長男が「俺が全部もらう」と言い張る場合の対処法|法律上の権利と交渉の進め方

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Inheritance Rights Protection Guide

長男が「俺が全部もらう」と言い張る場合の対処法
法律上の権利と交渉の進め方

法定相続分・遺留分・調停申立まで
泣き寝入りしないための完全ガイド

法定相続分の確認 遺留分の主張方法 調停・審判の流れ

「兄が『俺が長男だから全部相続する。お前たちには何も渡さない』と言っている。法律的にそんなことが許されるのか?」——こうした相談が非常に多く寄せられます。長男であっても、法律上は他の兄弟と同じ相続権があります。「長男が全部もらえる」という慣習は法律上根拠がなく、他の相続人は正当な権利を主張できます。元銀行員でAFP・相続診断士の田中由美が、長男が強硬に主張する場合の対処法を、法的根拠・交渉のコツ・調停の流れを含めて解説します。

田中由美より(AFP・相続診断士・元銀行員)

「長男が全部もらえる」という考え方は旧民法(戦前)の「家督相続制度」の名残です。1947年に現在の民法が施行されて以来、日本の相続法は「均等相続」が原則です。長男だからといって特別に多くもらえる権利は一切ありません。ただし、実際には「兄が強い態度で出てくるため、どうしていいかわからない」という方が多いのも事実です。法律の知識を持って、冷静に、しかし毅然とした態度で権利を主張することが大切です。一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することをお勧めします。

まず確認:現代日本の相続法における「長男」の権利

「長男が全部もらえる」という考え方がなぜ誤りなのか、法律の根拠を確認しましょう。

現行民法の原則:均等相続

民法900条により、子は全員「均等に」相続する権利を持ちます。長男・長女・次男・末っ子など、生まれた順番に関係なく、法定相続分は均等です。例:子が3人であれば、遺産の3分の1ずつを受け取る権利があります。

旧「家督相続制度」は廃止済み

「長男が家を継ぐ」という家督相続制度は、1947年(昭和22年)の民法改正で廃止されました。現在の法律では、長男であることで相続を有利に受けられる規定は存在しません。

遺言書があっても遺留分がある

仮に「全財産を長男に」という遺言書があったとしても、他の子・配偶者には「遺留分」という最低限の受取権利があります(法定相続分の2分の1)。遺留分侵害額請求権を行使すれば、最低限の取り分を回収できます。

全員の合意なしに遺産は動かせない

遺言書がない場合、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。長男が一人で遺産を独占しようとしても、他の相続人が合意しない限り、銀行口座は解約できず、不動産名義も変更できません。

法定相続分の基礎知識:自分の権利をしっかり確認する

交渉を始める前に、自分の法定相続分を正確に把握することが重要です。「自分には権利がある」と明確に理解していることが、強気で交渉できる土台になります。

相続人の構成 配偶者の相続分 子の相続分(全員合計) 子一人あたりの相続分(例)
配偶者 + 子2人 2分の1 2分の1 子それぞれ:4分の1
配偶者 + 子3人 2分の1 2分の1 子それぞれ:6分の1
子のみ(配偶者なし)子2人 (なし) 全部 子それぞれ:2分の1
子のみ(配偶者なし)子3人 (なし) 全部 子それぞれ:3分の1
子のみ(配偶者なし)子4人 (なし) 全部 子それぞれ:4分の1
配偶者 + 子1人 2分の1 2分の1 子(1人):2分の1

嫁に行った娘・婿養子・養子の相続権

「嫁に行った娘には相続権がない」という誤解は非常に多いです。結婚して親の戸籍を抜けていても、子として法定相続権があります。「家を継いでいない」「苗字が違う」「別の家に住んでいる」など、いずれも相続権とは無関係です。また婿養子(配偶者の家に養子縁組)も、実の親に対する相続権を失いません(実の親の法定相続人であり続ける)。養子縁組した子も、実子と同等の法定相続分を持ちます。「あなたには権利がない」と言われても、惑わされないことが重要です。

長男が「全部もらう」と主張するパターン別の対処法

長男が「全部もらう」と主張するケースには、いくつかのパターンがあります。パターン別に適切な対処法を確認しましょう。

長男の主張パターン 法律上の事実 対処法
「長男だから全部もらうのが当然だ」 現行民法に長男優先の規定はない。子は全員均等な法定相続分を持つ。 法定相続分を記した民法条文(民法900条)のコピーを提示する。感情論ではなく法律の条文で反論する。
「俺が親の面倒を見てきたのだから全部もらう権利がある」 介護への貢献は「寄与分」として考慮される場合があるが、全部もらえる権利にはならない。寄与分の計算には条件がある。 寄与分の計算・認定は相続人全員の合意または家庭裁判所の審判によって決まる。「全部もらえる」というのは誤りと伝える。介護の客観的な記録を確認する。
「遺言書に『全財産を長男に』と書かれている」 遺言書が有効な場合でも、他の相続人には遺留分がある(兄弟姉妹には遺留分なし)。遺留分侵害額請求権は知った時から1年以内。 遺留分侵害額請求を内容証明郵便で送付する。配偶者・子であれば法定相続分の2分の1は必ず受け取れる。弁護士に依頼するのが最も確実。
「親が生前に『全部お前にやる』と言っていた」 口頭での約束は遺言書の効力を持たない。正式な遺言書(自筆証書・公正証書)がなければ法的効力はない。 「口頭での約束は遺言書とは認められない」と伝える。遺言書の有無を法務局(遺言書保管制度)・公証役場で確認する。遺言書がなければ法定相続分で協議を進める。
「勝手に預金を引き出してしまった・既に使った」 故人の死亡後に相続人の同意なく口座から引き出すことは、相続財産の横領・不当利得に当たる可能性がある。 弁護士に「不当利得返還請求」または「不法行為に基づく損害賠償請求」を依頼する。銀行に取引履歴の開示請求(弁護士照会)を行い、引き出し額を特定する。
弁護士に相続の相談をする日本人のイメージ

遺言書がない場合の対処ステップ

遺言書がない状態で長男が「全部もらう」と主張している場合の、具体的な対処手順を解説します。

1

相続人・相続財産の全体像を確認する

まず相続人が誰か(戸籍謄本で確認)、財産が何があるか(預金・不動産・株式・借入金)を全て把握します。長男が「財産の情報を教えない」と言っている場合は、銀行への開示請求・法務局での固定資産確認・証券会社への照会(弁護士照会)を行うことができます。相続人であれば財産の情報を調査する権利があります。

2

法定相続分を文書で提示して協議を求める

民法の条文(900条)をコピーして「自分の法定相続分はXX分の1である」と書面で伝えます。感情的な言い合いにならないよう、全て書面(手紙・メール)で記録に残すことが重要です。「遺産分割協議に参加する意思がある」「法定相続分での協議を求める」という意思表示を明確に行います。

3

弁護士に相談・交渉代理を依頼する

相手が感情的・強圧的な態度を続ける場合は、弁護士に交渉代理を依頼することを検討します。弁護士が間に入ることで、感情的な言い合いから法的な話し合いへとステージが変わり、相手も態度を軟化させることが多いです。法テラス(収入が一定以下なら費用立替制度あり)・弁護士会の相談窓口を利用できます。

4

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

当事者間の話し合いが完全に行き詰まった場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。調停では中立的な立場の調停委員が話し合いを仲介します。申立人は自分一人でもできます(弁護士なしでも可能)。調停費用は収入印紙(財産の価額によるが通常数千円〜)と切手代のみです。

5

調停不成立なら審判へ(裁判官が決定)

調停で合意できない場合は、自動的に「遺産分割審判」に移行します。裁判官が証拠を基に遺産の分割方法を決定します。審判では原則として法定相続分に従った分割が命じられます。不動産の場合は「換価分割(売却して現金で分ける)」が命じられることもあります。

遺言書がある場合の対処法(遺留分侵害額請求)

「全財産を長男に」という遺言書がある場合でも、配偶者・子・直系尊属には遺留分があります。遺留分を侵害された場合の対処法を解説します。

項目 内容
遺留分の割合(子の場合) 法定相続分の2分の1。子が3人の場合、法定相続分は各3分の1なので、遺留分は各6分の1(遺産全体の6分の1ずつ)。兄弟姉妹には遺留分なし。
時効 相続開始と遺留分侵害の事実を知ってから1年以内。知らない場合でも相続開始から10年で消滅。早急に行動することが重要。
請求方法(手順) ①内容証明郵便で「遺留分侵害額請求権を行使する」旨を通知(時効中断のためまず必須)→②相手と交渉(金額の合意)→③合意できなければ調停・訴訟
請求できる金額 遺留分相当額を金銭で支払うよう請求できる(2019年改正:現物返還ではなく金銭での支払いが原則)。相手が不動産を取得した場合でも、金銭で補償を受ける形になる。
専門家への依頼 遺留分侵害額請求は、計算方法が複雑(不動産評価・生前贈与の持ち戻し計算等)なため、弁護士への依頼を強く推奨。費用:着手金10〜20万円+成功報酬(回収額の10〜15%程度)。

長男が「寄与分がある」と主張する場合の対処法

「俺は親の面倒を見たから全部もらうのは当然だ」と長男が寄与分を主張するケースへの対処法です。寄与分は認められる場合もありますが、「全部もらえる」わけではありません。

寄与分とは何か

民法904条の2に規定された制度。相続人が被相続人(親)の療養看護・事業への貢献等により、財産の維持・増加に特別な貢献をした場合に、その貢献分を法定相続分に上乗せして受け取れる制度。ただし「全財産を受け取れる」わけではない。

寄与分が認められる条件

①「特別の貢献」(日常的な扶養義務を超えた継続的・専従的な関与)が必要②貢献が「財産の維持・増加」につながっている必要がある③「介護ヘルパー代として節約できた金額」など定量化して計算する。単なる「精神的なサポート」「心配した」は不可。

寄与分の計算方法

介護の場合:「介護ヘルパー代(日額)×介護日数×裁量的割合(貢献度)」で算出。例:日額5,000円×365日×3年×0.7(裁量割合)=約383万円。この計算式はあくまで目安であり、家庭裁判所が判断する。

寄与分への対処法

①寄与分は相続人全員の合意または家庭裁判所の審判で決まる(長男が一方的に決められない)②「寄与分があっても全部はもらえない」と伝える③長男の介護記録・ヘルパー代の節約額を確認して客観的に評価④合意できなければ調停申立。司法書士・弁護士に相談を。

相続問題が解決し安心する日本人のイメージ

田中由美の実体験:長男との相続交渉で泣き寝入りしなかった事例

田中由美(AFP・相続診断士・元銀行員)の実体験

Kさん(49歳・女性)は父が亡くなった後、兄(長男・52歳)から「全部俺がもらう。お前は結婚して家を出ているから関係ない」と言われました。Kさんは「兄に反論できない」と一人で抱え込んでいましたが、私に相談に来られました。

まず「Kさんには法定相続分として遺産の2分の1を受け取る権利がある」ことをお伝えしました。「結婚して家を出ている」「嫁いだ娘」であっても、相続権は同じです。次に私がKさんの代わりに弁護士への相談に同行し、弁護士から兄に対して「法定相続分を主張する旨の内容証明郵便」を送付してもらいました。弁護士から正式な書面が届いたことで、強硬な態度だった兄は一転して「話し合いに応じる」姿勢になりました。最終的に遺産の約半分をKさんが受け取る形で合意でき、Kさんは「一人で諦めなくて良かった。早く相談すべきだった」と喜んでいらっしゃいました。法律の力を使えば、強硬な相手にも正当な権利を主張できるのです。

長男が財産の情報を開示しない場合の対処法

「財産がいくらあるか教えない」「通帳を見せない」という場合でも、相続人には財産を調査する権利があります。情報を開示しない長男への対処法を確認しましょう。

銀行口座の調査方法

故人の銀行口座は、相続人の一人として銀行窓口に「相続人であることを証明する書類(戸籍謄本)」を提示することで、残高・取引履歴の開示請求ができます。弁護士照会(弁護士法23条の2)を使えば、より強力な開示請求が可能です。なお全国銀行協会の「相続手続きに関する照会サービス」も利用できます。

不動産の調査方法

故人名義の不動産は、法務局で「登記事項証明書」を取得することで確認できます(誰でも取得可能・手数料600円程度)。また市区町村の税務課で「名寄帳」を相続人として請求することで、固定資産税の対象となる全不動産の一覧を取得できます。これにより長男が「隠している不動産」があるかどうかを確認できます。

証券口座・株式の調査方法

株式・投資信託の調査には、証券保管振替機構(ほふり)への「登録済みの証券会社」照会サービスが使えます(相続人としての申請が必要・有料)。また自宅に証券会社の取引報告書・郵便物がないか確認することも有効です。各証券会社に「故人名義の口座がないか」を戸籍謄本を添えて問い合わせることもできます。

調停での開示命令

遺産分割調停を申し立てると、調停委員を通じて「相手に財産を開示するよう促す」ことができます。相手が正当な理由なく開示を拒否した場合、調停委員・裁判官から「開示義務がある」と指摘されることで開示に応じる場合があります。また文書提出命令(審判段階)を使って証拠開示を求めることも可能です。

長男側の「正当な主張」とそうでない主張を見分ける方法

長男の主張の中には、法律上認められる部分(寄与分・特別受益の精算等)と、法律上全く根拠がない部分が混在していることがあります。冷静に分類して対応しましょう。

長男の主張 法律上の位置づけ あなたの対応
「長男だから全部もらう権利がある」 全く根拠なし。現行民法に長男優先の規定は存在しない。 民法900条を提示して明確に否定する。
「10年間毎日介護した。ヘルパー代を節約した」 寄与分として認められる可能性あり。ただし「全部もらえる」わけではなく、計算額を法定相続分に上乗せする形。 「寄与分として合理的な計算額を上乗せすることは認める」と伝えた上で、計算根拠を提示するよう求める。
「あなたに生前贈与(大学の学費・住宅頭金等)してもらった」 特別受益として遺産に加算(持ち戻し)する計算が必要になる可能性あり。ただし「持ち戻し免除の意思表示」があれば不要。 「生前贈与の持ち戻し免除の意思表示があったか」を確認。あれば持ち戻し不要。なければ特別受益として計算に含める。
「遺言書に『全部長男に』とある」 遺言書が有効な場合は原則として従うが、遺留分侵害額請求権(知った時から1年以内)が使える。 遺留分侵害額請求権を行使する旨の内容証明郵便を送る。弁護士に依頼するのが確実。
「実家を守るために長男の私が住み続けなければならない」 感情的には理解できるが、法律上の根拠はない。不動産を取得したい場合は代償分割(他の相続人に現金を支払う)が必要。 「実家を取得したいなら代償金を払って」と伝える。代償金の額は不動産の評価額から法定相続分に基づいて計算。

長男との交渉で絶対にやってはいけないこと

長男との相続交渉で、後悔しないために絶対に避けるべき行動を確認しましょう。

NG行動 なぜいけないか 正しい行動
「もういいや」と諦めて遺産分割協議書に署名する 一度署名・押印すると、後から取り消すことが非常に困難。「強迫・詐欺」があった場合のみ取り消せるが、立証は難しい。 内容に納得できなければ署名しない。まず弁護士に相談してから判断する。
感情的に怒鳴り合う・脅しに近い発言をする 相手に録音される可能性があり、後で不利な証拠になることも。感情的な言葉は法的には何の意味もない。 全てを書面・メールで行う。弁護士を間に入れてもらう。
親族や第三者を巻き込んで感情的な多数決にする 多数決は相続では全く意味がない。一人でも同意しなければ協議は成立しない。親族への「訴え」は感情的な対立を深めるだけ。 中立的な専門家(弁護士・調停委員)に入ってもらう。
遺留分侵害額請求の時効(1年)を過ぎてしまう 遺言書で不利な内容があっても、知った時から1年で遺留分侵害額請求権が時効消滅する。時間が経てば経つほど選択肢が減る。 遺言書を見たらすぐに弁護士に相談する。とりあえず内容証明郵便で「権利行使の意思表示」だけでもしておく。
自分で「勝手に財産を確保」しようとする 相続人が相続財産を勝手に取得することは、他の相続人に対する不法行為になる可能性がある。 全ての行動を法律の範囲内で行う。早急に調停を申し立てて法的な手続きを進める。

長男との実際の交渉・話し合いの進め方

弁護士に依頼する前に、まず自分でできる交渉・話し合いの進め方を確認しましょう。適切な進め方で臨むことで、話し合いで解決できるケースも多くあります。

①話し合いの場は対面またはオンラインで

メール・LINEでの交渉は感情的な誤解を生みやすく非推奨。対面(第三者(信頼できる親族・専門家)同席が理想)またはオンラインビデオ通話で行う。可能であれば録音しておく(一方的な録音は法律上合法。ただし使用目的には注意)。日時・参加者・話し合いの内容・合意事項を記録に残す。

②法律の条文を「証拠」として提示する

感情的な言い合いを避けるために「法律的な根拠」を提示することが重要。「民法900条(法定相続分)」のコピーを用意して見せる。「法律でこう決まっています」という言い方は感情論ではなく事実の提示なので、相手も反論しにくくなる。法務省・裁判所のウェブサイトにある条文や解説資料を印刷して持参するのも有効。特に「長男だから全部もらえるという法律はない」という点を条文で示すことが最初の一手として効果的です。

③「要求」ではなく「提案」の形で話す

「私に法定相続分を寄こせ」より「法定相続分に基づいて、お互いが納得できる分け方を一緒に考えましょう」という形の方が相手の受け入れ態度が変わることが多い。長男が不動産を引き継ぎたい気持ちがあるなら「その代わりに代償金を払ってほしい」と代替案をセットで提示するのが交渉の基本。相手の「実家を守りたい」という気持ちを尊重しながらも、自分の法定相続分をしっかり主張するバランスが重要です。

④「調停を申し立てる意思がある」と伝える

相手が「どうせこの人は何もしない」と思っている場合、強硬な態度を変えようとしない。「話し合いで解決できなければ、家庭裁判所に調停を申し立てます」と明確に伝えることで、相手の態度が変わることが多い。実際に調停を申し立てる意思がある(行動できる)という前提が必要。

調停を申し立てる際の具体的な手順

当事者間の話し合いが行き詰まったら、家庭裁判所への遺産分割調停申立が最も有効な手段です。具体的な手順を確認しましょう。

申立先

相手方(長男)の住所地を管轄する家庭裁判所(相手が複数いる場合はそのうち一人の住所地を管轄する裁判所)。または相続人全員が合意した家庭裁判所。裁判所のウェブサイトで管轄を確認できる。郵送での申立も可能。

必要書類

①遺産分割調停申立書(裁判所書式・記載例あり)②被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡)③相続人全員の戸籍謄本④遺産目録(財産一覧)⑤収入印紙(財産の価額に応じた金額)⑥郵便切手(裁判所に確認)

費用

収入印紙:遺産の価額に応じて数千円〜(通常1,200〜数千円)。切手代:数千円程度(裁判所に確認要)。弁護士なしでも申立可能。弁護士に依頼する場合は着手金10〜30万円程度が別途かかるが、法テラスの費用立替制度を活用できる場合もある。

期間と流れ

申立後、1〜2か月で第1回期日が設定される。以後1〜2か月に1回のペースで期日が進む。調停が成立するまで通常6か月〜1年以上かかる。合意できない場合は自動的に審判に移行(申立人が審判移行を希望しない場合は取り下げも可能)。

専門家への相談費用と無料相談窓口の活用方法

「弁護士に頼む費用が心配」という方のために、費用の目安と無料相談・費用立替制度の活用方法を紹介します。

相談・依頼先 費用 対応できる範囲 特徴
法テラス(日本司法支援センター) 無料相談(制限なし)・費用立替制度(収入基準あり) 相続全般。弁護士費用の立替制度を使えば月々分割払いで弁護士を依頼できる。 収入・資産が一定以下の方は弁護士費用の立替制度(審査あり)を利用可能。0570-078374で相談窓口。
各都道府県の弁護士会 30分5,500円程度(有料) 相続全般。相談後に依頼する場合の費用・方針を確認できる。 「法律相談センター」で予約。相続専門弁護士を指名できる場合もある。
市区町村の法律相談(無料) 無料(月数回・予約制) 相続の基本的な疑問。30分程度の相談。 市役所・区役所の法律相談窓口。予約が取りにくいことも多い。まず方向性を確認するのに有効。
相続専門の弁護士への直接依頼 初回相談無料(〜30分)の事務所も多い。着手金10〜30万円+成功報酬(回収額の10〜20%) 交渉・調停・審判・訴訟まで全対応。代理人として出席してもらえる。 「弁護士費用は遺産から回収できる」と考えると心理的ハードルが下がる。実際に多くのケースで費用以上の成果が得られる。
司法書士(調停申立書作成のみ) 3〜8万円程度 遺産分割調停の申立書の作成補助。調停当日の代理人にはなれない(弁護士のみ可)。 「調停を申し立てたいが書類の書き方が分からない」場合に活用。

弁護士費用を「払えない」と思っている方へ

「弁護士費用が払えない」という方は、法テラスの費用立替制度の活用を強くお勧めします。月収・資産が一定以下の方が対象で(目安:月収27〜28万円以下・預貯金200〜300万円以下・資産なし等)、審査に通れば弁護士費用を法テラスが立て替えてくれます。返済は月々5,000〜1万円程度の分割払いです。また「成功報酬型」の相続専門弁護士も増えており、着手金が少ない(または0円)で、遺産を回収できた場合のみ報酬を払う形の事務所もあります。「お金がないから諦める」必要はありません。

よくある質問(Q&A)

Q. 長男が「話し合いに応じない」と言っています。どうすればいいですか?

A. 話し合いに応じない相手に対しては、家庭裁判所への遺産分割調停申立が最も有効です。調停は申立人一人で申し立てることができ、相手(長男)が調停に出席しない場合でも手続きは進みます(ただし合意できないため審判に移行)。調停への出席は義務ではありませんが、出席しないことで調停委員・裁判官に「話し合いを拒否している」という印象を与え、審判で不利になる可能性があります。「話し合いに応じないと審判になる」と伝えることで、相手が態度を軟化させることもあります。また調停申立書を作成して郵送するだけで手続きが始まります。裁判所のウェブサイトに記載例と書式が掲載されており、司法書士に書類作成を依頼することもできます(弁護士より低コスト)。

Q. 長男が親の通帳から既にお金を引き出してしまいました。取り戻せますか?

A. 故人の死亡後に相続人の合意なく引き出した場合、「不当利得返還請求」または「不法行為に基づく損害賠償請求」として取り戻すことが可能です。弁護士照会によって銀行に過去の取引履歴を開示請求し、引き出し額と時期を特定することができます。故人の生前からの引き出し(使い込み疑惑)の場合は立証が難しくなりますが、認知症の診断時期・介護記録と照合することで証明できる場合があります。取引履歴の開示請求は相続人として銀行窓口で行うことも可能です(戸籍謄本の提示が必要)。早急に弁護士に相談することをお勧めします。時効(不法行為から3年・不当利得から10年)に注意してください。

Q. 長男と絶縁状態でも調停はできますか?

A. はい、できます。調停は家庭裁判所が仲介する手続きなので、当事者同士が直接会わなくても進めることができます。同じ日時に出席する場合でも、別々の待合室で待機して調停委員が行き来する「分離調停」も可能です。また、弁護士に代理人を依頼すれば、あなたが出席しなくても弁護士が代わりに出席できるケースもあります(本人が重病等の場合)。絶縁状態でも法的手続きは進められますので、遠慮なく申し立ててください。調停はあくまで「話し合いの促進」を目的とする手続きであり、感情的な言い合いをする必要はありません。調停委員に対して「自分の法定相続分に基づく分割を求めている」と落ち着いて伝えれば十分です。

Q. 長男側に弁護士がついています。自分も弁護士を立てるべきですか?

A. 相手に弁護士がついている場合は、こちらも弁護士を立てることを強くお勧めします。弁護士なしで弁護士相手の交渉をすると、法律の知識・交渉経験の差で圧倒的に不利になります。費用が心配な場合は法テラス(日本司法支援センター)の「審査なし相談」や「審査あり費用立替制度(収入・資産が一定以下が対象)」を活用してください。弁護士費用は最終的に受け取る遺産から十分回収できることがほとんどです。弁護士同士の交渉になることで、かえって感情的な言い合いがなくなりスムーズに解決するケースも多いです。「費用が払えない」という場合は法テラスの費用立替制度(月5,000〜1万円の分割払い)を使うことで、弁護士を依頼することが可能です。経済的な理由で泣き寝入りする必要はありません。

この記事のまとめ

長男が「俺が全部もらう」と言い張る場合の対処法 完全まとめ

  • 「長男が全部もらえる」という法律上の根拠は一切存在しない(現行民法(民法900条)は子の均等相続が原則)
  • 子は全員、法定相続分(原則均等)を主張する権利を持つ(結婚して家を出ていても、苗字が違っても同様)
  • 遺言書で「全部長男に」と書かれていても配偶者・子には遺留分がある(法定相続分の2分の1)
  • 遺留分侵害額請求は遺言書を知った時から1年以内に行使(内容証明郵便で意思表示するだけでOK)
  • 寄与分(介護への貢献)は「全部もらえる」根拠にならない。計算額の上乗せであり、全員の合意または家庭裁判所の審判が必要。
  • 遺産分割協議書には納得するまで絶対に署名・押印しない(一度押印すると取り消しが非常に困難)
  • 当事者間での解決が難しければ、家庭裁判所への遺産分割調停申立が最も有効な手段(申立人一人でできる)
  • 相手に弁護士がついていれば、こちらも弁護士を立てることを強く推奨(法テラスの費用立替制度も活用可能)
  • 法テラス(0570-078374)・弁護士会・市区町村の無料法律相談を活用して早期に専門家の意見を聞く
  • 感情的な言い合いを避け、民法の条文(900条)を根拠に話し合いを進める。全ての交渉は書面で記録を残す。
  • 財産の情報を開示しない場合は銀行照会・名寄帳・弁護士照会(弁護士法23条の2)で自分で調査できる
  • 相手の主張を「法律上認められる部分」と「全く根拠のない部分」に分類し、冷静に対応することが重要

「自分には権利がある」と知るだけで、交渉の立場は大きく変わります。長男が強硬な態度であっても、法律上の権利は変わりません。感情的にならず、法律の条文を根拠に、必要であれば専門家(弁護士)と調停の力を借りて、正当な権利を主張してください。一人で諦める必要は一切ありません。早い段階での行動が、最も多くの選択肢を残すことになります。

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