著者より
銀行員として22年間働く中で、司法書士・税理士・弁護士・行政書士の皆さんと日々連携してきました。窓口に来るお客様が「どこに頼めばいいかわからなかった」と言う場面を何度も見てきました。ある70代のご夫婦は、相続税の申告が必要な案件を行政書士に依頼してしまい、後から税理士にやり直しを頼む羽目になりました。
最初から適切な専門家を選ぶことが、時間とお金の両方を節約する最短ルートです。この記事が、その選択の助けになれば嬉しいです。
田中 由美(AFP・相続診断士・元銀行員)
📌 この記事でわかること
- ✅ 司法書士・税理士・弁護士・行政書士それぞれの得意分野
- ✅ 相続の状況別「どの専門家に頼むか」の判断基準
- ✅ 各専門家に依頼したときの費用の目安
- ✅ 失敗しない専門家の選び方と相談前の準備
相続手続きを依頼できる専門家の一覧
相続に関わる専門家は大きく4種類。それぞれ法律で定められた業務範囲があり、他の専門家の業務を代行することはできません。まず全体像を把握しましょう。相続手続きの全体的な流れも合わせて確認すると、どのタイミングでどの専門家が必要かがイメージしやすくなります。
| 専門家 | 主な得意分野 | 費用の目安 | こんな場合におすすめ |
|---|---|---|---|
| 司法書士 | 不動産の相続登記・書類作成・法務局への申請代理 | 5〜15万円程度 | 不動産を相続する・登記名義を変更したい |
| 税理士 | 相続税申告・財産評価・節税対策 | 遺産総額の0.5〜1.5% | 相続税の申告が必要・財産の評価が複雑 |
| 弁護士 | 相続人間のトラブル解決・調停・訴訟 | 着手金10〜30万円〜 | 相続人間でもめている・遺留分を請求したい |
| 行政書士 | 書類作成・遺産分割協議書の作成・戸籍収集代行 | 3〜10万円程度 | 書類作成を代行したい・比較的シンプルな案件 |
重要:行政書士は相続税申告・法務局申請・訴訟代理はできません。それぞれ税理士・司法書士・弁護士の独占業務です。依頼前に業務範囲を確認しましょう。
司法書士に頼む場合
司法書士は不動産の相続登記と書類作成・法務局申請の代理が主な業務です。2024年4月から相続登記が義務化されたため、不動産を持つ方が亡くなった場合は必須の手続きになります。
また、戸籍収集の代行・遺産分割協議書の作成・法定相続情報一覧図の申請など、登記以外の相続書類全般を扱えます。相続人間に争いがない「円満な相続」であれば、司法書士一人で多くの手続きをまとめて依頼できます。
✅ こんな場合は司法書士へ
- 不動産の名義変更(相続登記)をしたい
- 戸籍収集・書類作成を代行してほしい
- 相続人間でもめていない
- 相続税申告が不要(基礎控除以下)
❌ 司法書士ではできないこと
- 相続税の申告(→税理士へ)
- 相続人間のトラブル解決(→弁護士へ)
- 遺産分割の交渉代理(→弁護士へ)
💰 司法書士費用の目安
| 業務内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 相続登記(不動産1件・土地+建物) | 5〜10万円程度 |
| 遺産分割協議書の作成 | 3〜5万円程度 |
| 戸籍収集・法定相続情報一覧図の作成 | 2〜4万円程度 |
| 相続手続き一式(登記・協議書・戸籍) | 10〜20万円程度 |
※ 不動産の評価額・件数・複雑さにより変動します。複数の事務所に見積もりを取ることをおすすめします。
税理士に頼む場合
税理士は相続税の申告と財産評価が専門です。相続税の申告は相続開始から10ヶ月以内という期限があり、計算が複雑なため専門家への依頼が現実的です。
重要なのは、相続税に詳しい税理士を選ぶことです。税理士は会計・法人税など専門が分かれており、相続税の経験が少ない税理士に依頼すると、適用できた控除や特例を見落とすリスクがあります。「相続税申告の実績が年間〇件」などを事前に確認しましょう。
✅ こんな場合は税理士へ
- 遺産総額が基礎控除を超える
- 不動産・株式など評価が複雑な財産がある
- 小規模宅地の特例・配偶者控除を使いたい
- 税務調査が不安
💰 税理士費用の目安
- 遺産総額の0.5〜1.5%が相場
- 5,000万円の遺産なら25〜75万円程度
- 申告書作成込みで30〜80万円程度
- 加算税・延滞税は回避で元が取れる
注意:相続税の申告期限(10ヶ月)を過ぎると無申告加算税が発生します。申告が必要かどうか迷う場合は、早めに税理士に相談することが重要です。初回相談無料の事務所も多くあります。
弁護士に頼む場合
弁護士が必要になるのは、相続人間でトラブルが発生した場合です。遺産の取り分を巡る争い、遺言書の無効を主張する場合、遺留分の請求など、法的な交渉や調停・訴訟が必要な局面は弁護士の独占業務です。
逆に言えば、相続人間で合意が取れている「円満相続」では弁護士は不要です。弁護士費用は高額になるケースが多いため、トラブルがない場合は司法書士や税理士で対応しましょう。
✅ こんな場合は弁護士へ
- 相続人間で遺産分割の合意ができない
- 遺言書の内容を争いたい
- 遺留分を請求・または請求された
- 相続放棄の申述手続きで争いがある
- 相続人の行方がわからず法的手続きが必要
💰 弁護士費用の目安
- 相談料:5,000〜10,000円/時間
- 着手金:10〜30万円程度(事案による)
- 報酬金:回収額の10〜20%程度
- 調停・訴訟は長期化で費用増加の可能性
行政書士に頼む場合
行政書士は書類作成の専門家です。戸籍収集の代行・遺産分割協議書の作成・自動車の名義変更など、比較的シンプルな相続手続きを低コストで依頼できます。
行政書士に依頼できること・できないこと
✅ できること
- 戸籍収集の代行
- 遺産分割協議書の作成
- 自動車・預金口座の手続き書類作成
- 相続関係説明図の作成
❌ できないこと
- 相続税申告(→税理士)
- 不動産登記申請(→司法書士)
- 裁判所への申請・調停(→弁護士)
- 相続人間の交渉代理(→弁護士)
ケース別おすすめ専門家
実際の相続では、複数の専門家が連携するケースも多くあります。以下の早見表を参考に、まず「誰に最初に相談するか」を決めましょう。相続発生直後にやることと合わせて確認すると、スムーズに動けます。
失敗しない専門家の選び方
専門家の種類を選んだ後は、個々の事務所の選び方が重要です。同じ司法書士でも、相続の経験量や対応の質は大きく異なります。
✅ 良い専門家のサイン
- 相続案件の実績・件数が明示されている
- 初回相談が無料または低コスト
- 費用の内訳を明確に説明してくれる
- 相談時に質問に丁寧に答えてくれる
- 他の専門家との連携ネットワークがある
⚠️ 注意が必要なサイン
- 費用の見積もりを出し渋る
- 「全部任せてください」と言うだけで説明が少ない
- 相続専門の実績が不明確
- 高額な着手金を最初から要求する
- 質問に対して曖昧な回答しかしない
💡 相談前に準備しておくこと
- 相続人の関係図(家族構成)を書き出しておく
- 財産の大まかなリスト(不動産・預金・株の有無)を把握する
- 遺言書の有無を確認しておく
- 相続人全員の連絡先を把握しておく
- 費用の上限感を決めておく(複数見積もりで比較)
よくある質問
ONE-STOP SOLUTION
税理士・司法書士・弁護士を自分で選ぶのは大変…と感じた方へ
相続では士業の分業が必要ですが、別々に探して連携を取るのは想像以上の労力。相続専門チームが同じ窓口で全て対応するワンストップサービスを、68万円〜の明瞭料金で提供する選択肢があります。
まとめ
相続手続きをどの専門家に頼むかは、相続の内容によって異なります。間違った専門家に依頼すると、断られる・やり直しが必要になるといったロスが生まれます。
- 不動産の相続登記→ 司法書士
- 相続税の申告→ 相続税専門の税理士
- 相続人間のトラブル・遺留分請求→ 弁護士
- 書類作成代行(シンプルな案件)→ 行政書士
- 不動産+相続税申告の両方→ 司法書士+税理士の連携
最初の一歩として、自分の状況(不動産の有無・遺産総額・相続人の関係性)を整理してから相談に行くと、専門家もスムーズに対応できます。初回相談は無料の事務所も多いので、複数の専門家に話を聞いて比較することをおすすめします。

