相続 × クレジットカード
故人のクレジットカードはどうなる?
相続と解約の手順
残高・ポイント・引き落とし・家族カード……
放置すると意外なトラブルにつながります。
親が亡くなった後、財布の中のクレジットカードや通帳の引き落とし明細を見て「このカードどうすればいいんだろう」と戸惑う方はとても多いです。故人のクレジットカードは死亡と同時に使えなくなるわけではなく、カード会社に連絡して手続きをするまで、引き落としが続くことがあります。残高・ポイント・家族カード・公共料金の引き落としなど、知らずに放置するとトラブルになるポイントが複数あります。この記事では、相続が発生したら最初にやることの一つとして、クレジットカードの解約・精算手続きをわかりやすく解説します。
著者より
ある日の午後、60代の女性が少し困った顔で窓口を訪ねてきました。「夫が亡くなって2ヶ月になるんですが、先月も今月も夫のカードから引き落としがあって……」と通帳を差し出したのです。
確認してみると、故人名義のカードが3枚あり、それぞれに電気・ガス・NHKの引き落とし設定が残っていました。カード会社には連絡していなかったとのことで、残高も数万円ありました。
手続き自体は難しくはないのですが、「何をどの順番でやればいいか」がわからないまま放置してしまう方が多い。この記事を読めば、今日から動けるようになります。
— 田中由美(AFP・相続診断士・元銀行員)
故人のクレジットカード、まず知っておくこと
クレジットカードは本人が亡くなると、規約上「会員資格が消滅」します。しかし、カード会社が死亡を把握していない間は、自動的に利用停止にはなりません。引き落とし設定がある場合は、解約手続きをするまで引き落としが続きます。
放置すると起きること
- 公共料金・サブスク等の引き落としが継続する
- 年会費の引き落としが発生する
- 残高(ショッピング・キャッシング)が相続財産として残る
- 家族カードが使えない状況になることがある
- ポイントが失効する
早めに連絡するメリット
- 不要な引き落としを止められる
- 残高・ポイントの状況が把握できる
- 年会費の無駄な発生を防げる
- 相続財産の全体像を早く把握できる
- カード会社から必要書類を案内してもらえる
⚠ 故人のカードを勝手に使ってはいけない
故人が亡くなった後、その方のクレジットカードを相続人が使用することは不正使用(詐欺・窃盗罪に問われる可能性)があります。また、使用すること自体が「単純承認」(相続の意思表示)とみなされる可能性もあり、後から相続放棄ができなくなることがあります。絶対に使わないでください。
まず故人のカードをすべて把握する
手続きの前に、故人が持っていたカードをすべて洗い出します。相続財産の調べ方と同様に、複数の方法を組み合わせて網羅的に確認しましょう。
クレジットカード解約の手続きフロー
カードをすべて把握したら、各カード会社に連絡して解約手続きを進めます。手順はカード会社によって多少異なりますが、基本的な流れは共通です。
カードの残高(未払い分)はどうなる?
故人のクレジットカードに未払い残高(ショッピング・キャッシング)がある場合、それは負の財産として相続の対象になります。親の借金の相続と同じ扱いです。
| 残高の種類 | 内容 | 相続での扱い |
|---|---|---|
| ショッピング残高 | 購入代金の未払い分・分割払い残高 | 負の財産として相続人が法定相続分で引き継ぐ |
| キャッシング残高 | 現金借入の返済残高 | 負の財産として相続人が法定相続分で引き継ぐ |
| リボ払い残高 | 毎月定額返済中の残高 | 負の財産。死亡後は利息の扱いをカード会社と確認 |
| 年会費(次回分) | 次の年会費更新日が来た場合 | 早めに解約すれば発生しない(タイミング次第) |
💡 残高がある場合の相続税との関係
クレジットカードの残高(ショッピング・キャッシング)は相続税の計算において「債務控除」の対象になります。死亡日時点の残高を確認し、相続税申告に正確に反映させましょう。残高証明書の発行をカード会社に依頼することをすすめます。
ポイント・マイルはどうなる?
クレジットカードのポイントやマイルは、多くのカード会社の規約で「本人が死亡した時点で失効」または「解約と同時に失効」と定められています。ただし、カード会社によっては解約前に使い切ることが認められる場合もあります。
| ポイント・マイルの扱い | カード会社の方針(例) |
|---|---|
| 解約と同時に全失効 | 多くのカードで採用。相続人による移行・換金は原則不可 |
| 解約前に交換・消費可能 | 一部のカードでは、相続人が手続き後に商品や商品券へ交換できる場合がある |
| 航空マイル(ANAマイル等) | 原則として死亡で失効。遺族への移行制度がある航空会社も(条件あり) |
💡 ポイントを活かすなら解約前に確認を
高額のポイントが残っている場合は、カード会社に連絡した際に「解約前にポイントを使う方法があるか」を確認しましょう。Amazonギフト券・商品券・現金充当など、残高精算に充てられるケースがあります。ただし、カード会社によって規約が異なるため、問い合わせた時点で確認するのが確実です。
家族カード(追加カード)はどうなる?
故人が「本会員」だった場合、その方の家族(配偶者・子)が「家族カード(追加カード)」を持っていることがあります。本会員が死亡した場合、家族カードの扱いはカード会社によって異なります。
家族カードが使えなくなる場合
- 本会員死亡が確認された時点で即停止
- 解約手続き後は自動的に使えなくなる
- 家族カードで引き落とし設定がある場合は別途変更が必要
家族カードを引き続き使いたい場合
- 家族カード会員自身が新たに本会員として申し込む
- 別のカードを新規に申し込む
- 引き落とし設定をすべて移行する必要あり
⚠ 本会員が死亡後も家族カードを使い続けることは不正使用
本会員の死亡後、家族カード会員がカードを使い続けることは不正使用に当たる可能性があります。「日常の生活費だから大丈夫」という認識は誤りです。死亡が判明した時点で使用を止め、速やかにカード会社に連絡してください。
引き落とし設定の切り替えリスト
故人のカードに引き落としが設定されていたサービスは、解約前に必ず切り替えが必要です。忘れると支払いが止まってサービスが中断されます。よくある引き落としサービスの一覧です。
| カテゴリ | 具体的なサービス例 | 対応の優先度 |
|---|---|---|
| 公共料金 | 電気・ガス・水道・NHK | 最高(止まると生活に影響) |
| 通信費 | 携帯電話・インターネット・固定電話 | 高(解約または名義変更も検討) |
| 保険料 | 生命保険・医療保険・損害保険 | 高(解約手続きも必要) |
| サブスクリプション | Netflix・Amazon Prime・音楽配信・新聞電子版 | 中(不要なら解約、継続なら切り替え) |
| 会費・年会費 | 各種会員サービス・ジム・習い事 | 中(解約手続きが必要なものが多い) |
| 自動車関連 | ETC・自動車保険・カーシェア | 低〜中(名義変更・解約を検討) |
ETCカード・デビットカードの扱い
クレジットカードと一緒に確認すべきカードに、ETCカードとデビットカードがあります。それぞれ手続きが異なるので注意してください。
ETCカード
クレジットカードに紐づいているETCカードは、クレジットカードを解約すると同時に使えなくなります。
- ETC車載器に挿入したまま放置しない
- クレジットカード解約時に合わせて返却
- ETCマイレージポイントも確認(国土交通省管轄)
デビットカード
デビットカードは銀行口座に直結しています。銀行口座の相続手続きと合わせて処理します。
- 銀行口座が凍結されれば自動的に使用不可に
- 口座解約と合わせてカードも返却
- 引き落とし設定は別途変更が必要
相続放棄をする場合の注意点
相続放棄を検討している場合、クレジットカードの取り扱いには特に注意が必要です。放棄前に故人のカードを使ったり、残高を相続人の口座で支払ったりすると「単純承認」とみなされる可能性があります。
⚠ 相続放棄を考えているなら絶対にやってはいけないこと
- 故人のクレジットカードを使う(代わりに買い物など)
- 故人のカード残高を相続人自身のお金で支払う
- 故人のカードのポイントを勝手に使用・換金する
- 故人の口座から引き落とされた後にその口座を使う
✅ 相続放棄を考えているときの正しい対応
- カード会社に死亡を連絡し、使用停止だけ依頼する(解約は放棄後でも可)
- 残高の支払いは「相続財産から」行う。自己負担はしない
- ポイントは使わず、放棄手続き後に消滅することを受け入れる
- 引き落としが続いても、相続財産の口座から引き落とされているだけであれば問題ない
主要カード会社の死亡解約の連絡先・手続き方法
各カード会社の対応は概ね共通していますが、書類の種類・送付先・処理期間は異なります。以下の情報は目安として参考にしてください(最新情報は各社に要確認)。
| カード会社 | 連絡方法 | 主な必要書類 | 処理期間(目安) |
|---|---|---|---|
| 三井住友カード | 電話→所定書類を郵送 | 死亡診断書・戸籍謄本・相続人の本人確認書類 | 2〜4週間 |
| 楽天カード | 電話→所定書類を郵送 | 死亡確認書類・戸籍謄本・相続人の本人確認書類 | 2〜4週間 |
| イオンカード | 電話→所定書類を郵送 | 死亡診断書・戸籍謄本・本人確認書類 | 2〜4週間 |
| JCBカード | 電話→所定書類を郵送 | 死亡診断書・戸籍謄本・相続人の本人確認書類 | 2〜4週間 |
| セゾンカード | 電話→所定書類を郵送 | 死亡診断書・戸籍謄本・本人確認書類 | 2〜4週間 |
💡 書類はコピーを取っておく
戸籍謄本・死亡診断書はカード会社以外にも、銀行・証券会社・保険会社など多くの機関で必要になります。原本を使い回せる機関(返却してくれる機関)かどうか確認し、余裕をもってコピーを複数枚準備しておきましょう。法定相続情報一覧図(法務局で取得可)を活用すると、戸籍謄本の束を毎回提出しなくてもよくなります。
死亡後の引き落とし発生:よくある具体的なトラブル事例
実際に起きやすいトラブルを把握しておくことで、先手を打った対処が可能になります。以下は相談窓口で多く聞かれるケースです。
トラブル①:年会費が新たに引き落とされた
死亡から2ヶ月後に年会費11,000円が引き落とされていた。カード会社に連絡したところ「会員が死亡している場合は年会費の返金対応をしていない」と言われた。
予防策:死亡後はできるだけ早く(1〜2週間以内)カード会社に連絡し、利用停止・解約手続きを始める。
トラブル②:電気が止まりそうになった
親が一人暮らしをしており、電気・ガスの引き落としがすべて親名義のカードに設定されていた。カード解約後に切り替えをしていなかったため、電気会社から「支払いが滞っている」と通知が来た。
予防策:解約前に引き落としサービスをすべてリストアップし、先に支払い方法を変更する。
トラブル③:サブスクリプションが何ヶ月も引き落とされていた
故人が動画配信・音楽配信・電子書籍など合計5つのサブスクに登録しており、相続人が気づかないまま4ヶ月分・合計約20,000円が引き落とされていた。カード会社への連絡が遅かったのが原因。
予防策:通帳明細を過去6ヶ月分確認し、毎月定額の引き落としをすべてリストアップする。
相続手続きの全体フローの中でのカード解約の位置づけ
相続手続きの全体の流れの中で、クレジットカード解約はいつ行うべきか整理しておきます。
| 時期 | クレジットカード関連でやること | 注意点 |
|---|---|---|
| 死亡後1週間以内 | 財布・通帳からカードを把握。カード会社に死亡の連絡(利用停止を依頼) | 使用停止依頼だけでもOK。解約手続きは後でも可 |
| 〜1ヶ月 | 残高・ポイント・引き落とし設定を確認。書類の準備開始 | 相続放棄を検討中なら財産に手をつけない |
| 〜2ヶ月 | 引き落としサービスの切り替え完了。解約書類を郵送 | 切り替え前にカード解約しないよう順番に注意 |
| 〜3ヶ月 | 残高精算。解約完了確認。カード本体の返却 | 相続放棄の期限(3ヶ月)と並行して進める |
クレジットカード解約のチェックリスト
- □ 故人のカードをすべてリストアップした
- □ 各カード会社の「相続・死亡解約」窓口に連絡した
- □ 残高(ショッピング・キャッシング)を確認した
- □ ポイント残高と処理方法を確認した
- □ 引き落とし設定されているサービスをすべてリストアップした
- □ 引き落とし先の切り替えが完了した
- □ 解約書類を郵送した
- □ 家族カードの使用を停止した
- □ ETCカード・デビットカードも確認した
- □ 残高の精算が完了した
クレジットカード以外にも確認すべき電子決済・ポイント
近年は電子マネー・QRコード決済・各種ポイントなど、クレジットカード以外の決済手段も多くなっています。故人が利用していた可能性があるものを確認しましょう。
電子マネー・QR決済
- Suica・PASMO(残高は払い戻し可能)
- PayPay・LINE Pay・楽天Pay(残高はケースによる)
- iD・QUICPay(クレジットカードに紐づく)
- Edy(残高は払い戻し申請可能)
各種ポイント・マイル
- 楽天ポイント(死亡で失効)
- Tポイント・Vポイント(死亡で失効)
- ANAマイル・JALマイル(原則失効、条件付き引継ぎあり)
- dポイント・auポイント(各社規約による)
相続税申告でのクレジットカード残高の扱い方
相続税の申告においてクレジットカードの残高は「債務控除」の対象となります。正確な残高を把握し、申告に反映させることで相続税を適切に計算できます。
相続税申告で必要な書類
- 残高証明書:死亡日時点のショッピング残高・キャッシング残高の証明書。カード会社に発行を依頼する(有料の場合あり)
- 未払い明細:死亡日時点で確定している請求額の明細
- 分割払い残高の内訳:分割払いの残高がある場合は期間・残額を確認
| 残高の種類 | 相続税申告での扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 確定済みの未払い残高 | 債務控除の対象(遺産総額から差し引ける) | 死亡日時点で確定している分のみ |
| キャッシング残高 | 債務控除の対象 | 元金のみ控除(死亡後の利息は原則対象外) |
| 死亡日以降の引き落とし分 | 死亡日時点で発生していた費用のみ対象 | 死亡後のサブスク料金などは対象外が原則 |
💡 残高証明書は税理士から依頼してもらうとスムーズ
相続税申告を税理士に依頼している場合は、残高証明書の取得手続きも含めて依頼できます。カード会社によっては「相続税申告のため残高証明書が必要」と伝えると、申告日基準の証明書を発行してくれます。
カード会社別の対応の違いと共通の注意点
カード会社によって手続きの細かいルールは異なりますが、共通して押さえておきたい注意点があります。
書類の原本送付 vs コピー
戸籍謄本・死亡診断書を原本で要求するカード会社とコピーで対応するカード会社がある。原本を要求する場合は返却されるか確認する。原本が複数機関で必要な場合は多めに準備するか、法定相続情報一覧図を活用する。
カード本体の返却
多くのカード会社はカード本体の返却を求めない(または郵送不要)が、一部は返却が必要。電話確認時に聞いておく。返却不要の場合はハサミで切断して廃棄する(ICチップ部分もしっかり切る)。
精算方法の確認
残高がある場合の精算方法は、「登録口座から引き落とし」「指定口座への振込」「分割払い交渉」などカード会社によって異なる。電話時に残高精算の具体的な方法を確認しておく。
死亡後の利息・遅延損害金
残高がある状態で死亡した場合、死亡後の利息がどう扱われるかはカード会社によって異なる。「死亡日以降の利息は請求しない」とするカード会社もあれば、相続人に請求するケースもあるため確認が必要。
よくある質問
まとめ
故人のクレジットカードは、放置すると引き落としが続き、余計な費用が発生したり、生活サービスが中断するリスクがあります。相続が発生したら早めにカードを把握し、カード会社に連絡することが第一歩です。
- 故人のカードは死亡後も自動停止されないため、早めにカード会社に連絡する
- 残高(ショッピング・キャッシング)は負の財産として相続人が引き継ぐ
- ポイントは多くの場合、解約と同時に失効する(事前に確認を)
- 家族カードも本会員死亡後は使えなくなる(不正使用に注意)
- 公共料金・サブスクの引き落とし先は解約前に必ず切り替える
- 相続放棄を検討中はカード残高を自己負担で払わない
今日できることは「財布と通帳を確認して、故人のクレジットカードをリストアップする」ことです。相続手続き全体の流れの中でも、早期に対応できる手続きのひとつです。カードの枚数が多い場合はCICへの照会も活用してください。

