親が元気なうちにやっておくべき相続準備5つ|後悔しないために今すぐ始めることを元銀行員AFPが解説

相続税

生前対策・相続準備 | 親が元気なうちに

親が元気なうちにやっておくべき
相続準備5つ

「そのうちやろう」が最も危険。今すぐ始めるべき5つの準備を元銀行員AFPが解説。

「親はまだ元気だから相続の話はしたくない」「縁起でもないと思われたら嫌だ」——そう思って先送りにしていると、認知症の発症や突然の病気で「できるはずだったこと」が一切できなくなります。親が元気なうちにやっておくべき相続準備は、決して縁起が悪いものではなく、家族への愛情表現です。この記事では、元銀行員AFP田中由美が「本当にやっておいてよかった」と感じる5つの準備を、具体的な行動レベルで解説します。

著者:田中由美より

銀行員時代、「もっと早く話し合っておけばよかった」と後悔される相続人を何人も見てきました。特に多かったのが「親が認知症になってから相談に来た」ケースです。認知症になると、本人が意思表示できないため、贈与・遺言書の作成・家族信託の設定など、生前にできるほぼすべての対策が不可能になります。また、相続が発生してから初めて財産の全容を知り、兄弟間でトラブルになるケースも少なくありません。「まだ早い」と思っている方こそ、今すぐ動いてほしいのです。この記事を読んで、今日から一歩踏み出してください。

なぜ「親が元気なうち」でないといけないのか

相続対策の多くは「親本人の意思能力」が必要です。認知症などで判断能力が低下すると、本人の代わりに決断できる人はほぼいません(成年後見人がついても、後見人は財産の維持・管理が目的のため積極的な節税対策はできません)。

認知症になるとできなくなること

  • 遺言書の作成(新規・書き直し)
  • 生前贈与(契約行為)
  • 家族信託の設定
  • 相続時精算課税の選択
  • 不動産の売却・活用
  • 生命保険への加入・変更

突然死亡するとできなくなること

  • 財産の場所・内容の把握(家族が困る)
  • 口座のパスワードや証書の所在確認
  • 借金・保証債務の確認(相続放棄の判断ミス)
  • 意思の確認(誰に何を残したかったか)
  • 葬儀・お墓の希望の確認

今すぐできること・始められること

  • 財産リスト(エンディングノート)の作成
  • 遺言書の作成・専門家への相談
  • 生前贈与の開始(暦年・精算課税)
  • 家族信託の設定相談
  • 生命保険の活用確認
  • 家族会議で意思共有

日本人の認知症有病率は、65〜69歳で約3%ですが、75〜79歳で約10%、80〜84歳で約20%、85〜89歳で約40%と急増します(※厚生労働省データより)。「親がまだ60代だから大丈夫」は油断です。準備に必要な時間(専門家探し・書類作成・各制度の手続き)を考えると、今から始めて早すぎることはありません。認知症になってからでは「やりたかったのにできなかった」が積み重なります。

相続準備のリストを確認する日本人家族のイメージ

準備①:財産リスト(エンディングノート)を一緒に作る

最初にやるべき準備は「親の財産の全容を把握すること」です。相続が発生したとき、遺族は何がどこにあるか分からないまま手続きを進めなければなりません。財産リストがあれば、相続人全員が早い段階で全体像を把握でき、遺産分割の話し合いもスムーズになります。

財産リストに記載すべき項目

不動産

  • 所在地・地番・家屋番号
  • 名義(単独/共有)
  • 購入価格・時期
  • 固定資産税評価額
  • ローン残高の有無

金融資産

  • 銀行口座(銀行名・支店・口座番号)
  • 証券口座(証券会社・口座番号)
  • 生命保険(会社名・証書番号・受取人)
  • 年金(公的・私的)
  • 定期預金・積立保険

その他の財産・負債

  • 自動車(メーカー・車種・ローン)
  • 貴金属・美術品の概要
  • 借金・ローン・保証債務
  • デジタル資産(暗号資産等)
  • 重要な契約(賃貸・出資等)

重要書類の保管場所

  • 権利証・登記識別情報
  • 通帳・証書・保険証書
  • 印鑑(実印・銀行印)の場所
  • パスワード管理(金融機関・ネット)
  • 遺言書の保管場所

財産リスト作成のコツ

  • 「死ぬ準備」ではなく「家族への大切な情報整理」と伝えると親も協力しやすい
  • エンディングノートを活用すると書き漏れが減る(市販品や無料ダウンロード版も活用)
  • 金融機関の通帳・証書・保険証書は1か所にまとめて保管する
  • 定期的に更新する(口座の開閉・保険の変更があるたびに)
  • 作成後の保管場所を家族全員が知っておく

準備②:遺言書を作成する(または専門家に相談する)

遺言書は「誰に何を残すか」を法的に明確にする最も重要な書類です。遺言書がないと、相続人全員で遺産分割協議が必要になり、意見が一致しなければ家庭裁判所での調停・審判に発展する可能性があります。特に子が複数いる場合や、特定の人(介護してくれた子・孫・配偶者)に多く残したい場合は遺言書が不可欠です。

種類 特徴 費用目安 向いているケース
自筆証書遺言 全文自書・日付・押印が必要。費用ゼロだが紛失・偽造リスクあり。法務局での保管制度あり 無料(法務局保管は3,900円) シンプルな財産・急いで作成したい場合
公正証書遺言 公証人が作成。原本を公証役場が保管するため確実。検認不要。財産が複雑な場合に最適 数万円〜十数万円 財産が多い・複雑・確実に残したい場合(推奨)
秘密証書遺言 内容を秘密にしたまま公証人に存在だけ証明してもらう。実務的にはほとんど使われない 数万円 特定の事情がある場合のみ

遺言書作成の注意点

  • 遺留分(法定相続人が最低限もらえる権利)に配慮した内容にすること
  • 遺言執行者(遺言を実行する人)を指定しておくとスムーズ
  • 財産の特定が重要:「自宅の土地・建物」ではなく「○○市○○番地の土地・家屋番号○○の建物」と正確に記載
  • 状況変化(財産の増減・家族の変化)があれば書き直す
  • 「付言事項」として財産を残す理由・感謝の言葉を書くと家族の理解が深まる

準備③:生前贈与を始める(暦年贈与・精算課税の活用)

相続税の節税効果を得るために、生きているうちに財産を少しずつ移転するのが生前贈与です。特に2024年の改正(7年ルール)の影響で、長期的・計画的な贈与の重要性がさらに高まっています。早く始めるほど有利です。生前贈与は1年に1度のルーティン作業として、毎年同じ時期に行う習慣を作ることをお勧めします。

贈与の優先順位の考え方

優先度★★★:孫への暦年贈与

孫(子が生存している場合)は相続人ではないため、生前贈与加算の7年ルールが適用されない。孫が多い家庭では最強の節税手段。孫への教育資金・住宅資金としての活用も有効。

優先度★★☆:子への長期暦年贈与

7年ルール延長後も、8年以上継続すれば確実に節税効果が出る。親が60代なら今すぐ始めれば10年後・20年後に大きな効果。子が複数いる場合は全員に贈与を。

優先度★★☆:値上がり資産の精算課税

将来値上がりが期待できる株式・不動産は、相続時精算課税で今の評価額で移転する。贈与後に価値が上がっても相続税は贈与時点の評価額で固定されるため、節税効果が大きい。

優先度★☆☆:住宅・教育・結婚資金の非課税

子・孫が住宅取得や教育費でまとまった資金が必要なタイミングに合わせて活用。各制度には要件・上限・期限があるため、事前に確認が必要。

準備④:家族信託を検討する(認知症対策の切り札)

「家族信託」とは、親が元気なうちに財産の管理・処分権限を信頼できる家族(子等)に託す仕組みです。認知症になった後も、受託者(子)が親(委託者)の意思に沿って財産を管理・活用できます。成年後見制度と違い、柔軟な財産活用(売却・建替え・投資)が可能な点が最大の特徴です。

項目 家族信託 成年後見制度
設定のタイミング 元気なうちに設定(必須) 判断能力が低下してから申立て
財産の活用 信託契約の範囲で柔軟に活用可能(売却・建替え・投資) 原則として保守的管理のみ(積極的活用は困難)
費用 設定時:数十万円(司法書士等への報酬)
維持費:ほぼなし
申立費用:数万円
後見人報酬:月2〜6万円程度(継続)
メリット 柔軟・コスト低・認知症後も財産活用継続 認知症後でも設定可能・本人保護が強い
デメリット 元気なうちしか設定できない・信頼できる受託者が必要 家庭裁判所の監督下・節税対策は困難・費用が継続的にかかる

家族信託の設定は司法書士や弁護士への相談が必要で、信託契約書の作成・信託口口座の開設など手続きに一定の時間がかかります。「認知症になってから気がついた」では手遅れになるため、親が元気なうちに検討することが重要です。特に不動産を所有している場合は、認知症になると不動産の売却・建替えが一切できなくなるため、家族信託の検討は最優先事項といえます。

生前贈与の具体的な始め方:最初の一歩を踏み出す

「生前贈与を始めたい」と思っても、何から手をつければいいか分からない方のために、具体的な手順を解説します。

生前贈与を始める具体的なSTEP

1

受贈者(贈与を受ける人)の口座を確認・用意する

子・孫それぞれの銀行口座を確認。孫が未成年の場合は親名義の口座ではなく、孫名義の口座を開設してもらう(孫が管理する口座であることが重要)。

2

贈与金額・贈与者・受贈者を決める

年間110万円以内に収める(贈与税不要)か、それ以上の額にするかを決める。複数人に贈与する場合は誰にいくら贈与するかをリスト化する。

3

贈与契約書を作成する

「贈与者○○は受贈者○○に、○年○月○日に金○○万円を贈与する」という内容を記載し、双方が署名押印する。日付を毎年変え、金額も少し変化させると「定期贈与」と見なされるリスクが減る。

4

実際に振込を行う

贈与者の口座から受贈者の口座へ銀行振込で送金する。「現金手渡し」は記録が残らないため避ける。振込明細・通帳の記録を保管する。

5

書類を保管する(7年以上)

贈与契約書・振込明細のコピーをファイリングして保管。税務調査に備えて7年分以上を保存。受贈者が自分で管理する口座の通帳も保管。

最初の贈与を実行するだけで「今年から贈与の実績がある」ということになり、相続発生時の7年カウントが始まります。「来年から始めよう」と先送りにするより、今年中に1回でも実行することが最も大切です。

準備⑤:生命保険を見直す・活用する

生命保険は相続対策として極めて有効なツールです。死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」まで相続税が非課税になります。また、受取人を指定できるため、特定の相続人に確実に財産を渡すことができます。さらに、現金で残せるため、不動産しかない場合の「代償分割」(不動産を相続した人が他の相続人に現金で支払う方法)の原資にもなります。

生命保険の非課税枠の計算例

  • 法定相続人が3人(配偶者・子2人)の場合
  • 非課税限度額:500万円×3人=1,500万円
  • 死亡保険金1,500万円までは相続税が課税されない
  • 保険料を親が負担し、受取人を子に設定することがポイント

見直し・新規加入のポイント

  • 受取人を確認:「相続人」ではなく「○○(名前)」と明記
  • 高齢でも加入できる終身保険や一時払い終身保険を活用
  • 相続税の節税目的なら一時払い終身保険が有効
  • 保険料の贈与(保険料相当額を子に贈与して子が保険に入る方法)も有効

「親とお金の話ができない」問題:どう切り出すか

「相続の話を親に切り出せない」という方は多いです。「縁起でもない」「財産目当てと思われる」という不安があるためです。田中由美が実際に効果的だと感じた切り出し方を紹介します。

効果的な切り出し方・話題の作り方

① 身近な出来事をきっかけにする

「知人のお父さんが亡くなったとき、財産のことで大変だったと聞いて…うちも少し整理しておけたらと思って」という形で、自分の心配として話す。

② エンディングノートをプレゼントする

「書いてほしいということではなく、参考にしてほしくて」とエンディングノートを贈ると、自然な形で話題を開くきっかけになる。

③ 「子として困らないように」という視点で話す

「私が何か起きたときに困らないように教えてほしい」と子の立場で話すと、親も「確かに」と思いやすい。財産の話ではなく、書類の場所を確認するところから始める。

④ 正月や帰省を機に家族全員で話す

年に一度の家族が集まる機会に、「家族の将来について話し合う時間を作ろう」という提案は受け入れられやすい。「家族会議」として設定すると親も構えにくい。

親と子が相続について話し合う日本人家族のイメージ

田中由美が経験した「準備していた家族」と「していなかった家族」の差

銀行員として多くの相続案件に携わった私が実感しているのは、準備の有無で手続きのスムーズさ・家族の関係性が大きく変わるということです。

準備していなかった家族のケース

Cさんの父が突然亡くなり、家族は財産の全容を把握していませんでした。通帳・証書・権利証が何か所にも分散しており、探し出すだけで2か月かかりました。また、遺言書がなかったため、「誰が実家を相続するか」で兄弟3人の意見が割れ、家庭裁判所の調停で1年以上かかりました。最終的には弁護士費用・調停費用で100万円以上かかり、兄弟の仲は修復不可能になりました。

→ 準備不足が原因で、手続き・費用・家族関係すべてに深刻な影響

準備していた家族のケース

Dさんの父は70歳のときに財産リスト・公正証書遺言・生命保険の見直しを完了していました。80歳で入院し認知症が進行してからは家族信託で子が財産を管理し、不動産の売却も滞りなく行えました。85歳で亡くなった際には、遺言書に基づき2か月で相続手続きがすべて完了。相続税も生前贈与と保険の活用で大幅に軽減されており、子全員が「ありがたかった」と話していました。

→ 準備が家族を守り、スムーズな相続と節税を同時に実現

今日からできる!5つの準備の優先順位と行動計画

5つの準備をすべて一気に行う必要はありません。優先度と手間を考えながら、段階的に進めましょう。

1

今すぐ(今週中):財産の場所を確認する

通帳・証書・権利証がどこにあるかを把握する。親に聞けるなら聞く。エンディングノートを購入して渡す。費用はほぼゼロ・時間は1〜2時間。

2

1か月以内:生前贈与を開始する

贈与契約書を作成し、親の口座から子・孫の口座へ振込を行う。最初の1回を実行するだけで節税の時計が動き始める。複数の受贈者(孫含む)に贈与できれば理想的。

3

3か月以内:遺言書の相談を始める

司法書士・弁護士・税理士に相談し、遺言書の内容・種類を検討する。公正証書遺言の作成には公証人との打ち合わせが必要なため、早めに動く。

4

6か月以内:家族信託・生命保険の相談をする

不動産を所有している場合は特に家族信託の検討が重要。司法書士に相談し、信託設計を進める。生命保険も見直し・追加加入を検討。

5

1年以内:相続税の試算・総合対策を立てる

相続税専門の税理士に依頼して相続税額を試算してもらう。贈与・保険・信託・小規模宅地等の特例を組み合わせた総合対策プランを作成。定期的に(2〜3年ごと)見直す。

財産リスト・遺言書の具体的な書き方とひな型

「何を書けばいいか分からない」という方のために、財産リストと遺言書の骨格となる書き方を紹介します。

自筆証書遺言の基本フォーマット

遺言書

遺言者 田中一郎は、以下のとおり遺言する。

第1条 遺言者は、次の財産を長男 田中太郎(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。

所在 東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
地番 〇〇番〇
地目 宅地 地積 〇〇.〇〇平方メートル

第2条 遺言者は、〇〇銀行〇〇支店の普通預金口座(口座番号〇〇〇〇〇〇〇)の残高を、長女 田中花子(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。

第3条 遺言執行者として長男 田中太郎を指定する。

付言事項:長男・長女へ。これまで支えてくれたことへの感謝を込めて、それぞれが幸せに過ごせるよう財産を残します。仲良く協力し合ってください。

令和〇年〇月〇日 遺言者 田中一郎 ㊞

※ 遺言書はすべて自書・日付・押印が必要。財産の特定(所在・地番等)は正確に記載してください。不明な場合は司法書士・弁護士に依頼することをお勧めします。

財産リストのひな型(簡易版)

分類 内容・詳細 書類の場所 概算評価額
不動産① 自宅(東京都〇〇区〇〇) 書斎の金庫 約〇〇〇〇万円
銀行口座① 〇〇銀行〇〇支店 普通〇〇〇〇〇〇〇 引き出し上段 約〇〇〇万円
証券口座 〇〇証券 口座番号〇〇〇〇〇〇〇〇 書類ファイルA 時価変動あり
生命保険 〇〇生命 証書番号〇〇〇〇 受取人:長男 書類ファイルB 死亡保険金〇〇〇〇万円

相続準備を後押しする「家族会議」の開き方

家族会議を「相続の話し合い」として設定すると親が構えてしまいます。「家族の将来を一緒に考える場」として設定することで、自然な話し合いができます。以下は実際に効果的だった家族会議の進め方です。

家族会議の進め方:おすすめのアジェンダ

  1. 近況報告(10分):各自の近況を共有してアイスブレイク。相続の話は後回しにして雰囲気を作る
  2. 親の希望・意向の確認(20分):「これからどんな生活をしたいか」「老後の住まいはどう考えているか」など、プラスの話から入る
  3. 財産の場所の共有(15分):「いざというときのために通帳や証書がどこにあるか教えてほしい」という流れで自然に話題を切り出す
  4. 誰に何を残したいかの意向確認(15分):「遺言書を書こうと思っているんだが、○○に家を残せばいいか?」という形で親から提案してもらう形が理想
  5. 次回の行動を決める(5分):「次は税理士に相談してみよう」「エンディングノートを書いておく」など、具体的な行動をセットして終わる

家族会議のポイントは「責める・急かす・強要しない」ことです。特に兄弟間で意見が割れた場合も、その場で結論を出す必要はありません。「次回もう一度話し合おう」と積み残しを認めることも大切です。また、親が高齢の場合は長時間の会議は疲れるため、1時間程度に収めることをお勧めします。定期的に開催し(年1〜2回)、状況変化に応じて話し合いを続けることが理想的です。

認知症になる前に絶対に済ませておくべきこと:チェックリスト

特に親が70歳を超えている場合は、認知症リスクを念頭に置いた準備が必要です。以下のチェックリストで、どこまで進んでいるかを確認してください。

認知症になると「できなくなること」の準備チェック

財産管理・移転の準備

  • ☐ 財産リスト・エンディングノートの作成
  • ☐ 金融機関の口座整理(不要口座・休眠口座の解約)
  • ☐ 生前贈与の開始(贈与契約書・振込の実績の記録)
  • ☐ 相続時精算課税の選択検討
  • ☐ 生命保険の受取人・内容の確認

法的書類の準備

  • ☐ 遺言書の作成(公正証書遺言を強く推奨・遺留分に配慮した内容で)
  • ☐ 任意後見契約の検討・締結
  • ☐ 家族信託の設定(不動産所有の場合)
  • ☐ 重要書類(権利証・通帳・印鑑・保険証書)の整理・保管場所の家族への共有
  • ☐ 印鑑・通帳・カード等の管理状況確認

意思の記録・共有

  • ☐ 葬儀・お墓の希望(場所・規模・形式)を家族に伝える
  • ☐ 入院・延命治療に関する希望を書面で残す
  • ☐ 介護の希望(施設か在宅か・どの地域での介護を希望するか)を伝える
  • ☐ 大切にしている財産・思い出品の意向(誰に渡したいかまで明確に)
  • ☐ 家族へのメッセージ・感謝の言葉を書き残す(遺言書の付言事項でも可)

チェックが少ない項目ほど、今すぐ着手すべき優先事項です。特に「遺言書の作成」「家族信託の設定」「生前贈与の開始」の3つは、認知症になると一切できなくなる最重要項目です。親の年齢が高くなるほど、この3つへの着手を急いでください。

専門家の選び方:相続準備で相談すべき専門家は誰?

相続準備には複数の専門家が関わります。何をしたいかによって相談する専門家が変わります。最初の相談先として最適な専門家をケース別に紹介します。

やりたいこと 最初に相談する専門家 費用感
相続税の節税対策全般・生前贈与の計画 相続専門の税理士 初回相談無料が多い。対策プラン作成は5〜30万円程度
遺言書の作成・家族信託の設定 司法書士(家族信託の専門家) 遺言書:10〜30万円、家族信託:50〜100万円
相続トラブル・紛争の予防・解決 弁護士 初回相談30分無料が多い。案件によって異なる
全体的な資産管理・保険・投資の見直し FP(ファイナンシャルプランナー) 相談料1〜3万円/時間。相談で方向性を確認してから専門家へ
不動産の相続・売却・活用 相続専門の不動産会社+税理士 不動産査定は無料。売却時は仲介手数料

複数の専門家に相談が必要な場合は、「相続専門の税理士」を起点にするのが最も効率的です。相続税の試算を行ってもらいながら、全体の方向性を決め、必要に応じて司法書士・弁護士・FPを紹介してもらうと、専門家同士が連携して対応してくれることが多いです。初回相談の費用を惜しまず、まず1人の専門家に相談することから始めてください。

よくある質問(Q&A)

Q. 親が「財産の話はしたくない」と言って話し合いを拒否します。どうすればいい?

A. 無理に全部を一度に話そうとするのは逆効果です。まずは「書類の場所を教えてほしい(自分が困るから)」という子の視点で少しずつ話す機会を作りましょう。また、専門家(税理士・FP等)に間に入ってもらうと、親も「専門家の話なら聞こう」となりやすいです。エンディングノートを渡して「書いてみてよ」と軽い形で始めるのも有効です。一度拒否されても、半年後・1年後に再度話すことも大切です。親の世代は「財産の話をするのは良くないこと」という価値観を持っていることが多いですが、「家族のために大切なことだよ」と伝え続けることで徐々に理解が得られることがあります。焦らず継続して話す機会を設けてください。

Q. 相続税がかかるかどうか分からないのですが、準備は必要ですか?

A. 相続税がかかるかどうかに関わらず、財産リストの作成・遺言書の準備は必要です。相続税がかからない規模でも、財産の把握と遺言書がないと遺産分割で家族が揉める可能性があります。「相続税がゼロでも手続きが大変」というケースは非常に多いです。まず遺言書の作成と財産リスト整理から始めてください。相続税がかかるかどうかは、税理士に無料相談して確認することをお勧めします。また、現在は相続税がかからない規模でも、不動産価格の上昇や親の財産が増えることで将来的に課税されるケースもあります。定期的に財産状況を確認し、変化があれば専門家に再度相談する習慣をつけておくと安心です。

Q. 相続準備を専門家に頼むとどのくらいの費用がかかりますか?

A. 初回相談は税理士・司法書士とも無料の場合が多いです。費用の目安は、公正証書遺言の作成が司法書士・弁護士費用を含め20〜30万円前後、家族信託の設定が50〜100万円前後、相続税の申告サポートは財産総額の0.5〜1%程度です。ただし、早めに準備を始めることで相続税そのものを数百万円単位で節税できる場合があり、専門家費用以上の効果が期待できます。まずは相談から始めてください。複数の事務所に相談して比較することも大切です。「費用が高い=良い専門家」ではなく、説明が分かりやすく実績があり、自分と相性が合うかどうかを判断材料にしてください。相続専門を名乗っていても実績に差があるため、口コミや事例の豊富さも確認しましょう。

Q. 兄弟が複数いる場合、準備はどのように進めればよいですか?

A. 兄弟全員が参加できる「家族会議」を設定して、一緒に親の意向を確認するのが理想です。ただし現実的には1人が動き始めることが多いため、動いた人が他の兄弟に経過を報告し、全員が情報共有できるようにしましょう。遺言書の内容は基本的に親が決めるものですが、「こんな希望がある」という意向を親から直接聞く機会を作ることが大切です。兄弟間で意見が違う場合は、専門家を交えて話し合うことをお勧めします。特に「長男がすべてやるべき」「長男が相続を多く取るべき」というような思い込みが誰かにあると話し合いが難航します。親の意向をベースに、全員がフラットに話し合える場を作ることが重要です。

この記事のまとめ

親が元気なうちにやっておくべき5つの相続準備

  • 準備①:財産リスト(エンディングノート)の作成——何がどこにあるかを家族全員が把握(7年以上の更新・保管が目安)
  • 準備②:遺言書の作成——誰に何を残すかを法的に明確にする(公正証書遺言が確実・遺留分にも配慮)
  • 準備③:生前贈与を開始する——早く始めるほど節税効果大。孫への贈与が最優先(生前贈与加算の7年ルールに注意)
  • 準備④:家族信託の検討——不動産を所有している場合は認知症対策として最重要(司法書士への相談から開始)
  • 準備⑤:生命保険の見直し——非課税枠(500万円×法定相続人の数)の活用と特定の相続人への確実な資産移転

「そのうちやろう」が最も危険な考え方です。認知症や突然の死亡によって、準備できるはずだったことがすべてできなくなります。今日この記事を読んだことをきっかけに、まず「財産の場所を確認する」または「エンディングノートを購入する」ところから始めてください。小さな一歩が、家族の未来を大きく変えます。相続の準備は「死を想う」ことではなく、「家族を守るための愛情表現」です。準備を完了させた親御さんは皆、「子供に迷惑をかけたくない」という強い愛情から行動されています。逆に準備できなかった場合、子供たちが何年もかけて手続きの苦労を背負うことになります。今の親御さんの元気なうちに、ぜひ一歩を踏み出してください。

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