遺産・財産調査
亡くなった親の通帳・口座を探す方法
通帳が1冊しか見つからない……
他にも口座があるかもしれない、そんな不安を解消します
「通帳が1冊しか出てこない。本当にこれだけなのか……」
「父はゆうちょにも入れていたと思うけど、証拠が何もない」
親が亡くなった後、こんな不安を抱えたまま手探りで探し続ける方は少なくありません。
銀行口座は複数の金融機関に分散していることが多く、通帳がない・キャッシュカードが見つからない場合でも、調べる方法はあります。
この記事では、自宅の調査から始まり、郵便物・確定申告書・金融機関への問い合わせまで、通帳と口座を見落とさず特定する手順を元銀行員が解説します。
著者より
ある火曜日の午後、60代の女性がひとりで窓口にいらっしゃいました。 「母が先月亡くなりまして……この通帳の解約をお願いしたいんですが」と、一冊の古びた通帳を差し出しました。
名義人の情報を照会してみると、当行にはもう一件、定期預金の口座がありました。 「お母さま、当行にもう一口座お持ちです」とお伝えすると、女性は少し目を見開いて「え、知りませんでした」とつぶやきました。 さらに「他の銀行にも口座がある可能性はありますか?」と聞くと、「……わかりません」と。 「お母様の郵便物や確定申告書は確認されましたか?」と聞いたら「まだ整理できていなくて」と言葉が詰まりました。
後ろに列ができていたので、それ以上案内できなかった。帰り際に「ありがとうございました」と頭を下げながら出ていくその背中を見て、 あの方がこれから一人でどうやって調べていくんだろう、と胸が痛くなりました。 あの日、窓口で伝えられなかったことをここに書きます。
田中 由美(AFP・相続診断士・元銀行員)
まず自宅を徹底的に調べる
口座調査の出発点は、故人の自宅です。通帳・キャッシュカード・印鑑・郵便物など、金融機関との取引を示す物証を探してください。 見つかった情報を一枚の紙にメモしながら進めると、後の手続きがスムーズです。
通帳・キャッシュカードを探す場所
タンス・引き出しの中
通帳は衣類の引き出しや、鍵のかかる引き出しにまとめて保管されていることが多いです。 古い通帳も捨てずに取っておく方が多いため、複数冊まとめて出てくることがあります。
金庫・手提げ金庫
不動産の権利証や印鑑証明書と一緒に保管されていることがあります。 金庫の暗証番号がわからない場合は、鍵屋や金庫メーカーに開錠を依頼できます。
押し入れ・クローゼット
紙袋や箱に入れて押し入れにしまっている方も多くいます。 特に古い世代は「銀行の書類をまとめた箱」を作っていることが多く、 そこに複数行の通帳がまとまっていることがあります。
仏壇・神棚の周辺
「大切なもの」を仏壇の引き出しや神棚の近くに置く習慣のある方がいます。 通帳・印鑑・権利証がそこにまとまっているケースがあります。
印鑑の種類にも注目
銀行印(届出印)の数を確認してください。印鑑が複数あれば、それぞれ別の金融機関に届け出ている可能性があります。 複数の銀行印がある場合は、対応する口座を探す手がかりになります。
郵便物・書類で金融機関を特定する
通帳が見つからなくても、金融機関からの郵便物が口座の存在を教えてくれます。 故人の郵便受けを定期的に確認し、届いた郵便物を種類別に分けてください。
| 郵便物の種類 | わかること | 送付時期の目安 |
|---|---|---|
| 取引残高のお知らせ | 口座の存在・残高の概算 | 年1〜4回(金融機関による) |
| 定期預金の満期案内 | 定期預金口座の存在・金額 | 満期の1〜2ヶ月前 |
| 口座振替のご案内 | 引き落とし用の口座 | 引き落とし開始時・変更時 |
| ATM・キャッシュカード案内 | 口座の存在・発行銀行 | カード更新時 |
| 株式配当金の振込通知 | 振込先口座の金融機関 | 配当支払い時期(年2回が多い) |
確定申告書・源泉徴収票から探す
確定申告書(第二表)や「利子所得の源泉徴収票」には、利息が発生した金融機関名が記載されることがあります。 過去3〜5年分の確定申告書を確認し、「利子所得」「配当所得」の欄に見知らぬ金融機関名がないか確認してください。
確定申告書で確認するポイント
- 第一表「利子所得」欄の金額と徴収税額
- 第二表の「所得の内訳書」欄に記載の金融機関名
- 添付書類の「特定口座年間取引報告書」(証券口座の存在もわかる)
- 「配当所得」欄に記載がある場合は株式保有の可能性あり
- 確定申告していない場合は通帳の入金記録で「利子」の文字を探す
銀行・金融機関への問い合わせ方
自宅調査で金融機関の目星がついたら、各金融機関の窓口に問い合わせます。 「口座の存在確認」と「残高証明書の取得」を同時に依頼するのが効率的です。
窓口へ持参するもの
必須書類
- 故人の死亡がわかる戸籍謄本
- 手続きをする相続人の本人確認書類(運転免許証など)
- 故人と相続人の続柄がわかる戸籍謄本
- 認印(金融機関によって実印が必要な場合も)
あると便利なもの
- 故人の通帳・キャッシュカード(なくてもOK)
- 故人の生年月日・住所がわかるもの
- 口座番号(不明でも照会可能な場合が多い)
- 事前に電話予約(待ち時間を減らせる)
元銀行員のひと言
「口座があるかどうかわからないのですが、照会していただけますか」と率直に伝えて大丈夫です。 金融機関の窓口は相続手続きに慣れており、名義人の氏名・生年月日・住所があれば照会できます。 口座番号や通帳がなくても、照会して「口座なし」と確認できればそれも重要な情報です。
残高証明書は「相続開始日」時点で取得する
口座が確認できたら、「相続開始日(亡くなった日)時点での残高証明書」を取得してください。 相続税の申告に使うため、死亡日時点の残高が記載されたものが必要です。 「今日現在の残高証明書」ではなく、必ず「〇年〇月〇日(亡くなった日)付け」と指定してください。
| 書類名 | 用途 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 残高証明書(相続開始日付) | 相続税申告・遺産分割協議の資料 | 無料〜1,100円(行による) |
| 取引明細書(過去数年分) | 遺産の流れ確認・生前贈与の調査 | 数百〜数千円(期間による) |
| 定期預金証明書 | 定期預金の存在と金額の証明 | 無料〜1,100円(行による) |
ゆうちょ銀行の口座を探す方法
ゆうちょ銀行は全国の郵便局で取引できるため、故人が気づかないうちに複数の「記号番号」(口座)を持っていることがあります。 また、旧郵便貯金時代(2007年以前)に作った口座が長期放置されているケースも多くあります。
ゆうちょ銀行の「貯金照会」手続き
- 最寄りのゆうちょ銀行窓口(または直営店)に出向く
- 「相続による貯金照会を行いたい」と伝える
- 「相続確認表」を受け取り、必要事項を記入
- 故人の死亡が確認できる戸籍謄本・申請者の本人確認書類を提出
- 数日〜数週間後に照会結果が通知される
※ ゆうちょ銀行では名義人名で全国の口座を一括照会できます。
旧郵便貯金の注意点
2007年10月以前に預け入れた郵便貯金(旧・郵便貯金)は、最終取引から20年2ヶ月経過すると権利が消滅(国庫帰属)します。 ただし、2007年10月以降に民営化後のゆうちょ銀行に引き継がれた口座については、通常の相続手続きが可能です。 古い通帳が出てきた場合は、まずゆうちょ銀行に確認してください。
ネット銀行の口座を探す方法
楽天銀行・PayPay銀行・SBI新生銀行・auじぶん銀行など、通帳が発行されないネット銀行は相続人が気づきにくい盲点です。 特に近年は高齢の方もネット銀行を利用していることがあり、見落とすリスクが高まっています。
スマートフォンのアプリを確認
故人のスマートフォンに銀行アプリが入っていないか確認します。 アプリ一覧に「楽天銀行」「PayPay銀行」などがあれば口座が存在します。 ロック解除が必要な場合は相続人として各行に問い合わせてください。
メールの受信ボックスを確認
ネット銀行はすべての通知をメールで送ります。 故人のメールアカウントに「〇〇銀行」「口座振替」「残高」といった件名のメールがないか確認します。 メールにアクセスできる場合は送信元のドメインも確認してください。
PCのブラウザ履歴・ブックマーク
故人のパソコンのブラウザ(Chrome・Safariなど)の履歴やブックマークに 銀行のウェブサイトが保存されていることがあります。 「保存されたパスワード」の一覧も確認できる場合があります。
通帳の振込・引き落とし記録
実店舗の銀行通帳に「楽天銀行」「PayPay銀行」などへの振込記録があれば、 ネット銀行への送金を繰り返している可能性があります。 通帳の摘要欄を過去2〜3年分さかのぼって確認してください。
主なネット銀行の相続問い合わせ先
| 銀行名 | 問い合わせ方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 楽天銀行 | 電話・郵送 | 相続専用フォームあり |
| PayPay銀行 | 電話・郵送 | 相続手続き専用窓口あり |
| SBI新生銀行 | 電話・オンライン | 相続専用ページから申請 |
| auじぶん銀行 | 電話・郵送 | 戸籍謄本等の郵送が必要 |
| 住信SBIネット銀行 | 電話・郵送 | 相続専用コールセンターあり |
※ 手続きの詳細は各銀行の公式サイトで最新情報を確認してください。
口座が凍結された場合の対応
金融機関は故人の死亡を知った時点で口座を凍結します。凍結後は原則として引き出しや送金ができなくなります。 しかし、葬儀費用など当面の費用については、法改正(2019年7月)により一定額の引き出しが可能です。
遺産分割前の預貯金払戻し制度(2019年改正)
遺産分割協議が完了する前でも、「残高×1/3×法定相続分」の金額(上限150万円/金融機関)を1人の相続人が単独で引き出せます。 葬儀費用・医療費の支払いに充てることができ、他の相続人の同意は不要です。 詳しくは銀行口座が凍結されたら?解除する手順と注意点をご確認ください。
見つかった口座の整理と次のステップ
口座がすべて特定できたら、一覧にまとめておきましょう。 相続財産全体の調査と合わせて「財産目録」を作成すると、 遺産分割協議や相続税申告の際に相続人全員で共有しやすくなります。
口座一覧メモの記載例
1. ○○銀行 ○○支店 口座種類:普通預金 口座番号:1234567 残高(相続開始日):1,250,000円 残高証明書:取得済み(2026年4月10日) 2. ゆうちょ銀行 記号番号:12340-12345678 種類:通常貯金 残高(相続開始日):380,000円 残高証明書:取得済み(2026年4月15日) 3. ○○銀行 ○○支店 口座種類:定期預金 口座番号:7654321 残高(相続開始日):3,000,000円(満期日:2026年6月30日) 残高証明書:未取得(4月20日に窓口へ予約済み)
よくある質問
まとめ
亡くなった親の通帳・口座を探すには、自宅の物理的な調査から始め、郵便物・確定申告書・スマートフォンのアプリまで幅広く確認することが大切です。
- 自宅調査:タンス・金庫・押し入れ・仏壇まわりを確認
- 郵便物:残高通知・定期満期案内・振替通知を活用
- 確定申告書:利子所得・配当所得の欄で金融機関を特定
- ゆうちょ銀行:「貯金照会」で全国一括照会が可能
- ネット銀行:スマホアプリ・メール・ブラウザ履歴で確認
- 残高証明書:相続開始日(亡くなった日)時点を指定して取得
見つかった口座はすべて一覧にまとめ、相続財産の調べ方に反映させましょう。 口座が凍結されて当面の費用に困る場合は、銀行口座が凍結された場合の対処法も確認してください。

