) 3,000万円

ケース②:配偶者と子ども3人(1人は前妻との子)が相続人の場合

設定:父が死亡。相続人は現在の妻・現在の妻との子2人・前妻との子1人(認知または婚姻中に生まれた子)

遺産総額:3,000万円。※前妻との子も同じ「子」として均等に相続分を持つ

相続人 法定相続分の割合 相続額
現在の妻(配偶者) 1/2 1,500万円
現在の妻との子(2人各) 1/6 500万円
前妻との子(1人) 1/6 500万円

ポイント:前妻との子も現在の妻との子も、「父の子」である点では同じです。子全体の相続分(1/2)を子の人数(3人)で均等割りします。前妻との子だからといって相続分が少なくなることはありません(民法900条4号)。

ケース③:配偶者と父母(直系尊属)が相続人の場合

設定:子のいない夫が死亡。相続人は妻・夫の父・夫の母(子はいない)

遺産総額:3,000万円。子がいないため第2順位(直系尊属)が相続人になる

相続人 法定相続分の割合 相続額
妻(配偶者) 2/3 2,000万円
夫の父 1/6 500万円
夫の母 1/6 500万円

ポイント:子がいない場合は第2順位の直系尊属(父母・祖父母等)が相続人になります。配偶者の相続分は子がいる場合より多い2/3になります。直系尊属の相続分1/3を父母2人で均等割りすると、各1/6になります。

ケース④:配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合

設定:子も父母もいない夫が死亡。相続人は妻・夫の兄・夫の姉

遺産総額:3,000万円。第3順位(兄弟姉妹)が相続人になる

相続人 法定相続分の割合 相続額
妻(配偶者) 3/4 2,250万円
夫の兄 1/8 375万円
夫の姉 1/8 375万円

ポイント:兄弟姉妹が相続人の場合、配偶者の割合が3/4と最も多くなります。兄弟姉妹全体で1/4を均等割りします。また、兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書で兄弟姉妹を排除することも可能です。

ケース⑤:子ども3人だけが相続人(配偶者なし)の場合

設定:配偶者が先に死亡している父が死亡。相続人は長女・次女・三女の3人

遺産総額:3,000万円。配偶者がいないため子全員で均等分割

相続人 法定相続分の割合 相続額
長女 1/3 1,000万円
次女 1/3 1,000万円
三女 1/3 1,000万円

ポイント:配偶者がいない場合、遺産の全額を子で均等に分けます。長女・次女・三女の区別はなく、全員が同じ相続分を持ちます(民法900条4号)。

ケース⑥:代襲相続が発生した場合(子が先に死亡)

設定:祖父が死亡。相続人は妻・長女・次男の子ども2人(次男は祖父より先に死亡→代襲相続)

遺産総額:3,000万円。次男の子2人が代襲して次男の相続分を引き継ぐ

相続人 法定相続分の割合 相続額 備考
妻(配偶者) 1/2 1,500万円 通常通り
長女 1/4 750万円 子2人分の1/2を均等割り
次男の子A(孫) 1/8 375万円 次男の相続分1/4を孫2人で均等割り
次男の子B(孫) 1/8 375万円 次男の相続分1/4を孫2人で均等割り

ポイント(代襲相続):被相続人(祖父)より先に子が死亡した場合、その死亡した子の子(孫)が代わりに相続します(民法887条2項)。孫は死亡した親(次男)の相続分をそのまま引き継ぎ、さらに人数で均等割りします。

ケース⑦:半血兄弟(異父・異母兄弟)がいる場合

設定:独身・子なし・両親も死亡した男性が死亡。相続人は全血兄(同じ父母)・半血妹(同じ父・異なる母)

遺産総額:3,000万円。半血兄弟の相続分は全血兄弟の1/2になる(民法900条4号ただし書)

相続人 法定相続分の割合 相続額 備考
全血兄(同じ父母) 2/3 2,000万円 全血の相続分は「2」として計算
半血妹(同じ父・異なる母) 1/3 1,000万円 半血の相続分は全血の1/2(「1」として計算)

ポイント(半血兄弟):兄弟姉妹の場合のみ、父母の一方のみを同じくする「半血兄弟」の相続分は全血兄弟の1/2となります(民法900条4号ただし書)。全血兄の単位を「2」、半血妹を「1」とすると合計3単位。兄は2/3、妹は1/3になります。なお、子の場合は非嫡出子も嫡出子も相続分は同じです(2013年改正)。

法定相続分の計算で注意すべきポイント

法定相続分の計算を実際に行う際に注意すべき点を整理しました。

注意点 内容
配偶者は常に相続人 法律上の婚姻関係にある配偶者は常に相続人。内縁・事実婚の相手は相続人にならない(遺言書による遺贈は可能)
相続順位は厳格 第1順位(子)がいれば第2順位(直系尊属)は相続人にならない。第2順位がいれば第3順位(兄弟姉妹)は相続人にならない
特別受益・寄与分による調整 生前贈与(特別受益)や介護への貢献(寄与分)がある場合、法定相続分から調整される。持戻しの計算が必要
相続放棄した場合は計算から除外 相続放棄した人は最初から相続人でなかったことになり、残りの相続人で法定相続分を計算し直す。代襲相続は発生しない
不動産は分割が困難 不動産を法定相続分通りに分けると共有状態になり、売却・活用が難しくなる。換価分割(売却後に分配)や代償分割(一人が取得して他の人に金銭を支払う)を検討する
相続税の計算との違い 相続税の計算では法定相続分を使って税額を按分するが、実際の遺産取得額(遺産分割協議の結果)に応じて最終的な税額が決まる。法定相続分での分割が必ずしも相続税上有利とは限らない

特別受益・寄与分による法定相続分の修正

法定相続分はあくまで「出発点」であり、特別受益(生前贈与)や寄与分(介護・事業の貢献)がある場合は調整されます。これを「具体的相続分」といい、実際の遺産分割では法定相続分よりもこちらが基準になります。

特別受益とは

特別受益とは、相続人が被相続人から生前に受けた特別な利益(生前贈与・遺贈・結婚資金・教育費等)のことです(民法903条)。特別受益がある場合は、その金額を相続財産に「持ち戻し」た上で法定相続分を計算し、既に受け取った額を差し引いた残額が実際の相続分になります。

特別受益の計算例

遺産3,000万円・長男が生前に1,000万円の贈与を受けた場合(子は長男・次男の2人):
①みなし相続財産 = 3,000万円 + 1,000万円 = 4,000万円
②長男の法定相続分 = 4,000万円 × 1/2(子の相続分)× 1/2(人数割り)= 1,000万円
③長男の実際の相続額 = 1,000万円 − 1,000万円(既に受け取った額)= 0円
④次男の法定相続分 = 4,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,000万円(次男の相続額はそのまま1,000万円)
⑤残余(3,000万円 − 1,000万円)= 2,000万円。長男が0円・次男が2,000万円を分割し合計3,000万円

特別受益の対象になるもの:結婚・養子縁組のための資金(結納・挙式費用等)、住居の購入資金・土地の提供、学費(大学等)、生計の資本となる贈与。通常の生活費の援助・少額贈与は特別受益に該当しないことが多いです。また遺言書で「持戻し免除」を指定している場合は計算から除外されます。

寄与分とは

寄与分とは、相続人が被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした場合に認められる追加相続分です(民法904条の2)。たとえば、親の介護を長期間一人で担い、施設入所を防いだ場合や、親の事業を無報酬で手伝って財産を増やした場合などが該当します。

寄与分が認められやすいケース 認められにくいケース
長期間・継続的に無報酬で親の療養看護をした(施設入所費用を節約できた) 当然と考えられる程度の家族の扶養義務の範囲内の行為
親の事業を無報酬(または低賃金)で手伝い、財産の増加に貢献した ごく短期間の介護・一般的な生活補助
自己資金を提供して親の財産の維持・管理を行った 相続人以外(嫁・婿)が介護した場合(特別寄与料の請求は可能)

寄与分は相続人間の協議で決める

寄与分は相続人全員の協議で決めます。協議が整わない場合は家庭裁判所の審判で決定します。寄与分が認められた場合、相続財産から寄与分額を控除した残額を法定相続分で分割し、寄与相続人は寄与分+法定相続分を受け取ります。なお、相続人以外(嫁や婿など)が介護に貢献した場合は、2019年の法改正により「特別寄与料」の請求が認められています(民法1050条)。

法定相続分と遺言書の関係

法定相続分はあくまで遺言書がない場合のデフォルトのルールです。遺言書がある場合は遺言書の内容が法定相続分に優先します。ただし、法定相続分の1/2(兄弟姉妹を除く)で算定される遺留分は、遺言書があっても保護されます(民法1042条)。

遺言書がある場合

  • 遺言書の内容が法定相続分に優先する
  • 遺言書と異なる分割も相続人全員の合意があれば可能
  • 遺留分(法定相続分の1/2等)は遺言書があっても保護される
  • 遺言書があっても遺産分割協議は可能(全員合意が前提)

遺言書がない場合

  • 法定相続分が遺産分割協議の基準になる
  • 相続人全員の合意で法定相続分と異なる分割も可能
  • 一人でも合意しない場合は家庭裁判所で調停・審判
  • 遺産分割協議書に全員の署名・押印が必要

⚠ 法定相続分はあくまで「目安」——実際の手続きには遺産分割協議書が必要

不動産の相続登記・銀行口座の解約・株式の移管など、実際の相続手続きには「遺産分割協議書」(相続人全員の署名・押印)が必要です。「法定相続分通りに分けたいから協議書なしで手続きできる」と思っている方もいますが、原則として各金融機関・法務局は遺産分割協議書の提出を求めます。なお、法定相続分の割合で登記申請する「法定相続分による相続登記」は可能ですが、その場合は後から共有状態を解消する手続きが別途必要になります。相続手続きの全体の流れも確認しながら、遺産分割協議書の作成を専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q. 離婚した元配偶者に法定相続分はありますか?

いいえ、ありません。離婚が成立した時点で法律上の婚姻関係が解消されるため、元配偶者は相続人ではなくなります。ただし、元配偶者との間に生まれた子は、離婚後も親子関係が続くため、法定相続人として相続権を持ちます。子の相続分は離婚の有無に関わらず同じです。

Q. 養子(特別養子・普通養子)の相続分は実子と同じですか?

はい、同じです。養子(普通養子・特別養子ともに)は法律上の子として扱われるため、実子と同じ法定相続分を持ちます。普通養子の場合は実親との親子関係も続くため、実親が亡くなった際にも相続権があります。特別養子の場合は実親との法律上の親子関係が解消されるため、実親への相続権はありません。

Q. 相続財産にマイナス(借金)がある場合、法定相続分はどうなりますか?

借金などのマイナスの財産(債務)も法定相続分に応じて各相続人が引き継ぎます。例えば遺産総額3,000万円・借金1,000万円の場合、実質の遺産は2,000万円ですが、借金は法定相続分に従って各相続人が負担します。借金の方が多い場合は「相続放棄」(相続開始を知った日から3ヶ月以内)を検討してください。

Q. 生前贈与を受けた相続人の法定相続分はどう計算しますか?

生前に受けた贈与が「特別受益」に該当する場合、その金額を相続財産に加算した上(持戻し)で法定相続分を計算し、既に受け取った贈与額を差し引いた残額が実際の相続分となります。ただし、遺言書で「持戻し免除の意思表示」がある場合や、婚姻20年以上の配偶者への居住用不動産の贈与は持戻し不要(民法903条4項)です。

Q. 相続人が相続放棄した場合、他の相続人の相続分は変わりますか?

はい、変わります。相続放棄した人は最初から相続人でなかったとみなされるため、残りの相続人で法定相続分を計算し直します。例:子3人のうち1人が相続放棄した場合→残りの2人で1/2ずつになります。ただし、相続放棄した人の子(孫)は代襲相続しません(代襲相続は相続放棄では発生しない)。

Q. 法定相続分通りに遺産を分けないといけないのですか?

いいえ、必須ではありません。法定相続分は「目安」であり、相続人全員が合意すれば自由に変更できます。例えば「介護の貢献があった長女に多く渡す」「不動産は長男が取得し、他の兄弟には現金で補償する」といった柔軟な分け方が可能です。遺産分割協議書に全員が署名・押印すれば法的効力が生じます。ただし一人でも反対する場合は家庭裁判所での調停が必要です。また、法定相続分に基づかない分割でも相続税申告は問題なく行えます。むしろ配偶者の税額軽減(配偶者が取得した財産が法定相続分または1億6千万円のいずれか多い方まで非課税)を活用するためには、配偶者が多く取得する形の遺産分割が有利なケースもあります。専門家に相談して最適な分割方法を検討しましょう。

まとめ

法定相続分は遺言書がない場合の遺産分割の基準です。家族構成(配偶者の有無・子の有無・相続順位)によって割合が変わります。7つのケースシミュレーションを参考に、ご自身の状況を確認してみましょう。

  • 配偶者+子:配偶者1/2・子全体1/2(均等割り)
  • 配偶者+直系尊属(子なし):配偶者2/3・直系尊属1/3
  • 配偶者+兄弟姉妹(子・尊属なし):配偶者3/4・兄弟姉妹1/4
  • 代襲相続は死亡した子の相続分を孫が引き継ぐ
  • 半血兄弟の相続分は全血兄弟の1/2
  • 法定相続分は強制ではなく、全員合意で変更可能
  • 遺言書があれば遺言書が優先・遺留分は法定相続分の1/2が基準

法定相続人の範囲と優先順位も合わせて確認し、遺言書がない場合の相続の流れも参考にして、スムーズな相続手続きを進めてください。遺産分割でお困りの場合は、弁護士・司法書士などの専門家への早めの相談をおすすめします。

また、法定相続分通りの分割が必ずしも最善とは限りません。特別受益・寄与分・不動産の換価・相続税の負担など、実際の状況を踏まえた遺産分割協議が重要です。できれば遺言書で事前に分割方針を定めておくと、相続人の負担を大幅に減らすことができます。今日から遺言書の作成や家族への意思の伝達を始めることをおすすめします。

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