相続人が死亡していた場合の代襲相続とは?範囲・割合・注意点を元銀行員AFPが解説

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相続人が死亡していた場合の代襲相続とは?
範囲・割合・注意点を徹底解説

相続放棄との違い・再代襲相続・必要書類まで
元銀行員AFP田中由美がわかりやすく解説

民法第887条 孫・甥・姪が相続人に 相続放棄は代襲なし

「父が亡くなったとき、兄はすでに他界していた。この場合、兄の子(甥・姪)は相続人になるのか?」——そんな疑問を持ったことはありませんか。実は、本来の相続人が先に亡くなっている場合、その子や孫が「代わりに」相続人となる制度があります。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)といいます。代襲相続は身近な制度である一方、範囲・割合・相続放棄との関係など、誤解されやすいポイントがたくさんあります。この記事では、代襲相続の基本から実際の手続きまで、元銀行員でAFP・相続診断士の田中由美が丁寧に解説します。

この記事でわかること

  • 代襲相続とは何か(民法の規定・発生する3つのケース)
  • 代襲相続の「範囲」——子の場合と兄弟姉妹の場合の違い
  • 代襲相続人の「相続割合」の計算方法(具体例あり)
  • 再代襲相続とは(さらに孫も亡くなっている場合)
  • 相続放棄した場合は代襲相続にならない理由
  • 代襲相続の手続きに必要な書類と注意点
  • 代襲相続でよくあるトラブルと解決策

代襲相続とは?——相続人が先に亡くなっていた場合の制度

代襲相続とは、本来の相続人(被代襲者)が被相続人よりも先に亡くなっていた場合に、その子や孫が「代わりに」相続人となる制度です(民法第887条・第889条)。

たとえば、祖父Aが亡くなったとき、本来の相続人であるAの息子Bがすでに亡くなっていた場合、Bの子(Aの孫)Cが、Bが受け取るはずだった相続分を引き継いで相続します。これが代襲相続です。

代襲相続が発生する「代わりに相続する人」を代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)といい、先に亡くなった本来の相続人を被代襲者(ひだいしゅうしゃ)といいます。代襲相続は、相続人が亡くなった場合でも、その系列(家族の流れ)を守るために設けられた制度です。

重要ポイント:代襲相続が発生する3つのケース

  1. 死亡:相続人が被相続人よりも先に亡くなっていた(最も多いケース)
  2. 相続欠格:相続人が相続欠格事由(遺言書偽造・殺人等)に該当して相続権を失った
  3. 廃除:被相続人が家庭裁判所に申し立て、相続人の相続権が廃除された

※「相続放棄」は上記3つに含まれません。相続放棄した場合は代襲相続は発生しません(後述)。

代襲相続の仕組みを示す図のイメージ

代襲相続の「範囲」——誰が代わりに相続できる?

代襲相続の範囲は、亡くなった相続人が「誰であるか」によって異なります。民法では大きく2つのケースに分けられています。

ケース①:子・直系卑属が亡くなっていた場合(何代でも代襲可能)

被相続人の子が亡くなっていた場合、その子の子(孫)が代襲相続人となります(民法第887条第2項)。さらに、その孫も亡くなっていた場合は、ひ孫が代襲します(再代襲相続・同条3項)。子の系列では代数に制限はなく、何代でも代襲が続きます

【例】祖父Aが死亡。Aの子Bはすでに死亡。Bの子C(Aの孫)も死亡。→ Cの子D(Aのひ孫)が代襲相続人となる(再代襲相続)。

ケース②:兄弟姉妹が亡くなっていた場合(1代のみ代襲可能)

被相続人の兄弟姉妹が亡くなっていた場合、その兄弟姉妹の子(甥・姪)が代襲相続人となります(民法第889条第2項)。しかし、代襲は1代限りです。甥や姪がさらに亡くなっていても、その子(被相続人の大甥・大姪)は代襲相続人にはなりません。

【例】被相続人Aが死亡。Aには子供がおらず、兄弟Bが相続人。しかしBも死亡。BにはC(Aの甥)がいる。→ Cが代襲相続人。ただしCも亡くなっていた場合、Cの子は代襲相続人にはなれない(兄弟姉妹の代襲は1代限りのため)。

亡くなった相続人 代襲相続人 代数制限 法的根拠
子(第1順位) 孫・ひ孫・玄孫… 制限なし(何代でも) 民法887条2・3項
兄弟姉妹(第3順位) 甥・姪のみ 1代限り 民法889条2項
父母・祖父母(第2順位) 代襲相続なし 民法889条(直系尊属は順位変更のみ)

代襲相続の相続割合の計算方法

代襲相続では、代襲相続人は被代襲者(亡くなった相続人)が受け取るはずだった相続分をそのまま引き継ぎます。これを「代襲相続分」といいます(民法第901条)。

具体的な計算例で確認しましょう。

計算例①:子が1人亡くなっていた場合(子3人のうち1人が先に死亡)

状況:被相続人Aに配偶者・子B・子C・子D(B・Cは存命、Dは死亡。Dには子D1・D2がいる)

  • 配偶者の相続分:遺産の1/2
  • 子B・C・D全員の相続分合計:遺産の1/2を3人で均等割り=各1/6
  • 子Dが死亡しているため、D1・D2がDの1/6を代襲相続:各1/12(1/6÷2人)

※代襲相続人が複数いる場合は、被代襲者の相続分を均等に分けます。

計算例②:兄弟姉妹の代襲(甥・姪が代襲相続人の場合)

状況:被相続人Aに配偶者なし・子なし・父母も死亡。兄Bと弟C(B存命、C死亡。Cには子C1のみ)

  • 第3順位相続人(兄弟姉妹)として兄B・弟Cが法定相続人
  • 兄B:遺産の1/2、弟C:遺産の1/2
  • 弟Cが死亡しているため、C1(Aの甥)がCの1/2を代襲相続
  • 結果:兄B=1/2、甥C1=1/2

※兄弟姉妹の代襲は1代(甥・姪)まで。甥・姪が亡くなっていてもその子は代襲できません。

再代襲相続とは——孫も亡くなっていた場合

子が亡くなっていて、さらにその子(孫)も亡くなっていた場合——このケースを再代襲相続といいます(民法第887条第3項)。子の系列では何代でも代襲が続くため、ひ孫・玄孫まで代襲相続人になる可能性があります。

世代 続柄 代襲の可否 備考
第1世代 本来の相続人 死亡等で相続権喪失→代襲発生
第2世代 代襲○ 孫も死亡の場合→再代襲
第3世代 ひ孫 再代襲○ ひ孫も死亡の場合→さらに再代襲
第4世代以降 玄孫以降 何代でも再代襲○ 子の系列は代数制限なし

再代襲相続は現実にはあまり多くありませんが、被相続人が高齢で亡くなり、子も孫もすでに亡くなっているというケースでは発生します。家系図や戸籍を丁寧に確認することが重要です。

重要:相続放棄した場合は代襲相続にならない

代襲相続で最も誤解されやすいポイントの一つが、「相続放棄した場合は代襲相続が発生しない」という点です。

代襲相続が発生するのは「死亡」「相続欠格」「廃除」の3ケースのみ(民法887条・889条)。相続放棄は含まれません。つまり、相続人が相続放棄をすると、その相続放棄した相続人の子(孫等)は代わりに相続する権利を取得しません。

代襲相続が発生するケース

  • 相続人が死亡していた
  • 相続人が相続欠格(遺言書偽造・殺人など)
  • 相続人が廃除(家庭裁判所の審判)

→ 子・孫が代わりに相続できる

代襲相続が発生しないケース

  • 相続人が相続放棄した
  • 相続人が養子縁組前に生まれた子(例外あり)
  • 父母・祖父母など直系尊属が亡くなった場合

→ 子・孫は代わりに相続できない

よく混同されるケース:相続放棄と代襲相続

「叔父が相続放棄をした。では自分(甥・姪)が代わりに相続できるのか?」——答えはNOです。叔父が相続放棄した場合、その子(甥・姪)は代襲相続人にはなりません。相続放棄は「初めから相続人でなかった」ものとして扱われ(民法第939条)、代襲相続の対象とならないためです。ただし、叔父の相続放棄により相続順位が変わり、別の人が相続人になるケースはあります。混乱しやすい部分なので、司法書士や弁護士に確認することをお勧めします。

代襲相続人が相続する場合の必要書類

代襲相続が発生している場合は、通常の相続書類に加えて被代襲者(先に亡くなった相続人)の死亡を証明する書類が必要になります。書類の収集が複雑になりやすいため、早めに準備を始めましょう。

書類の種類 誰の書類か 目的 取得先
被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡) 亡くなった被相続人 相続人の特定 本籍地市区町村
被代襲者の戸籍謄本(出生〜死亡) 先に亡くなった相続人 死亡の事実・代襲相続の証明 本籍地市区町村
代襲相続人の戸籍謄本 代襲相続人(孫・甥・姪等) 代襲相続人の特定 本籍地市区町村
代襲相続人の印鑑証明書 代襲相続人 遺産分割協議書の署名・押印 住所地市区町村
代襲相続人の住民票 代襲相続人 現住所の確認 住所地市区町村
相続関係説明図(任意) 申請者が作成 家族関係・代襲関係の整理 自分で作成または司法書士に依頼

戸籍収集のポイント

代襲相続が発生している場合、被相続人と被代襲者の両方の出生〜死亡までの戸籍を集める必要があります。特に被代襲者(先に亡くなった相続人)の戸籍は、転籍等で複数の市区町村にまたがっている場合があります。法定相続情報一覧図を作成すると、一度の申請で複数機関に提出できて便利です。法務局で無料で申請できます(相続手続きの流れも参照)。

代襲相続人が養子・非嫡出子の場合の注意点

代襲相続には、養子縁組や非嫡出子(婚外子)に関する特別なルールがあります。

養子の子の代襲相続

被相続人の養子が亡くなった場合、その養子の子が代襲相続人になれるかどうかは、その子が「いつ生まれたか」によって異なります。

  • 養子縁組後に生まれた子:代襲相続人になれる(被相続人との親族関係あり)
  • 養子縁組前に生まれた子:原則として代襲相続人になれない(被相続人との親族関係がないため)

非嫡出子(婚外子)の代襲相続

認知された非嫡出子(婚外子)も法定相続人となり(民法900条4号)、その子も代襲相続人になります。2013年の最高裁判決により、非嫡出子と嫡出子の相続分は同等となっています(改正前は非嫡出子は嫡出子の1/2でした)。

代襲相続でよくあるトラブルと解決策

トラブル①

代襲相続人の存在を知らなかった

疎遠だった兄弟・甥・姪が代襲相続人になるケース。遺産分割協議の後に判明すると協議のやり直しが必要になり手続きが煩雑に。

解決策:最初に全相続人の戸籍を揃えて確認する

トラブル②

代襲相続人が未成年の場合

孫が未成年(18歳未満)の場合、親権者(親)が法定代理人として代わりに遺産分割協議に参加する。ただし親が同じ相続人の場合は利益相反が生じ、特別代理人の選任が必要。

解決策:家庭裁判所に特別代理人の選任を申立て

トラブル③

代襲相続人が疎遠で連絡がとれない

甥・姪が多数いたり、面識のない人が相続人となるケース。連絡を無視されると遺産分割が前に進まない。

解決策:内容証明郵便で連絡→調停申立て

トラブル④

相続割合の計算を誤ってしまった

代襲相続人が複数いる場合、相続割合の計算が複雑になる。計算を間違えて協議書を作成してしまうと、後から問題になる可能性がある。

解決策:司法書士・弁護士に計算を依頼

代襲相続と相続税の関係——2割加算に注意

代襲相続では、相続税の計算において注意すべき点があります。

代襲相続人は2割加算の対象外

相続税には「2割加算」という制度があります。被相続人の配偶者・子・父母以外の相続人(孫・兄弟姉妹など)は、通常の相続税額に20%加算されます(相続税法第18条)。しかし、代襲相続人となった孫は、この2割加算の対象外です。代襲相続は「本来の相続人(子)が亡くなったための代替」であるため、孫でありながら子と同様に扱われます。

ケース 相続人 2割加算の有無 理由
通常の孫への遺贈 孫(遺言書で指定) 2割加算あり 法定相続人以外の者への遺贈
代襲相続による孫 孫(子の代わり) 2割加算なし 代襲相続人は子と同等扱い
兄弟姉妹(通常) 兄弟姉妹 2割加算あり 配偶者・子・父母以外のため
甥・姪(代襲相続) 甥・姪 2割加算あり 兄弟姉妹の代襲は2割加算対象

重要:孫養子は2割加算の対象になる場合も

孫を養子にして相続させた場合(孫養子)は、代襲相続ではなく「養子」として相続するため、2割加算の対象になります(相続税法第18条1項)。代襲相続と養子縁組の違いに注意が必要です。税理士への相談を強くお勧めします。

代襲相続に必要な戸籍書類のイメージ

田中由美の実体験:代襲相続が発生した相続事例

銀行員時代・相続診断士として活動する中で、代襲相続が絡む相続案件を何度も経験してきました。中でも印象に残っているのは、甥・姪が複数の国にまたがって散在していたケースです。

被相続人は80代の女性(Aさん)で、夫はすでに他界。子供は3人いたのですが、長男はAさんより先に亡くなっており(被代襲者)、長男には子供が4人いました。その4人のうち2人は国内在住、1人はカナダ在住、もう1人はオーストラリア在住という状況でした。

手続きには長男の出生から死亡までの戸籍・4人の孫全員の戸籍が必要で、海外在住の2人についてはサイン証明(署名証明)の取得が必要でした。書類のやりとりに3か月以上かかり、遺産分割協議書の完成から法務局・銀行の手続き完了まで、合計10か月近くかかりました。

この事例を通じて実感したことは、「代襲相続は想定外のスケジュール遅延を招く」ということです。疎遠な甥・姪が相続人になる場合は特に、早期に専門家(司法書士・弁護士)に相談してほしいと思います。代襲相続が発生しているかどうかは戸籍を調べなければわかりませんが、「相続人のうち亡くなった人がいる」と判明した段階で、ただちに専門家に相談することをお勧めします。

代襲相続の手続きを進めるためのステップ

1

被相続人の戸籍を出生〜死亡まで収集する

相続人の範囲を確定するために、被相続人の全戸籍謄本(原戸籍・改製原戸籍を含む)を収集します。市区町村の窓口(または郵送)で請求できます。

2

被代襲者(先に亡くなった相続人)の戸籍も収集する

先に亡くなった相続人の戸籍謄本(出生〜死亡)と、その子(代襲相続人)の戸籍謄本も収集します。被代襲者の死亡前後の変更がないか確認します。

3

全相続人(代襲相続人を含む)を特定し連絡を取る

戸籍から代襲相続人が特定できたら、全員に連絡を取り遺産分割協議の参加を依頼します。疎遠な場合は書面での連絡をお勧めします。

4

代襲相続分を正確に計算して遺産分割協議を行う

代襲相続人の相続分(被代襲者の相続分を引き継いだ割合)を正確に計算した上で、遺産分割協議書を作成します。専門家のチェックを受けることをお勧めします。

5

各機関で名義変更・相続税申告等の手続きを行う

遺産分割協議書が完成したら、不動産登記(法務局)・金融機関の名義変更・相続税申告(税務署)等の手続きを進めます。期限(相続税申告は10か月以内)に注意して進めましょう。

代襲相続人が引き継ぐ負債——プラスの財産だけではない

代襲相続では、プラスの財産(現金・不動産・有価証券など)だけでなく、マイナスの財産(借金・ローン・保証債務など)も引き継ぎます。これは、代襲相続人が本来の相続人と同じ立場で相続するためです。

被代襲者(先に亡くなった相続人)も多額の負債を残していた場合、代襲相続人は被相続人の負債だけでなく、被代襲者の負債まで二重に引き継いでしまうリスクがあります。ただし、被代襲者の負債は代襲相続では引き継がれません。被代襲者(先に亡くなった相続人)の負債は、被代襲者の相続人(被代襲者の配偶者・他の子等)が引き継ぐものです。あくまで、被相続人の負債のみが代襲相続の対象です。

代襲相続人が被相続人の負債を引き継ぎたくない場合は、相続放棄(家庭裁判所への申述)を選択することができます。相続放棄をすれば、マイナスの財産もプラスの財産も一切引き継がないことになります。代襲相続の開始を知った時点で、被相続人の財産状況をできるだけ早く把握し、相続放棄を検討するかどうかを判断することが重要です。

選択肢 プラスの財産 マイナスの財産 選択すべきケース
単純承認(通常の相続) 全て引き継ぐ 全て引き継ぐ プラスが多い場合
相続放棄 引き継がない 引き継がない マイナスが多い場合・詳細不明な場合
限定承認 プラスの範囲内で プラスの範囲内のみ 財産状況が不明な場合(相続人全員の合意が必要)

代襲相続と遺留分——代襲相続人も遺留分権者になる

遺留分とは、法定相続人のうち一定の者(配偶者・子・直系尊属)が法律上最低限もらえる相続財産の割合です(民法第1042条)。遺言書があってもこの遺留分を侵害することはできません。

代襲相続人も、被代襲者が有していた遺留分権を引き継ぎます。つまり、代襲相続人の孫・甥・姪も遺留分権者になれます(被代襲者が遺留分権者だった場合)。

一方で、注意が必要なのは兄弟姉妹(第3順位相続人)です。兄弟姉妹には遺留分がありません(民法第1042条)。したがって、兄弟姉妹の代わりに代襲相続した甥・姪も、遺留分を主張することはできません。

代襲相続人の続柄 被代襲者 遺留分の有無 遺留分割合
孫(子の代わり) 子(第1順位) あり 被代襲者の遺留分を引き継ぐ
甥・姪(兄弟姉妹の代わり) 兄弟姉妹(第3順位) なし 兄弟姉妹は遺留分なし

遺言書があり、遺留分を侵害している場合は「遺留分侵害額請求」を行うことができます(民法第1046条)。この権利の行使期限は「遺留分を侵害していることを知った日から1年間」または「相続開始から10年間」です。代襲相続人もこの期限内に請求する必要があります。

代襲相続が発生しやすいケースと早期発見のポイント

代襲相続は、実際の相続の場面ではさほど珍しくありません。特に以下のようなケースで発生しやすいため、思い当たる場合は早めに戸籍を確認しておくことをお勧めします。

ケース①:被相続人が高齢で亡くなった

90代・100代で亡くなった場合、子供がすでに70〜80代で先に亡くなっているケースが増えています。孫・ひ孫への代襲相続が発生しやすい状況です。

ケース②:家族と長期間疎遠だった

10年以上家族と連絡を取っていなかった場合、相続人が亡くなっていることを知らないまま相続が開始するケースがあります。まず戸籍を取って確認することが重要です。

ケース③:事故や病気で相続人が若くして亡くなった

交通事故や病気等で相続人が若くして亡くなっていた場合。その子(孫)が代襲相続人となり、孫が未成年のケースも多いです。特別代理人の選任が必要になることがあります。

ケース④:兄弟姉妹が多く、すでに一部が亡くなっている

兄弟姉妹の多い家庭で相続が開始した場合、複数の兄弟が先に亡くなっており、甥・姪が多数の代襲相続人になるケースがあります。遺産分割協議が複雑になりやすいです。

早期発見のポイント:相続開始直後に戸籍収集を

代襲相続が発生しているかどうかを確認する最善の方法は、被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本を最初に収集することです。本籍地が移転している場合は、複数の市区町村から収集する必要があります。戸籍謄本を読むと、どの相続人が亡くなっているか、その子がいるかどうかが判明します。戸籍の読み方がわからない場合は、司法書士に収集・解読を依頼することができます(費用は数万円〜)。早期に相続人を確定させることが、後のトラブルを防ぐ最大の対策です。

代襲相続を専門家に依頼する場合の費用の目安

専門家 主な業務 費用の目安 代襲相続での役割
司法書士 不動産登記・戸籍収集・遺産分割協議書作成 10万〜30万円程度 戸籍調査・代襲関係の確認・登記手続きに強い
弁護士 調停・審判・相続人間のトラブル解決 30万〜100万円以上 代襲相続人が多数・疎遠・争いがある場合に依頼
税理士 相続税申告・税額計算・節税対策 遺産額の0.5〜1%程度 代襲相続人の2割加算・遺留分の税務処理
行政書士 遺産分割協議書作成・戸籍収集 5万〜15万円程度 比較的シンプルな代襲相続案件の書類整備
相続診断士 相談・方向性のアドバイス・専門家紹介 相談料:1万円程度 「どの専門家に頼むべきか」判断の入口として活用

よくある質問(Q&A)

Q. 相続人が先に亡くなっていたことを後から知りました。すでに遺産分割協議をしてしまったのですが、どうなりますか?

A. 代襲相続人を除いて行われた遺産分割協議は、原則として無効となります(相続人全員が参加していない協議は無効)。代襲相続人の存在が判明した場合は、その人も含めて遺産分割協議をやり直す必要があります。すでに預金の払い戻しや不動産の名義変更を済ませてしまっている場合は、代襲相続人に対して不当利得返還請求をされるリスクがあります。早急に弁護士に相談することをお勧めします。なお、代襲相続人の存在を知らなかった場合でも法的効力はなく、善意を主張することはできません。このようなリスクを避けるためにも、相続手続きの最初に全戸籍謄本を収集して相続人を確定させることが非常に重要です。

Q. 代襲相続人が相続放棄をしたい場合はどうすればいいですか?

A. 代襲相続人も通常の相続人と同様に、相続放棄をすることができます。家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出することで相続放棄が完了します。期限は「相続の開始を知った日から3か月以内」(民法915条)です。ただし、代襲相続人が相続放棄をした場合、その代襲相続人の子はさらに代襲相続人になれません(相続放棄は代襲相続の原因にならないため)。また、被代襲者(先に亡くなった相続人)が相続放棄をしていた場合と、代襲相続人自身が相続放棄する場合では法律上の扱いが異なります。前者は代襲相続が発生しませんが、後者は代襲相続人が相続権を持った上で放棄するという違いがあります。複雑なケースは司法書士・弁護士に相談することをお勧めします。

Q. 兄弟姉妹が亡くなっている場合、その配偶者(義兄・義姉など)は代襲相続人になれますか?

A. いいえ、なれません。代襲相続人になれるのは「直系卑属(子・孫・ひ孫等)」のみです(民法第887条・889条)。兄弟姉妹が亡くなっている場合、代襲相続人になれるのはその子(甥・姪)であり、亡くなった兄弟の配偶者(義兄・義姉)は法定相続人にも代襲相続人にもなりません。ただし、遺言書によって義兄・義姉に遺産を遺贈することは可能です(法定相続人でなくても遺贈の受遺者にはなれます)。「義姉には本当に世話になったから財産を残したい」という場合は、生前に遺言書を作成しておくことをお勧めします。

Q. 代襲相続が発生すると、相続手続きにはどのくらい時間がかかりますか?

A. 代襲相続が発生している場合、通常よりも時間がかかることが多いです。被相続人と被代襲者の両方の戸籍収集・代襲相続人全員の特定・遺産分割協議の実施・必要書類の収集と、通常の相続に比べてステップが増えます。標準的な目安としては、専門家に依頼した場合で3か月〜6か月程度かかることが多いです。代襲相続人が多数いる場合・海外在住の方がいる場合・相続財産が複雑な場合は、さらに時間がかかる場合があります。相続税の申告期限(10か月以内)を超えないよう、被相続人が亡くなったらすぐに専門家に相談し、スケジュールを立てることが重要です。代襲相続が絡む案件は手続きが複雑なため、早期の専門家への相談が非常に有効です。

Q. 代襲相続と「数次相続」は何が違いますか?

A. 代襲相続と数次相続は混同されやすいですが、発生する状況が異なります。代襲相続は、被相続人が亡くなった時点(相続開始時点)ですでに相続人が先に亡くなっていた場合に発生します。一方、数次相続は、相続が開始した後に相続人が亡くなった場合に発生します(例:父が亡くなり遺産分割協議中に長男も亡くなった)。代襲相続では被代襲者は「相続権を取得する前に」亡くなっており、数次相続では相続人が「相続権を取得した後に」亡くなっています。手続き上の扱いが異なるため、どちらのケースかを正確に判断することが重要です。判断が難しい場合は司法書士に相談することをお勧めします。

この記事のまとめ

代襲相続のまとめ

  • 代襲相続とは、相続人が被相続人より先に亡くなっていた場合に、その子・孫が代わりに相続する制度(民法887条・889条)
  • 発生するのは「死亡・相続欠格・廃除」の3ケース。相続放棄した場合は代襲相続は発生しない
  • 子(直系卑属)の代襲は何代でも続く(孫→ひ孫→玄孫…)が、兄弟姉妹の代襲は1代(甥・姪)のみ
  • 代襲相続人の相続分は被代襲者の相続分をそのまま引き継ぐ。代襲相続人が複数いれば均等に按分
  • 子の代わりに孫が代襲相続した場合、相続税の「2割加算」は適用されない。甥・姪の場合は2割加算あり
  • 養子縁組前に生まれた養子の子は、原則として代襲相続人になれない点に注意
  • 代襲相続が発生している場合は、被相続人・被代襲者・代襲相続人全員の戸籍が必要で、書類収集が複雑になる
  • 代襲相続人が未成年の場合、親権者が代わりに協議に参加するが、利益相反がある場合は特別代理人の選任が必要
  • 代襲相続人を含まずに行った遺産分割協議は無効となるため、最初に全相続人を確定させることが重要
  • 代襲相続と数次相続は異なる制度。相続開始前に相続人が死亡→代襲相続、相続開始後に相続人が死亡→数次相続
  • 手続きが複雑なため、代襲相続が発生していることが判明したら早めに司法書士・弁護士に相談することを強くお勧めする

代襲相続は、一見わかりにくい制度ですが、相続実務では決して珍しくありません。特に、被相続人が高齢で亡くなった場合や、長期間家族と疎遠だった場合に発生しやすいです。戸籍を丁寧に調査することで代襲相続の有無を確認し、全相続人が揃った上で遺産分割協議を行うことが、後のトラブルを防ぐ最善策です。相続手続き全般の流れはこちらの記事でも確認できます。専門家への相談についてはこちらをご参照ください。

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