INHERITANCE GUIDE
法定相続人とは?
誰が・どれだけ相続できるのか
「自分は相続人になれるのか」「兄弟は関係あるのか」——法定相続人の範囲と優先順位、法定相続分をケース別にわかりやすく解説します。
この記事でわかること
法定相続人の範囲・順位・相続分
こんな方におすすめ
相続人が誰かを確認したい方
「親が亡くなったけれど、相続人は自分だけ?」「離婚した前妻の子も関係あるの?」「親が先に亡くなっていたら、孫はどうなる?」——法定相続人をめぐる疑問は、思っている以上に複雑です。
私が銀行員として22年間働いた経験の中で、「誰が相続人になるか」を思い込みで判断して、後から大きなトラブルになったケースを何度も見てきました。戸籍を調べて初めて「知らなかった相続人」が現れ、手続きがすべて最初からやり直しになった例もあります。
この記事では、法定相続人の範囲と優先順位、それぞれの法定相続分を、ケース別の早見表を使ってわかりやすく解説します。「自分の家族の場合はどうなるのか」をこの記事で確認してください。
法定相続人とは何か
法定相続人とは、民法によって定められた「遺産を受け取る権利がある人」のことです。
遺言書がある場合は遺言の内容が優先されますが、遺言書がない場合は法定相続人が法律で定めた割合(法定相続分)に従って遺産を分けます。誰が法定相続人になるかは、感情や付き合いの深さではなく、あくまで法律上の関係(戸籍)によって決まります。
法定相続人になれるのは、大きく分けて「配偶者」と「血族相続人」の2種類です。配偶者は常に法定相続人となり、血族相続人には「第1順位〜第3順位」の優先順位があります。
法定相続人の2つのグループ
① 配偶者
法律上の婚姻関係にある夫または妻。常に法定相続人となる。内縁関係・事実婚は含まない。
② 血族相続人
子・親・兄弟姉妹など血のつながりのある人。優先順位(第1〜3順位)があり、上位の人がいると下位の人は相続人にならない。
法定相続人の優先順位
血族相続人には優先順位があります。上の順位の人がいる場合、下の順位の人は法定相続人になりません。配偶者はどの順位とも共同相続人となります。
| 順位 | 相続人 | 補足 |
|---|---|---|
| 常に | 配偶者 | 法律婚のみ。内縁・事実婚は対象外 |
| 第1順位 | 子(直系卑属) | 実子・養子・認知した子・前婚の子も含む。子が先に亡くなっている場合は孫(代襲相続) |
| 第2順位 | 父母・祖父母(直系尊属) | 第1順位の相続人がいない場合のみ。父母がいなければ祖父母 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 第1・第2順位がともにいない場合のみ。兄弟が先に亡くなっている場合は甥・姪(代襲相続、一代限り) |
ケース別|法定相続人と法定相続分の早見表
法定相続分とは、法律が定めた「各相続人が受け取る割合」です。遺産分割協議で全員が合意すれば、この割合と異なる分け方も可能です。以下のケース別でご自身の状況を確認してください。
配偶者と子がいる場合(最も一般的なケース)
日本で最も多いケースです。配偶者と子(実子・養子を含む)が法定相続人となります。
配偶者
1/2
子(全員で)
1/2
子が複数いる場合は、1/2を人数で等分します。子が3人なら一人あたり1/6ずつ。実子・養子・認知した子・前婚の子はすべて同じ割合です。
配偶者と父母(親)がいる場合
子がいない場合、第2順位の父母が相続人になります。
配偶者
2/3
父母(全員で)
1/3
父母が両方いる場合は、1/3を父と母で折半(それぞれ1/6)します。
配偶者と兄弟姉妹がいる場合
子も親もいない場合、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。
配偶者
3/4
兄弟姉妹(全員で)
1/4
兄弟姉妹が複数いる場合は、1/4を人数で等分します。なお、半血(片方の親のみが同じ)の兄弟姉妹は、全血の兄弟姉妹の半分の相続分となります。
配偶者がいない場合
配偶者がいない(独身・離婚・死別後)場合は、血族相続人が全額を相続します。
| 相続人 | 法定相続分 |
|---|---|
| 子のみ | 全額(複数いれば等分) |
| 父母のみ(子なし) | 全額(父母で等分) |
| 兄弟姉妹のみ(子・親なし) | 全額(兄弟姉妹で等分) |
注意が必要な法定相続人のケース
法定相続人には、「知らなかった」では済まない落とし穴がいくつかあります。銀行員時代に実際に見てきたケースをもとに説明します。
前婚の子・認知した子も法定相続人になる
これは最も多い「想定外」の一つです。離婚した前妻(前夫)との間に子がいる場合、その子も法定相続人です。現在交流がなくても、戸籍上の親子関係がある以上、相続権は消えません。
私が担当した案件でも、亡くなった夫に前妻の子が2人いたことが、相続手続きの途中で判明したケースがありました。現在の妻は「何十年も会っていないから関係ない」と言いましたが、法律はそれを認めません。全員の合意なしに遺産分割協議書は作れず、手続きが数ヶ月以上止まりました。
養子も実子と同じ相続権を持つ
養子縁組した子は、実子と同じ法定相続分を持ちます。普通養子縁組の場合、養親と実親の両方の相続人になります。一方、特別養子縁組の場合は実親との法的な親子関係が切れるため、実親の相続人にはなりません。
相続税の計算では、法定相続人に算入できる養子の数に制限があります(実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで)が、相続権自体には人数制限はありません。
代襲相続とは何か
代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が、被相続人より先に死亡していた場合に、その人の子(孫・甥・姪)が代わりに相続する制度です。
子が先に亡くなっていた場合
その子の子(孫)が代わりに相続。孫も亡くなっていれば曾孫へと続く(無制限に代襲)
兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合
その子(甥・姪)が代わりに相続。ただし代襲は一代限り(甥・姪の子は対象外)
内縁・事実婚のパートナーは法定相続人ではない
長年一緒に暮らしていても、法律上の婚姻届を提出していない内縁・事実婚のパートナーには、法定相続権がありません。遺産を受け取らせたい場合は、必ず遺言書に記載する必要があります(ただし遺留分には注意が必要です)。
また、相続後の手続きでも内縁関係の証明は困難なため、生前に対策をしておくことが重要です。
法定相続人を確定するための手順
法定相続人を正確に把握するには、感覚や記憶ではなく、戸籍書類による確認が必須です。以下の手順で進めてください。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を全て取り寄せる(市区町村役場・郵送可)
- 戸籍を辿り、婚姻歴・子・養子・認知の有無を確認する
- 相続人全員の現在の戸籍謄本を取得する
- 必要に応じて法定相続情報一覧図を法務局で作成する(各種手続きが1枚で済む)
法定相続分と異なる分け方はできる?
法定相続分はあくまで「法律が定めた基準」であり、必ずその割合で分けなければならないわけではありません。相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる割合での遺産分割も可能です。
法定相続分と異なる分け方ができる場合
- 遺産分割協議で全員が合意した場合
- 遺言書で割合が指定されている場合
- 寄与分・特別受益が認められた場合
遺留分には注意
遺言書で特定の人に全財産を渡す場合でも、一部の相続人(配偶者・子・親)には遺留分という最低限の取り分が保障されています。
よくある質問
法定相続人に関する手続きの流れ
法定相続人が確定したら、次のステップへ進みます。全体の流れを把握しておきましょう。
- 戸籍収集で法定相続人を確定する
- 遺言書の有無を確認する(遺言書があれば内容が優先)
- 相続財産(プラス・マイナス両方)を調査する
- 相続するか放棄するかを3ヶ月以内に判断する
- 相続人全員で遺産分割協議を行い、協議書を作成する
- 各財産の名義変更・相続税申告(10ヶ月以内)を進める
まとめ
法定相続人は「感情」ではなく「戸籍上の関係」で決まります。この記事のポイントを整理します。
- 配偶者は常に法定相続人。内縁・事実婚は対象外
- 血族相続人は第1順位(子)→第2順位(親)→第3順位(兄弟姉妹)の順で決まる
- 前婚の子・認知した子・養子も法定相続人になる。思い込みは禁物
- 子が先に亡くなっている場合は代襲相続で孫が相続する
- 法定相続人の確定には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要
- 法定相続分は基準であり、全員の合意があれば異なる割合での分割も可能
「誰が法定相続人か」を早めに把握することが、スムーズな相続手続きの第一歩です。複雑なケースや不安な点があれば、司法書士・弁護士への早めの相談をおすすめします。

