Inheritance Professional Guide
相続手続きは弁護士・司法書士・税理士
どこに頼む?専門家の使い分けを元銀行員AFPが解説
「誰に頼めばいいか分からない」を解決する
専門家の役割・費用・選び方の完全ガイド
「相続手続きを専門家に頼みたいが、弁護士・司法書士・税理士・行政書士の違いが分からない」「どこに相談したらいいか分からなくて、とりあえず知り合いの税理士に連絡したら不動産の登記は司法書士に別途頼んでと言われた」——相続の相談を受けていると、このような声を本当によく聞きます。実は専門家によって「できること」「できないこと」が法律で明確に決まっており、間違った専門家に相談すると二度手間・二重費用になることもあります。この記事では、元銀行員でAFP・相続診断士の田中由美が、相続手続きにおける各専門家の役割・費用・得意分野をケース別に分かりやすく解説します。
田中由美より(AFP・相続診断士・元銀行員)
銀行員時代、相続の相談を受けると「税理士に頼めばすべて解決してくれると思っていた」というお客様が非常に多かったです。しかし税理士は相続税の申告は得意でも、不動産の相続登記や遺産分割協議書の作成は司法書士の業務です。また相続人の間でトラブルがあれば弁護士でないと解決できません。専門家の使い分けを知っておくだけで、費用と時間を大幅に節約できます。「誰に相談すればいいか」を正しく理解することが、スムーズな相続手続きの第一歩です。
相続手続きに関わる4つの専門家:それぞれの役割と独占業務
相続手続きに関わる専門家は主に4種類です。それぞれ法律によって「独占業務(その資格者しかできない業務)」が定められており、資格外の業務を行うことは違法になります。まずはそれぞれの専門家の基本的な役割を把握しましょう。
弁護士
法的紛争・代理交渉のスペシャリスト
独占業務(弁護士しかできないこと)
- 相続人間の代理交渉・紛争解決
- 調停・審判・訴訟の代理
- 遺産分割協議の代理(相手方との交渉)
- 相続放棄の申述(代理申請)
費用目安:着手金20〜50万円+成功報酬
司法書士
不動産登記・書類作成のスペシャリスト
独占業務(司法書士しかできないこと)
- 不動産の相続登記(名義変更)
- 法定相続情報一覧図の作成・申請代理
- 家庭裁判所への書類提出代理(140万円以内)
- 成年後見申立書類の作成
費用目安:5〜20万円(登記費用含む)
税理士
相続税申告のスペシャリスト
独占業務(税理士しかできないこと)
- 相続税申告書の作成・提出(代理)
- 税務調査の対応・立会い
- 財産評価(土地・株式等)
- 節税対策の税務アドバイス
費用目安:遺産額の0.5〜1.5%(最低10万円〜)
行政書士
書類作成・手続きサポートの専門家
主な業務(行政書士ができること)
- 遺産分割協議書の作成(代理交渉は不可)
- 相続関係説明図の作成
- 戸籍収集・相続人調査のサポート
- 自動車・農地等の名義変更手続き
費用目安:5〜15万円程度
弁護士・司法書士・税理士・行政書士の違い:15項目で徹底比較
各専門家ができること・できないことを一覧表で確認しましょう。◎=得意・主業務、○=できる、△=条件付きでできる、×=できない(法律上の制限あり)。
| 業務内容 | 弁護士 | 司法書士 | 税理士 | 行政書士 |
|---|---|---|---|---|
| 相続人間のトラブル解決・代理交渉 | ◎ | × | × | × |
| 調停・審判・訴訟の代理 | ◎ | △※1 | × | × |
| 不動産の相続登記(名義変更) | ○ | ◎ | × | × |
| 相続税の申告・税務対応 | × | × | ◎ | × |
| 遺産分割協議書の作成 | ◎ | ○ | △※2 | ○ |
| 戸籍収集・相続人調査 | ○ | ○ | △ | ○ |
| 相続放棄の申請サポート | ◎ | ○ | × | × |
| 遺言書の作成サポート | ○ | ◎ | △ | ○ |
| 相続財産の評価(土地・株式) | △ | △ | ◎ | × |
| 成年後見申立サポート | ○ | ◎ | × | × |
| 家族信託の組成サポート | ○ | ◎ | △ | × |
| 銀行口座の解約・払戻し手続き | ○ | ○ | △ | ○ |
| 車・農地等の名義変更 | △ | △ | × | ◎ |
| 節税対策のアドバイス | △ | △ | ◎ | × |
| 法定相続情報一覧図の作成 | ○ | ◎ | △ | ○ |
※1 司法書士は140万円以内の事件なら簡裁代理権あり ※2 税理士は附随業務として作成可の場合あり
ケース別:あなたの状況に合った専門家の選び方
「自分のケースにはどの専門家が向いているのか」を6つのシナリオ別に整理しました。自分の状況に当てはまるケースを見つけてください。
田中由美が経験した専門家選びの失敗と成功事例
銀行員時代・AFP取得後の相談業務の中で見てきた、専門家選びの成功例・失敗例を共有します。
信頼できる専門家の探し方:後悔しない選び方の5つのポイント
「良い専門家をどうやって探せばいいか」という質問も多く受けます。以下の5つのポイントを意識すれば、信頼できる専門家に出会いやすくなります。
① 相続の実績・専門性を確認する
「年間〇件以上の相続案件」「相続専門」を明記しているか。特に税理士は相続案件の経験数が申告額に大きく影響する。相続専門の税理士事務所を選ぶことが重要。
② 初回相談の無料・有料を確認する
多くの事務所で初回相談は無料。複数の事務所に相談し、対応の丁寧さ・説明の分かりやすさ・費用の透明性を比較することが重要。
③ 見積もりを必ず書面で取る
「口頭で安く言ったのに、後から追加費用が発生した」というトラブルが多い。依頼前に費用の内訳を書面(見積書)で確認することが必須。
④ 連絡のしやすさを確認する
相続手続きは数ヶ月かかる場合もある。電話・メール・LINEなど連絡手段の選択肢があるか、レスポンスが早いかを初回相談時に確認する。
⑤ 紹介・口コミを重視する
信頼できる知人・銀行・不動産会社からの紹介は安心感が高い。Googleレビュー・士業向け口コミサイトも参考になるが、件数と内容の両方を確認する。
相続手続きの費用相場:専門家ごとの料金早見表
| 専門家 | 業務内容 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | 遺産分割協議(トラブルなし) | 20〜50万円 | 着手金+報酬金制が多い |
| 弁護士 | 調停・審判・訴訟 | 50〜200万円以上 | 解決額・複雑さによる |
| 司法書士 | 相続登記(不動産1件) | 5〜12万円+登録免許税 | 登録免許税:評価額×0.4% |
| 司法書士 | 相続手続き総合サポート | 15〜30万円 | 戸籍収集・協議書作成含む |
| 税理士 | 相続税申告(遺産5,000万円) | 25〜60万円程度 | 土地がある場合は高め |
| 税理士 | 相続税申告(遺産1億円) | 50〜120万円程度 | 土地評価・相続人数による |
| 行政書士 | 遺産分割協議書作成 | 3〜10万円 | 交渉・代理は不可 |
| 行政書士 | 相続手続き総合(預貯金のみ) | 8〜15万円 | 不動産ありは司法書士が必要 |
相続手続きを依頼する際の注意点:トラブルを防ぐための7つのチェックポイント
専門家に依頼する際に起きがちなトラブルと、それを防ぐための事前チェックポイントを確認しておきましょう。依頼前のわずかな確認が、後悔のない相続手続きにつながります。
① 「何でもできます」と言う専門家に注意
税理士が「相続登記も含めてすべてお任せを」「弁護士への相談も不要です」などと言う場合は注意が必要です。法律上、各専門家にできることには明確な制限があります。「全部できる」と言う場合は、実際には別の専門家に外注しているにもかかわらず費用が上乗せされているケースや、無資格で業務を行っている違法なケースがあります。信頼できる専門家は「私の専門はここまで、この部分は司法書士(弁護士)と連携します」と明確に説明してくれます。
② 費用の内訳を事前に明確に確認する
「基本料金〇〇万円」と提示されても、実際には「戸籍収集費用・交通費・郵送費・役所手数料・登録免許税・申告加算税」などが追加される場合があります。依頼前に「合計でいくらになるか(実費込みの総額)」を書面で確認することが重要です。見積書に「その他実費」という曖昧な表現だけがある場合は、具体的な内訳を必ず聞きましょう。費用が不明確な専門家への依頼は、後からのトラブルの原因になります。
③ 担当者が途中で変わらないか確認する
相談時は所長や上級の専門家が対応してくれたのに、実際の業務は経験の浅い担当者に任せるという事務所もあります。契約前に「実際に担当するのは誰か」「途中で担当者が変わる場合はどうなるか」を確認しておきましょう。相続は数ヶ月にわたる手続きのため、担当者との信頼関係が重要です。
④ 相続税申告は「相続専門」かを必ず確認する
税理士の中でも「法人税・所得税専門」「相続税専門」と得意分野があります。特に土地の評価は専門的な知識が必要で、「路線価をそのまま適用」するだけでは節税できる減額要素を見落とすことがあります。税理士を選ぶ際は「年間何件の相続税申告をしているか」を必ず確認してください。年間30件以上の相続税申告実績がある税理士を選ぶことが一般的な目安です。
⑤ 委任状・契約書を必ず交わす
口頭だけで依頼すると、後から「そんな話をした記憶がない」「その業務は含まれていなかった」などのトラブルになることがあります。必ず書面で「委任契約書(または業務委託契約書)」を交わし、業務範囲・費用・完了の基準・解約条件を明確にしておきましょう。書面での契約を嫌がる専門家には依頼しないことをお勧めします。
⑥ 相続人全員の合意を事前に確認する
専門家に手続きを依頼しても、相続人全員の印鑑・書類がそろわなければ手続きは進みません。「全員の協力を得られているか」を事前に確認してから専門家に依頼することで、無駄な時間・費用を防げます。もし協力が得られない相続人がいる場合は、最初から弁護士に相談することをお勧めします。
⑦ 「急かす」専門家には慎重に
「今すぐ依頼しないと期限に間に合いません」「他の方が予約待ちです」と急かす専門家には慎重に対応してください。相続には確かに期限がありますが、信頼できる専門家は適切な期限を説明した上で、依頼するかどうかは依頼者が十分に納得した上で判断できるよう対応してくれます。焦りを利用した契約は、後悔のもとになることがあります。
相続手続きの主な期限と各専門家への相談タイミング
相続手続きには法定の期限があります。期限を過ぎると大きな不利益が生じるため、いつどの専門家に相談すべきかをスケジュールとして把握しておきましょう。
| 時期 | 手続き内容 | 期限 | 相談すべき専門家 |
|---|---|---|---|
| 死亡直後〜1週間 | 死亡届・火葬許可証の取得 | 7日以内 | 役所(専門家不要) |
| 死後2〜4週間 | 遺言書の確認・相続人の把握・全体相談 | なるべく早く | 司法書士または弁護士に初回相談 |
| 3ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認の申述 | 3ヶ月(厳守) | 弁護士または司法書士(緊急) |
| 4ヶ月以内 | 被相続人の準確定申告 | 4ヶ月以内 | 税理士 |
| 2〜6ヶ月 | 遺産分割協議・銀行口座解約・不動産名義変更 | なるべく早く | 司法書士・弁護士(トラブル時) |
| 10ヶ月以内 | 相続税の申告・納付 | 10ヶ月以内(厳守) | 相続専門税理士(早めに依頼) |
| 3年以内 | 不動産の相続登記(相続登記義務化) | 3年以内(2024年4月〜義務) | 司法書士 |
| 5年以内 | 相続税の更正の請求(払い過ぎの取り戻し) | 申告期限から5年以内 | 相続専門税理士 |
よくある質問(Q&A)
ONE-STOP SOLUTION
税理士・司法書士・弁護士を自分で選ぶのは大変…と感じた方へ
相続では士業の分業が必要ですが、別々に探して連携を取るのは想像以上の労力。相続専門チームが同じ窓口で全て対応するワンストップサービスを、68万円〜の明瞭料金で提供する選択肢があります。
この記事のまとめ
相続専門家の使い分けまとめ
- 弁護士:相続人間のトラブル・代理交渉・調停・訴訟が必要なケースで必須
- 司法書士:不動産の相続登記(2024年から義務化)・家族信託・成年後見申立の専門家
- 税理士:相続税の申告・節税対策は必ず「相続専門」の税理士に依頼する
- 行政書士:不動産なし・トラブルなし・相続税不要のシンプルなケースで活用可
- 「知り合いの税理士」に相続を任せると、土地評価の失敗で数十〜数百万円の損失になることがある
- 複数の専門家を役割分担させると、費用・時間の両面でトータルコスパが上がることが多い
- 初回相談は多くの事務所で無料。まず2〜3社に相談して比較することが重要
- 相続放棄は3ヶ月以内・相続税申告は10ヶ月以内という期限に注意して早期相談を
相続手続きを円滑に進めるためには、最初の「専門家選び」が最も重要です。この記事を参考に、あなたのケースに合った専門家に早めに相談してみてください。一日でも早い行動が、スムーズな相続の第一歩です。

