相続手続き中に知っておきたい法律用語まとめ|わかりやすく元銀行員AFPが解説

相続手続き

LEGAL TERMS GUIDE

相続手続き中に知っておきたい
法律用語まとめ

50用語以上をわかりやすく解説|元銀行員AFP田中由美

「相続放棄」「代襲相続」「遺留分」――役所や専門家の説明に出てくる言葉が難しくて、話を聞きながら「わかったふり」をしてしまった経験はありませんか?相続手続きは、言葉の意味を誤解したまま進めると、後から取り返しのつかない損失につながることがあります。たとえば「単純承認」と「限定承認」の違いを知らずに動いてしまい、多額の借金を引き受けることになったケースも珍しくありません。この記事では、相続手続きで実際によく使われる50以上の法律用語を、元銀行員AFP田中由美が実例を交えてひとつひとつ丁寧に解説します。難しい法律の言葉を「自分ごと」として理解できるよう、わかりやすい言葉でまとめました。

この記事でわかること

  • 相続人・被相続人・代襲相続など「人」に関する用語10語
  • 遺産・特別受益・寄与分など「財産」に関する用語10語
  • 遺言・遺贈・死因贈与など「遺言・意思表示」に関する用語10語
  • 相続放棄・遺産分割協議など「手続き・法律」に関する用語15語
  • 路線価・小規模宅地等の特例など「不動産・税務」に関する用語10語
  • 各用語の関連条文・実例・注意点

この記事をお読みになる前に

本記事の情報は2026年4月時点のものです。法改正・税制改正により内容が変わる場合があります。個別の判断は必ず専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。

相続人に関する用語(10語)

相続手続きの第一歩は「誰が相続人なのか」を確定することです。ここでは、相続人をめぐる基本的な用語を10語解説します。

相続関連書類と法律用語の解説イメージ

① 相続人(そうぞくにん)

一行説明:被相続人の財産を受け継ぐ権利を持つ人のこと。

相続人には、法律で定められた「法定相続人」と、遺言によって指定された「指定相続人」があります。法定相続人の範囲と順位は民法で厳格に定められており、配偶者は常に相続人となり、子・直系尊属・兄弟姉妹の順番で相続権が発生します。相続人を正しく把握しないと遺産分割協議が無効になることもあるため、戸籍謄本による確認が必須です。

関連条文:民法887条・889条・890条

② 法定相続人(ほうていそうぞくにん)

一行説明:民法の規定により相続権が認められる人のこと。

法定相続人の範囲は「配偶者・子(第1順位)」「直系尊属(第2順位)」「兄弟姉妹(第3順位)」の順で決まります。上位の相続人がいる場合、下位の人には相続権が生じません。なお、法定相続人の数は相続税の基礎控除額の計算にも直接関わるため、誰が法定相続人になるかを正確に把握することは税務上も重要です。

関連条文:民法887条〜890条

③ 被相続人(ひそうぞくにん)

一行説明:亡くなって財産を遺した人のこと。

「被相続人」とは、相続の起点となる故人のことです。相続は被相続人の死亡によって開始し(民法882条)、被相続人が保有していた財産・権利・義務がすべて相続の対象となります。銀行や役所の手続き書類では「亡くなった方」と表記されることも多いですが、法律文書では必ず「被相続人」と記載します。

関連条文:民法882条・896条

④ 代襲相続(だいしゅうそうぞく)

一行説明:相続人が先に亡くなっていた場合、その子が代わりに相続すること。

たとえば、父が亡くなった時に長男がすでに死亡していた場合、長男の子(孫)が長男の代わりに相続します。これを「代襲相続」といい、代わりに相続する人を「代襲相続人」と呼びます。子の代わりに孫が相続する場合を「代襲」、さらに孫も亡くなっていてひ孫が相続する場合を「再代襲」といいます。兄弟姉妹の代襲相続は1代限りで、甥・姪まで認められますが、その子(はとこ)には認められません。

関連条文:民法887条2項・3項・889条2項

⑤ 数次相続(すうじそうぞく)

一行説明:遺産分割が終わらないうちに相続人も亡くなり、相続が重なること。

たとえば、父が亡くなって遺産分割協議をしていた最中に、今度は母も亡くなってしまった場合、父の相続と母の相続が同時に発生した状態になります。これを「数次相続」といいます。数次相続では相続関係が複雑になり、相続人の確定や遺産分割協議がより難しくなります。早めに専門家へ相談することが重要です。

関連条文:民法882条・898条(相続開始の時期と遺産共有)

⑥ 相続欠格(そうぞくけっかく)

一行説明:法律上の重大な違反行為により、相続権を自動的に失うこと。

民法891条は、被相続人や他の相続人を故意に死亡させた、または遺言書を偽造・変造・破棄した場合などに、相続権を剥奪する「相続欠格」を定めています。相続欠格は、家庭裁判所の審判などを経ることなく、法律上当然に効力が生じます(自動的に相続権を失う)。欠格事由がある者は、遺贈も受けることができません。

関連条文:民法891条

⑦ 相続廃除(そうぞくはいじょ)

一行説明:被相続人の意思と家庭裁判所の審判により、特定の相続人を排除すること。

相続欠格が法律上自動的に発生するのに対し、「相続廃除」は被相続人が家庭裁判所に申し立てを行い、審判・調停によって相続権を失わせる制度です。虐待・侮辱・重大な非行などが廃除事由となります(民法892条)。遺言書に廃除の意思を記載し、遺言執行者が手続きを行うこともできます(同893条)。

関連条文:民法892条・893条

⑧ 相続資格の喪失(そうぞくしかくのそうしつ)

一行説明:相続欠格・廃除・放棄によって相続権を失った状態の総称。

相続人が相続権を失う場合には、①相続欠格(法律上自動的)、②相続廃除(家庭裁判所の審判)、③相続放棄(家庭裁判所への申述)の3つのルートがあります。いずれの場合も、その人はもとから相続人でなかったとみなされ、代襲相続の対象となる場合があります(放棄の場合は代襲相続は発生しません)。

関連条文:民法891条・892条・939条

⑨ 包括受遺者(ほうかつじゅいしゃ)

一行説明:遺言によって遺産全体の一定割合(例:3分の1)を受け取る人のこと。

遺言で「財産の3分の1を○○に与える」と指定された場合、その人が「包括受遺者」です。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するとされ(民法990条)、遺産分割協議にも参加します。プラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金)も割合に応じて承継する点に注意が必要です。

関連条文:民法990条

⑩ 特定受遺者(とくていじゅいしゃ)

一行説明:遺言によって特定の財産(例:自宅の土地)を受け取る人のこと。

「自宅の土地・建物を長男に遺贈する」のように、特定の財産を指定して受け取る人を「特定受遺者」といいます。包括受遺者と異なり、特定受遺者は相続債務(借金)を引き受けません。また、特定受遺者は遺産分割協議に参加する必要がなく、遺言執行者から直接引き渡しを受けることができます。

関連条文:民法964条・986条〜988条

財産・遺産に関する用語(10語)

「何が相続の対象になるのか」を理解することも重要です。財産・遺産に関する10語を解説します。

① 相続財産(そうぞくざいさん)

一行説明:被相続人が持っていた財産・権利・義務の総体のこと。

相続財産には、不動産・預貯金・有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金・未払い税金・保証債務などのマイナスの財産も含まれます。ただし、一身専属権(扶養請求権・慰謝料請求権の一部など)は相続の対象外です。また、死亡保険金・死亡退職金は受取人固有の財産であり、原則として相続財産に含まれません(みなし相続財産として相続税の計算対象にはなります)。

関連条文:民法896条・897条

② 積極財産(せっきょくざいさん)

一行説明:プラスの価値を持つ財産のこと(不動産・預貯金・株式など)。

積極財産とは、資産価値のある財産の総称です。土地・建物などの不動産、銀行預金、株式・投資信託などの有価証券、自動車・貴金属・美術品、売掛金・貸付金などの債権がこれにあたります。相続財産調査では、まず積極財産の全体像を把握してから、相続方法(単純承認・限定承認・放棄)を選択します。

関連条文:民法896条

③ 消極財産(しょうきょくざいさん)=負の財産

一行説明:マイナスの価値を持つ財産のこと(借金・未払い税金・保証債務など)。

消極財産(負の財産)とは、被相続人が抱えていた債務の総称です。銀行ローン・消費者金融の借入、クレジットカードの残債、未払いの税金・社会保険料、他人の借金の連帯保証人になっていた場合の保証債務などが含まれます。相続を単純承認した場合、消極財産もすべて引き継ぎます。消極財産が積極財産を上回る場合は、相続放棄や限定承認を検討すべきです。

関連条文:民法896条・920条(単純承認の効果)

④ みなし相続財産(みなしそうぞくざいさん)

一行説明:民法上の相続財産ではないが、相続税の計算上は相続財産とみなされるもの。

死亡保険金(生命保険の死亡保険金)や死亡退職金は、受取人固有の財産として民法上は相続財産に含まれません。しかし相続税の計算では、実質的に被相続人の財産とみなされ課税対象となります(相続税法3条)。ただし「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。みなし相続財産を把握していないと相続税の申告漏れになる危険があります。

関連条文:相続税法3条・12条

⑤ 特別受益(とくべつじゅえき)

一行説明:相続人の一部が生前に受けた贈与や遺贈のこと。公平な遺産分割のために考慮される。

「長男だけ生前に住宅購入資金500万円を贈与してもらった」というケースで、この500万円が「特別受益」にあたります。特別受益は遺産の先取りとみなされ、相続分の計算にあたって遺産に持ち戻し(加算)されます。これにより、特別受益を受けた相続人の相続分は減少します。ただし、被相続人が「持ち戻し免除の意思表示」をした場合は適用されません(民法903条3項)。

関連条文:民法903条

⑥ 寄与分(きよぶん)

一行説明:被相続人の財産形成・療養看護に特別な貢献をした相続人が、多めに受け取れる分のこと。

「長女が10年間、父の介護を無償で担ってきた」「長男が被相続人の事業を無給で手伝い、財産を増やした」という場合、その貢献分(寄与分)を相続財産から差し引いた上で法定相続分を計算し、さらにその人に寄与分を上乗せします。寄与分は相続人間の協議で決め、まとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判になります(民法904条の2)。

関連条文:民法904条の2

⑦ 特別寄与料(とくべつきよりょう)

一行説明:相続人以外の親族(たとえば長男の妻)が介護に貢献した場合に請求できる金銭。

2019年(令和元年)の民法改正で新設された制度です。たとえば、長男の妻が義父の療養看護に10年間貢献したにもかかわらず、妻は相続人ではないため寄与分を主張できませんでした。この問題を解消するために「特別寄与料」の制度が創設されました。相続人全員に対して金銭を請求できますが、相続開始と相続人を知った日から6ヶ月以内、または相続開始から1年以内に請求する必要があります(民法1050条)。

関連条文:民法1050条(2019年7月1日施行)

⑧ 遺産(いさん)

一行説明:被相続人が残した財産全体。「相続財産」とほぼ同義で使われることが多い。

一般的な会話では「遺産」は「故人の残した財産」を指し、「相続財産」とほぼ同じ意味で使われます。法律文書では「相続財産」が使われることが多く、「遺産」は「遺産分割協議」「遺産分割審判」など分割の文脈で使われる傾向があります。遺産には不動産・動産・金融資産・債権だけでなく、特許権・著作権なども含まれます。

関連条文:民法896条・906条

⑨ 遺留分(いりゅうぶん)

一行説明:法律が一定の相続人に保障する最低限の取り分のこと。

被相続人が遺言で「全財産を内縁の妻に」と書いた場合でも、子や配偶者などには最低限の相続分(遺留分)が保障されています。遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の場合は相続財産の3分の1、それ以外は2分の1です(民法1042条)。兄弟姉妹には遺留分はありません。遺留分を侵害された場合は「遺留分侵害額請求」ができます。

関連条文:民法1042条〜1049条

⑩ 遺留分侵害額(いりゅうぶんしんがいがく)

一行説明:遺留分を超えて侵害された金額。この金額を金銭で請求できる。

2019年(令和元年)7月施行の改正民法により、遺留分の権利は「遺留分侵害額請求権」(金銭債権)となりました。旧来の「遺留分減殺請求」では財産を現物で返還させることができましたが、改正後は金銭での支払いを求める形に一本化されました。請求期限は、相続開始と遺留分を侵害する遺贈・贈与を知った時から1年(相続開始から10年)です。

関連条文:民法1046条(2019年7月1日施行)

遺言・意思表示に関する用語(10語)

遺言に関する用語を正しく知ることで、遺言書の種類の違いや、効力の意味が理解しやすくなります。詳しくは遺言書の種類と違いを解説した記事もあわせてご参照ください。

① 遺言(いごん・ゆいごん)

被相続人が生前に自らの意思を書面等で表示しておく法律行為。遺言は遺言者が亡くなった時点で効力が発生します。「いごん」が法律上の正式な読み方ですが、「ゆいごん」も一般的に使われます。満15歳以上で意思能力があれば遺言できます(民法961条)。

民法961条・969条

② 遺言書(いごんしょ)

遺言の内容を記した書面のこと。法律上有効な遺言書の形式は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類に限られます。これら以外の形式(口頭・録音・動画など)は法的に無効です(民法967条)。

民法967条

③ 遺贈(いぞう)

遺言によって財産を他者に与えること。相続人以外(友人・法人・団体など)へも遺贈できます。受取人を特定して渡す「特定遺贈」と、一定割合で渡す「包括遺贈」があります(民法964条)。受贈者は遺贈を放棄することもできます。

民法964条・986条

④ 死因贈与(しいんぞうよ)

「私が死んだら○○をあなたにあげる」という、死を条件とした贈与契約のこと。遺贈と似ていますが、死因贈与は相手との契約であり、相手の同意が必要です。遺贈の規定が準用されます(民法554条)。書面不要ですが、実務上は書面化が推奨されます。

民法554条

⑤ 自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)

遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自ら手書きし、捺印した遺言書。費用がかからず手軽ですが、形式不備で無効になるリスクがあります。2020年から法務局での保管制度が始まり、保管した場合は家庭裁判所の検認が不要です(民法968条)。

民法968条

⑥ 公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)

公証人が遺言者の口述を聞いて作成する遺言書。2人以上の証人立ち会いが必要です。原本は公証役場に保管されるため偽造・紛失のリスクがなく、検認不要で最も信頼性が高い形式です。公証人手数料は遺産額により異なります(民法969条)。

民法969条

⑦ 秘密証書遺言(ひみつしょうしょいごん)

内容を秘密にしたまま、公証人に遺言書の存在だけを証明してもらう形式。遺言者が作成した封書を公証人・証人2名の前で封印します。内容の確認がなく、形式不備で無効になる場合も。実務上はあまり使われません(民法970条)。

民法970条

⑧ 遺言執行者(いごんしっこうしゃ)

遺言の内容を実現するために選任される人のこと。相続人、弁護士、司法書士などがなれます。遺言書で指定するか、家庭裁判所が選任します。遺言執行者が選任されると、相続人は単独で相続財産を処分できなくなります(民法1012条)。

民法1006条〜1021条

⑨ 遺言能力(いごんのうりょく)

有効な遺言をするために必要な意思能力のこと。満15歳以上であることが最低条件です(民法961条)。認知症などで判断能力が著しく低下している状態では遺言能力がないとみなされ、遺言が無効となる場合があります。遺言作成時の状態が問題とされるため、医療記録が証拠になることも。

民法961条・963条

⑩ 条件付き遺贈(じょうけんつきいぞう)

「○○大学を卒業したら」「独立して起業したら」などの条件を付けた遺贈のこと。条件が成就した時点で効力が生じる「停止条件付き遺贈」と、条件が不成就の時点で効力が消える「解除条件付き遺贈」があります(民法985条2項)。

民法985条2項・1001条

手続き・法律に関する用語(15語)

相続手続きを進める上で必ず出てくる「手続き用語」を15語まとめました。相続手続きの流れと一緒に確認すると理解が深まります。

用語 一行説明 期限 関連条文
単純承認 プラスもマイナスも含めてすべての財産を無条件に相続すること 3ヶ月以内に意思表示なければ自動的に単純承認 民法920条・921条
限定承認 プラスの財産の範囲内でのみ借金を引き継ぐ相続方法 相続開始を知った日から3ヶ月以内 民法922条〜937条
相続放棄 相続権をまったく放棄すること。家庭裁判所への申述が必要 相続開始を知った日から3ヶ月以内 民法938条〜940条
遺産分割協議 相続人全員で遺産の分け方を話し合うこと 法定期限なし(相続税申告は10ヶ月) 民法907条
遺産分割協議書 遺産分割の合意内容を記した書面。不動産登記や預金解約に必要 — 民法907条
調停 家庭裁判所で調停委員を交えて話し合いにより解決を図る手続き — 家事事件手続法244条
審判 調停が不成立の場合、家庭裁判所が職権で分割方法を決定すること — 家事事件手続法39条
相続登記 不動産の名義を相続人に変更する手続き。2024年4月から義務化 相続開始を知った日から3年以内(義務) 不動産登記法76条の2
法定相続情報証明制度 法務局が相続関係を証明する一覧図を発行する制度。戸籍謄本の束が不要に — 不動産登記規則247条
相続財産清算人 相続人が全員放棄した場合などに家庭裁判所が選任する管理人 — 民法952条
相続税申告 相続税がかかる場合に税務署へ申告・納付する手続き 相続開始を知った日から10ヶ月以内 相続税法27条
準確定申告 被相続人の死亡した年の所得について、相続人が行う確定申告 相続開始を知った日から4ヶ月以内 所得税法125条
名義変更 預貯金・株式・不動産などの所有者名を相続人名義に変更すること 各機関の定める期限による 各法令・規則による
戸籍謄本 戸籍に記載された全員の情報を写した書類。相続人確定に必須 — 戸籍法10条
遺産管理人 相続人がいない・不明な場合に家庭裁判所が選任する管理者 — 民法936条・952条

不動産・税務に関する用語(10語)

相続税の申告や不動産の評価で必ず登場する専門用語です。特に「小規模宅地等の特例」は節税に大きく関わるため、しっかり確認しておきましょう。

① 相続税評価額

相続税の計算に用いる財産の評価額。市場価格とは異なります。不動産は路線価方式または倍率方式で算出します。評価額が低いほど相続税の負担が軽くなるため、適切に評価額を算定することが重要です。

財産評価基本通達

② 路線価(ろせんか)

道路(路線)に面した土地の1㎡あたりの評価額。国税庁が毎年7月に公表します。相続税・贈与税の土地評価に使います。公示価格の約80%水準が目安で、路線価図は国税庁ウェブサイトで無料公開されています。

財産評価基本通達11〜20

③ 固定資産税評価額

市町村が固定資産税の課税目的で算定する評価額。3年ごとに見直されます。路線価がない地域(倍率地域)の土地評価に使います。公示価格の約70%水準が目安で、固定資産税の納税通知書で確認できます。

地方税法349条

④ 取得費加算(とくひかさん)

相続した財産を相続税申告期限から3年以内に譲渡した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例。売却時の所得税を軽減できます。申告期限は売却年の翌年3月15日です。

租税特別措置法39条

⑤ 小規模宅地等の特例

被相続人が住んでいた自宅の土地(330㎡まで)を配偶者や同居の子が相続した場合、相続税評価額を最大80%減額できる特例。適用条件(同居要件・保有期間など)が細かいため事前確認が必要です。

租税特別措置法69条の4

⑥ 基礎控除(きそこうじょ)

相続税の課税遺産総額から差し引ける金額。計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。この金額以下であれば相続税は発生しません。法定相続人が多いほど基礎控除額が増えます。

相続税法15条

⑦ 配偶者控除(はいぐうしゃこうじょ)

配偶者が取得した遺産のうち「1億6,000万円」または「法定相続分」のいずれか多い金額までは相続税がかからない制度。ただし二次相続(配偶者が亡くなった時)への影響も考慮した上で活用を判断することが重要です。

相続税法19条の2

⑧ 贈与税(ぞうよぜい)

生前に財産を贈与された場合にかかる税金。年間110万円の基礎控除があります。相続対策として生前贈与を活用する場合、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されます(2024年1月以降の贈与から段階的に適用拡大)。

相続税法21条の2・21条の5

⑨ 生前贈与(せいぜんぞうよ)

被相続人が生きているうちに財産を渡すこと。相続税の節税対策として使われますが、相続開始前7年以内の贈与(2024年1月以降の贈与から適用拡大)は相続財産に持ち戻しが必要です。早期からの計画が重要です。

相続税法19条

⑩ 死亡保険金の非課税枠

相続人が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。この範囲内は相続税の課税対象外です。受取人が相続人以外の場合は非課税枠が適用されません。生命保険を上手に活用することで相続税の負担を軽減できます。

相続税法12条1項5号

田中由美の銀行員時代の実体験

ある金曜日の夕方、60代の男性がひとりで窓口にいらっしゃいました。「母が先月亡くなって、通帳の名義変更に来たんですが……」と言いながら、分厚い書類の束を取り出されました。その中に見慣れない書類が混ざっていて、よく見ると「限定承認」の申述書のコピーでした。

「お母様は多くのご資産をお持ちだったんですね」と伺うと、男性は首を振りながら「実は借金があったんです。消費者金融から合計300万円。でも家も土地もあって、どちらが多いかわからなくて」とおっしゃいました。弁護士に相談して限定承認を選んだとのことで、その判断は正しかったと思います。でも手続きが複雑で、申述の締め切りまでに相続人全員の合意を取るのが大変だったと、疲れ果てた顔でおっしゃっていました。

この時、「用語の意味さえ最初からわかっていれば、もう少し早く専門家に相談できたのに」と強く感じました。「限定承認」「単純承認」の言葉を聞いた瞬間に「これは自分でできる話ではない」と判断できていたら、時間も労力も節約できたはずです。

相続用語について専門家に確認する日本人のイメージ

よく混同される用語の違い早見表

混同しやすいペア A の特徴 B の特徴 覚え方のポイント
相続欠格 vs 相続廃除 法律上自動的に発生(家裁不要) 被相続人の申立て+家裁の審判が必要 欠格=自動、廃除=申立て
代襲相続 vs 数次相続 相続人が先に死亡(相続前に死亡) 相続人が後から死亡(遺産分割未了のまま) 前に死んだ→代襲、後で死んだ→数次
特別受益 vs 寄与分 生前にもらいすぎた→相続分を減らす 貢献しすぎた→相続分を増やす 受益=引く、寄与=足す
遺贈 vs 死因贈与 遺言による一方的な意思表示 相手との契約(双方の同意が必要) 遺贈=単独、死因贈与=契約
限定承認 vs 相続放棄 プラスの範囲内でマイナスも引き継ぐ プラスもマイナスもすべて放棄する 限定承認=プラス内、放棄=ゼロ
包括受遺者 vs 特定受遺者 割合指定(遺産全体の○分の1) 財産指定(○の土地を渡す) 包括=割合、特定=個別財産
寄与分 vs 特別寄与料 相続人が主張できる(相続人限定) 相続人以外の親族が請求できる 寄与分=相続人、特別寄与料=それ以外
相続財産 vs みなし相続財産 民法上の相続財産(遺産分割対象) 相続税計算上だけ財産とみなすもの 保険金・退職金はみなし相続財産

手続きのタイミングと期限一覧

用語が実際の相続手続きのどのタイミングで登場するかを整理しました。相続手続きの全体の流れと合わせて確認してください。

時期 主な手続き この時期に出てくる用語
〜1週間 死亡届・葬儀の手配 被相続人・みなし相続財産(保険金請求)
〜1ヶ月 遺言書の確認・相続人の確定 遺言書・公正証書遺言・法定相続人・代襲相続・戸籍謄本
〜3ヶ月 相続財産の調査・承認または放棄の選択 積極財産・消極財産・単純承認・限定承認・相続放棄・相続欠格・相続廃除
〜4ヶ月 準確定申告 準確定申告・相続財産清算人
〜10ヶ月 遺産分割協議・相続税申告 遺産分割協議・遺産分割協議書・特別受益・寄与分・特別寄与料・調停・審判・相続税評価額・路線価・基礎控除・配偶者控除・小規模宅地等の特例
10ヶ月〜 名義変更・登記・遺留分請求 相続登記・法定相続情報証明制度・名義変更・遺留分・遺留分侵害額・取得費加算

よくある質問

Q. 相続欠格と相続廃除はどちらが重いですか?

どちらも相続権を失わせる点では同じですが、性質が異なります。相続欠格は「故意に被相続人を傷つけた・遺言書を偽造した」など重大な違反行為に対して法律が自動的に発動するもので、裁判所への申立ては不要です。一方、相続廃除は被相続人の意思が必要で、「虐待を受けた」「重大な侮辱を受けた」などの事情を家庭裁判所が審判・調停で判断します。どちらも代襲相続の対象になりますが、相続放棄の場合は代襲相続が発生しない点も重要な違いです。

Q. 遺留分の請求期限を過ぎてしまいました。もう請求できませんか?

遺留分侵害額請求の消滅時効は「相続開始を知り、かつ遺留分を侵害する遺贈・贈与を知った時から1年」です。これを過ぎると時効で請求権は消滅します。ただし、相続開始から10年が経過していない場合は、相手方が時効を援用(主張)するまでは請求自体は可能です。時効かどうか微妙なケースは弁護士に相談してください。1年の期限はあくまで「知った時から」ですので、長期間気づかなかった場合は時効が進行していない可能性もあります。

Q. 相続放棄すると代襲相続は起きますか?

相続放棄の場合、代襲相続は発生しません。これは重要なポイントです。たとえば、長男が相続放棄をした場合、長男の子(孫)には相続権は移りません。一方、長男が「相続前に死亡していた」場合(代襲相続のケース)は、孫が相続人になります。相続放棄は「最初から相続人でなかった」とみなされるため、子への代襲が認められないのです。借金が多い場合に家族全員で放棄を検討する場合は、子の分も含めて手続きが必要なケースがあります。

Q. 「みなし相続財産」である死亡保険金は、遺産分割協議の対象になりますか?

なりません。死亡保険金は「受取人固有の財産」であり、民法上の相続財産(遺産)ではないため、遺産分割協議の対象外です。受取人として指定された人が直接保険会社から受け取ります。ただし相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象に含まれます(500万円×法定相続人数の非課税枠あり)。なお、受取人が「相続人」と指定されている場合は法定相続分に応じて分配されます。

Q. 特別寄与料はどのくらいの金額になりますか?

特別寄与料の金額は、療養看護に必要な行為・期間・財産の維持・増加との因果関係などを総合的に考慮して決まります。目安として、介護ヘルパーへの報酬相当額(日当×日数)を基準に算定されることが多いです。ただし「感謝の気持ち」や「精神的な寄与」では認められず、具体的な貢献内容を証明する必要があります。相続人全員との協議でまとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判になります。

Q. 「単純承認」は書類を提出しないとなれないのですか?

いいえ。単純承認は何もしなくても、相続開始を知った日から3ヶ月以内に限定承認・相続放棄の手続きをしなければ、自動的に単純承認したとみなされます(民法921条3号)。また、相続財産の一部を使った(預金を引き出したなど)場合も、法定単純承認(民法921条1号)として扱われます。借金があることを後から知った場合でも「すでに単純承認とみなされていた」というケースがよくあるため、相続開始後は早期に財産調査することが重要です。

用語を理解した後の次のステップ

法律用語の意味を把握した上で、次は具体的な手続きを確認しましょう。以下の記事が参考になります。

相続手続きの全体像

何をいつまでにやるべきかを時系列で把握できます。

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法定相続人とは?

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まとめ

この記事では、相続手続きで登場する50以上の法律用語を5つのカテゴリに分けて解説しました。

  • 相続人に関する用語(10語):法定相続人・代襲相続・相続欠格・相続廃除など
  • 財産・遺産に関する用語(10語):特別受益・寄与分・特別寄与料・遺留分など
  • 遺言・意思表示に関する用語(10語):遺贈・死因贈与・遺言執行者・遺言能力など
  • 手続き・法律に関する用語(15語):単純承認・限定承認・相続放棄・遺産分割協議など
  • 不動産・税務に関する用語(10語):路線価・小規模宅地等の特例・基礎控除など

用語の意味を理解していると、専門家との相談もスムーズになり、手続きのどのタイミングで何をすべきかを判断する力がつきます。特に「3ヶ月以内」「4ヶ月以内」「10ヶ月以内」という期限に関わる手続きは、用語の意味を誤解したまま放置すると取り返しのつかない結果になる場合があります。

わからない用語に出会ったら、この記事に戻って確認してください。相続手続きは一度だけ、慎重に進めるべき大切な手続きです。田中由美のサイト「はじめての相続」では、各手続きの詳しい解説記事も用意しています。ぜひ合わせてご活用ください。

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