公正証書遺言の作り方と費用の目安|手順・必要書類・証人を解説

公証役場で公正証書遺言を作成する|公証人と遺言者 遺言書

相続 × 遺言書

公正証書遺言の
作り方と費用の目安

最も確実な遺言書の作り方——
手順・費用・証人の選び方・準備書類を詳しく解説します。

作成手順5ステップ 手数料の計算方法 証人の選び方

「遺言書を残したい」と思ったとき、最も確実な方法が公正証書遺言です。3種類の遺言書の中で、形式不備で無効になるリスクがほぼなく、家庭裁判所での検認も不要。銀行・法務局での手続きがスムーズに進む、信頼性の高い遺言書です。この記事では、公正証書遺言の作成手順・必要書類・費用の計算方法・証人の選び方から、自宅・病院への出張公証まで、作成に必要な情報をすべて解説します。

著者より

銀行員時代、「公正証書遺言を作っておいてよかった」とおっしゃるご遺族を何度も見てきました。相続手続きの窓口でも、公正証書遺言があると「では遺言書と検認済証明書をお持ちください」ではなく「遺言書の写し(謄本)をお持ちください」で済み、手続きがはるかにスムーズです。
一方で、「費用が心配で……」「証人を誰に頼めばいいか……」と二の足を踏む方も多い。実際に費用を計算してみると、財産額にもよりますが総額5〜20万円程度が多く、「そのくらいなら作っておきたい」と安心される方がほとんどです。
公正証書遺言は、家族への「最後の贈り物」です。この記事を読んで、一歩踏み出すきっかけにしていただけれは幸いです。
— 田中由美(AFP・相続診断士・元銀行員)

公正証書遺言とは:特徴とメリット

公正証書遺言は、公証人(法律の専門家)が遺言者の意思を確認しながら公証役場で作成する遺言書です。公証人は法務大臣が任命する公務員であり、法的効力のある証明文書の作成を職務とします。原本は公証役場が保管するため、偽造・紛失のリスクがありません。

公正証書遺言のメリット

  • 形式不備で無効になるリスクがほぼゼロ
  • 家庭裁判所での検認が不要(死後すぐに手続き可能)
  • 原本を公証役場が保管(紛失・偽造リスクなし)
  • 公証人連合会の検索システムで遺言書の存在を確認できる
  • 意思能力の確認が公証人により行われる(後の争いを防ぐ)
  • 銀行・法務局での手続きがスムーズ

公正証書遺言のデメリット

  • 費用がかかる(手数料+証人費用など)
  • 証人2名が必要(手配が必要)
  • 公証役場に出向く必要がある(出張は可能だが費用加算)
  • 内容が公証人・証人に知られる
  • 作成まで数週間の準備が必要
比較項目 公正証書遺言 自筆証書遺言(法務局保管)
費用 5〜30万円程度 3,900円
検認 不要 不要
無効リスク ほぼゼロ 形式チェックあり・内容は未チェック
証人 2名必要 不要
内容の秘密 公証人・証人に知られる 秘密にできる
原本保管 公証役場(紛失リスクなし) 法務局(紛失リスクなし)
こんな人に向く 財産が複雑・確実に有効にしたい・争いを防ぎたい 費用を抑えたい・財産がシンプル

公正証書遺言の作成手順:5つのステップ

公正証書遺言の作成は、準備から完成まで通常2〜4週間程度かかります。余裕をもって進めましょう。

STEP 1 遺言の内容を整理する

誰に何を渡すかを具体的に決めます。以下の点を書き出しておくと公証役場でのやり取りがスムーズです。

  • 財産の一覧(不動産の登記簿情報・預金口座の金融機関名と口座番号・株式等)
  • 各財産を誰に渡すか(氏名・生年月日・続柄)
  • 遺言執行者を誰にするか
  • 付言事項(家族へのメッセージ)
  • 一人が先に亡くなった場合の予備的遺言
STEP 2 公証役場に相談・予約する

全国どこの公証役場でも作成できますが、遺言者の住所に近い公証役場が便利です。電話・窓口で「公正証書遺言を作成したい」と伝え、相談の予約を取ります。内容の概要を伝えると、公証人が事前に草案を作成してくれることもあります。事前相談は無料の場合がほとんどです。

STEP 3 証人2名を選ぶ

公正証書遺言の作成には証人2名の立ち合いが必要です(民法969条)。以下の人は証人になれません(民法974条)。

  • 未成年者
  • 推定相続人(法定相続人になる予定の人)・受遺者(遺言で財産をもらう人)とその配偶者・直系血族
  • 公証人の配偶者・4親等内の親族・書記・使用人

友人・知人・弁護士・司法書士などに依頼することが一般的です。公証役場が証人を紹介してくれる場合もあります(有料)。

STEP 4 必要書類を準備する

作成当日までに以下の書類を揃えます。

  • 遺言者の実印と印鑑登録証明書(発行から3ヶ月以内)
  • 遺言者の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
  • 相続人(受取人)の戸籍謄本
  • 不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書
  • 預金通帳のコピー(金融機関名・口座番号の確認用)
  • 証人2名の身分証明書・住所・生年月日の情報
STEP 5 公証役場で署名・押印し、正本を受け取る

公証役場で公証人が遺言書の内容を読み上げ、遺言者・証人2名が各自署名・押印します。公証人が署名・押印して遺言書が完成。原本は公証役場が保管し、遺言者には「正本」と「謄本」が交付されます。正本は遺言執行に使用するため大切に保管してください。

必要書類の詳細:何を用意すればいいか

書類は状況によって異なります。公証役場に事前確認することをおすすめします。以下は一般的なケースの目安です。

書類の種類 目的 取得先・費用
遺言者の印鑑登録証明書 本人確認・実印の証明 住民登録のある市区町村役場/300円程度
遺言者の本人確認書類 公証役場での本人確認 運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等(いずれか1点)
相続人(受取人)の戸籍謄本 遺言者との続柄を証明 各相続人の本籍地の市区町村役場/450〜750円
不動産の登記事項証明書 不動産の正確な情報(所在・地番・家屋番号等) 法務局(窓口600円・オンライン500円)
不動産の固定資産評価証明書 公証人手数料の計算基礎(不動産の評価額確認) 不動産所在地の市区町村役場/数百円
預金通帳のコピー等 口座情報(金融機関名・支店・口座番号)の確認 自己保管のもの(コピーで可)
証人の情報 証人の氏名・住所・生年月日・職業 証人本人から事前に書面で提出してもらう(または当日持参)

公証人手数料の計算方法

公証人手数料は、遺言で処分する財産の価額に応じて公証人手数料令の別表で定められています。財産を受け取る人(受取人)ごとに計算し、合計が総手数料になります。

受取人1人あたりの財産価額 公証人手数料
100万円以下 5,000円
100万円超〜200万円以下 7,000円
200万円超〜500万円以下 11,000円
500万円超〜1,000万円以下 17,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 23,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 29,000円
5,000万円超〜1億円以下 43,000円
1億円超〜3億円以下 43,000円 + 5,000円(超過1,000万円ごと)

手数料の計算例:具体的なシミュレーション

【例①】自宅(評価額2,500万円)を配偶者に、預金(500万円)を子1人に渡す場合

配偶者への財産(2,500万円):23,000円
子への財産(500万円):17,000円
遺言書全体の枚数加算(4枚超の場合):250円×超過枚数
基本手数料合計:40,000円+加算
+ 正本・謄本の作成費用(250円×枚数×通数)
+ 証人2名への謝礼(各5,000〜10,000円程度)
→ 総額目安:5〜8万円程度

【例②】全財産(総額8,000万円)を配偶者1人に渡す場合

配偶者への財産(8,000万円):43,000円
+ 正本・謄本・証人費用等
→ 総額目安:6〜9万円程度

💡 手数料の加算要素

  • 正本・謄本の費用:1枚につき250円。遺言書が長くなるほど加算
  • 証人への謝礼:法律上の規定はないが、友人・知人への謝礼として1〜2万円が目安。弁護士・司法書士が証人になる場合は別途報酬
  • 公証役場への交通費:遠方の場合は交通費・日当が別途かかる
  • 弁護士・司法書士への依頼料:遺言書作成のサポートを依頼する場合は5〜20万円程度の報酬が加算

証人の選び方:誰に頼むべきか

証人の選定は、公正証書遺言作成の中で最も悩む点のひとつです。証人は遺言書の内容を知ることになるため、信頼できる人を選ぶことが重要です。

証人に向いている人

  • 信頼できる友人・知人(成人・利害関係なし)
  • 弁護士・司法書士・行政書士
  • 公証役場が紹介する証人(有料・1〜2万円/人程度)
  • 職場の同僚・上司(相続人でない人)

証人になれない人(民法974条)

  • 未成年者
  • 推定相続人(子・配偶者・親等)
  • 受遺者(遺言書で財産をもらう人)
  • 上記の配偶者・直系血族(孫・親等)
  • 公証人の配偶者・4親等内の親族等

⚠ 証人の選び方でよくある失敗

「長男の妻」や「次男の子(孫)」を証人にすると欠格事由に該当し、遺言書が無効になる場合があります。「相続人の配偶者は大丈夫では?」と思われがちですが、受遺者の配偶者・直系血族も証人になれません。「相続や遺産とまったく関係のない第三者」を選ぶことが原則です。迷う場合は公証役場や弁護士・司法書士に相談してください。

公証役場に出向けない場合:出張公証という選択肢

病気・高齢・身体障害などで公証役場への出向が難しい場合は、公証人に自宅・病院・介護施設へ出張してもらうことができます。

出張公証の概要 内容
出張先 自宅・病院・介護施設・老人ホームなど
追加費用 通常の手数料の1.5倍 + 交通費・日当(公証人の移動費)
証人 出張先にも証人2名の立ち合いが必要
意思能力の確認 公証人が遺言者の意思能力を直接確認。認知症が疑われる場合は医師の診断書が必要なことも
署名できない場合 押印できない・署名できない場合でも「署名代理」の制度あり。公証人が代理署名できる

認知症が疑われる場合の注意点

認知症があっても「遺言能力(遺言の内容を理解する能力)」がある状態であれば、遺言書は有効です。しかし後に相続人間で「意思能力がなかった」と争われるリスクがあります。出張公証の際は、医師の診断書(作成日直近のもの)を取得しておくことが争い防止に有効です。公証人に事前に相談すると、どのような記録を残すべきか指示してもらえます。

公正証書遺言の保管と変更・取り消し方法

公正証書遺言の原本は公証役場が保管するため、手元には「正本」と「謄本」が渡されます。それぞれの使い道と、変更・取り消しの方法を確認しておきましょう。

正本の使い方

  • 遺言執行の手続き(銀行解約・不動産名義変更)で使用
  • 遺言執行者に渡すことが多い
  • 紛失した場合は公証役場で再発行可能(手数料あり)

謄本の使い方

  • 自分の手元に保管しておく控え
  • 手続きによっては謄本で対応できる場合がある
  • 税理士・司法書士への相談資料として提供

公正証書遺言の変更・取り消し方法

公正証書遺言はいつでも変更・取り消しできます。ただし、変更の方法によっては新旧の遺言書が並立することになります。

方法① 新しい公正証書遺言を作成する

新しい公正証書遺言で「前の遺言書を撤回する」と明記するか、矛盾する内容を書くことで旧遺言書を実質的に無効にできます。新しい遺言書の日付が新しいほうが矛盾する部分において優先されます。最も確実な方法です。

方法② 撤回証書(公正証書)を作成する

「○○年○月○日作成の公正証書遺言をすべて撤回する」という撤回証書を公正証書として作成します。遺言書の全部を取り消したい場合に使います。この場合も公証役場での手続きが必要です。

方法③ 自筆証書遺言で撤回する

公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することも法律上は可能です。ただし、自筆証書遺言の形式要件を満たす必要があり、死後に検認が必要になります。紛失リスクもあるため、あまりおすすめしません。

公正証書遺言の作成を弁護士・司法書士に依頼する場合

内容が決まっていれば公証役場に直接相談することもできますが、専門家に依頼すると次のようなメリットがあります。専門家の選び方も参考にしてください。

専門家に依頼するメリット

  • 内容の法的有効性・遺留分のチェック
  • 証人の手配を依頼できる
  • 公証役場との事前調整を代行
  • 財産の特定・表記の正確化をサポート
  • 遺言執行者として指定することができる

費用の目安(報酬)

  • 行政書士:5〜10万円程度
  • 司法書士:5〜15万円程度
  • 弁護士:10〜30万円程度
  • 公証人手数料は別途

事務所により異なります。初回相談無料の事務所も多い

公正証書遺言に書けること・書けないこと

遺言書に書ける内容(遺言事項)は法律で定められています。書ける内容と書いても法的効力がない内容を事前に整理しておきましょう。

項目 法的効力 ポイント
財産の相続・遺贈(誰に何を渡すか) あり 不動産・預金・株式・その他財産を特定して指定する
遺言執行者の指定 あり 相続人や弁護士・司法書士などを遺言執行者に指定できる
子の認知 あり 婚外子を認知する旨を遺言書に記すと認知の法的効力が生じる
相続人の廃除・廃除の取り消し あり 著しい非行のある相続人の廃除を家庭裁判所に申立てることを遺言書に記せる
未成年後見人・後見監督人の指定 あり 遺言者が親権者である場合、子の後見人を指定できる
付言事項(家族へのメッセージ) 法的効力なし 記載は可能。法的拘束力はないが家族への思いを伝えられる
葬儀・埋葬の方法の指定 法的効力なし 「散骨してほしい」「家族葬で」等の記載は可能だが拘束力なし。エンディングノートに書く方が確実
負担付き遺贈(条件をつけた遺贈) あり 「自宅を渡す代わりに母の面倒をみること」等の条件付き遺贈が可能
共同遺言(2人以上が同一の遺言書に署名) 禁止(無効) 夫婦が一緒に1通の遺言書に記入するのは民法975条で禁止。それぞれ別々に作成すること

公正証書遺言の定期的な見直しタイミング

一度作成した公正証書遺言は、生涯有効です。しかし、財産内容や家族構成が変わった際には内容を見直すことをおすすめします。

見直しタイミング① 家族構成が変わったとき

子の結婚・離婚、孫の誕生、配偶者や親の死亡、相続人の増減——家族構成の変化は遺言書の内容に直接影響します。特に「相続人全員が死亡した場合の予備的遺言」が書かれていないと、財産が宙に浮くことがあります。家族のライフイベントのたびに一度見直しましょう。

見直しタイミング② 財産が大きく変化したとき

不動産を購入・売却した、退職金を受け取った、株式や保険契約が増えたといった場合は、遺言書の内容が実態と乖離します。特に「特定の不動産を長男に」と書いた後にその不動産を売却していると、遺言書は実質的に効果を失います。5年に1度程度は財産リストと遺言書の内容を照合しましょう。

見直しタイミング③ 指定した遺言執行者が死亡・就任拒否した場合

指定した遺言執行者が遺言者より先に亡くなったり、就任を断ったりすることがあります。家庭裁判所で選任の申立てができますが、スムーズに進めるためにも予備の遺言執行者を指定しておくか、法人(弁護士事務所・信託銀行)を指定しておくと安心です。

見直しタイミング④ 相続法・税法が改正されたとき

相続法や相続税法は定期的に改正されます。2019年の相続法改正では「配偶者居住権」「遺産分割の方法」など大きな変更がありました。改正内容が自分の遺言書に影響する場合は、専門家に確認のうえ書き直しを検討しましょう。

公正証書遺言でよくある失敗と対策

公正証書遺言は公証人がチェックするため形式上の無効リスクはほぼありませんが、内容の不備や準備不足による問題は起こります。よくある失敗と対策を事前に把握しておきましょう。

よくある失敗 起きること 対策
財産の特定が曖昧(「預金すべて」だけ記載) 銀行ごとに「この口座が対象か」で争いが起きる 金融機関名・支店名・口座番号まで特定して記載する
遺言書で言及した財産を後で売却・処分 該当の遺言事項が効力を失い、残余財産の扱いで揉める 「その時点で残る財産すべて」を対象にする包括的記載を活用する
遺留分を大幅に侵害する内容を書いた 遺留分侵害額請求が起き、相続人間でトラブルになる 作成前に弁護士・税理士に遺留分試算を依頼する
証人が欠格者と知らずに立ち合わせた 公正証書遺言が無効になる可能性がある 民法974条の欠格者リストを必ず確認し、公証役場に事前相談する
遺言執行者を指定しなかった 銀行口座解約・不動産名義変更に相続人全員の協力が必要になり手続きが複雑化 必ず遺言執行者を指定する。弁護士・司法書士への依頼も検討
「すべての財産を長男に」と書き遺族に知らせなかった 他の相続人が遺言書の存在を知らずに遺産分割協議を進め、後で二度手間になる 遺言書の存在と遺言執行者を生前に家族に伝えておく
夫婦連名で遺言書を1通作成した 民法975条違反で遺言書全体が無効になる 必ずそれぞれが別々の遺言書を作成する

よくある質問

Q. 公証役場はどこにあり、どうやって選べばいいですか?

公証役場は全国に約300カ所あります(日本公証人連合会ウェブサイトで検索可能)。原則として全国どの公証役場でも作成できますが、遺言者の住所に近い公証役場が便利です。不動産がある場合は不動産の所在地の公証役場を選ぶと固定資産評価証明書の取得がしやすい場合もあります。電話で問い合わせ、担当公証人に相談してから進めると安心です。

Q. 証人が当日キャンセルになった場合、どうなりますか?

証人2名が揃わないと公正証書遺言を作成できません。キャンセルが出た場合は公証役場に連絡し、日程を変更するか別の証人を手配します。公証役場によっては証人を紹介してもらえますが、事前に依頼しておく必要があります。1名しかいない場合も作成不可ですので、予備の証人候補を準備しておくと安心です。

Q. 遺言書の存在を家族に伝えておくべきですか?場所を知らせておかないと心配で……

公正証書遺言は公証役場が原本を保管しているため、遺言書自体を紛失する心配はありません。ただし、相続人が遺言書の存在を知らない場合、相続発生後に公証役場の検索システム(公証人連合会)で調べることができます(2000年以降の遺言書)。遺言書の存在・保管場所・遺言執行者の連絡先をエンディングノートなどに記しておくか、遺言執行者を指定して「相続発生後に連絡してほしい」と依頼しておくと安心です。

Q. 遺言書で遺留分を侵害した場合、遺言書は無効になりますか?

遺留分を侵害する内容であっても、遺言書自体は有効です。ただし、遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求」を行う権利があります(侵害を知った日から1年以内に行使する必要あり)。「すべての財産を長男に」と書いても、他の相続人は法定相続分の半分(遺留分)を請求できます。相続税も含めて、遺言書を作成する前に弁護士・税理士に遺留分の試算を依頼しておくと安心です。

Q. 公正証書遺言の原本は何年間保管されますか?

公正証書の原本の保存期間は、その証書の最終日から20年間が法定最低保存期間(公証人法施行規則27条)ですが、遺言公正証書については特別な規定があり、実務上は半永久的に保管されています。全国の公証役場は公証人連合会の遺言検索システムで情報を管理しており、相続人が死後に検索・謄本請求することができます(2000年以降の遺言書に限る)。

Q. 自筆証書遺言から公正証書遺言に切り替えることはできますか?

もちろん可能です。以前書いた自筆証書遺言がある場合、新しく公正証書遺言を作成し「従前の遺言書を撤回する」と明記すれば、自筆証書遺言は効力を失います。法務局に保管中の自筆証書遺言を撤回する場合は、法務局への申請で撤回することもできます。財産が増えた・家族関係が変わった・より確実な形にしたいといったタイミングで切り替えを検討される方が多いです。

まとめ

公正証書遺言は、費用はかかりますが最も確実で、使いやすい遺言書です。検認不要・無効リスクほぼゼロ・紛失なし——財産を確実に家族に届けたいなら、公正証書遺言が最善の選択です。

  • 公証人が作成するため形式不備で無効になるリスクがほぼゼロ
  • 検認不要。死後すぐに遺言執行の手続きに入れる
  • 費用の目安:公証人手数料5,000〜43,000円(財産額による)+証人費用+書類代
  • 証人2名は推定相続人・受遺者・その配偶者・直系血族は不可
  • 病院・自宅への出張公証も可能(費用1.5倍+交通費)
  • 変更はいつでも可能——新しい公正証書遺言で旧遺言書を撤回する
  • 2000年以降の公正証書遺言は全国の公証役場で検索できる

遺言書の種類の比較発見後の手続きも合わせて確認し、相続手続きの全体的な流れの中で遺言書の準備を進めましょう。

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