生前贈与加算の改正(2024年〜)何が変わった?|7年ルールへの対応策を元銀行員AFPが解説

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生前対策・贈与 | 生前贈与加算の改正

生前贈与加算の改正(2024年〜)
何が変わった?7年ルールへの対応策

3年から7年への延長で暦年贈与の効果はどう変わる?影響と具体的な対応策を完全解説。

「暦年贈与で毎年110万円を贈ってきたのに、2024年から7年分が相続財産に戻るって本当?」「いつから始まったの?うちの場合は影響がある?」「改正後も暦年贈与を続ける意味はある?」——2024年1月1日から生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長されました。改正の内容・影響・具体的な対応策を、元銀行員AFP田中由美が丁寧に解説します。

著者:田中由美より

銀行員時代、「毎年110万円ずつ贈与してきたから相続税は大丈夫」とおっしゃるお客様に、改正内容をご説明する場面が増えました。改正前は亡くなる前3年以内の贈与しか相続財産に加算されませんでしたが、2024年以降は7年に延長されています。ただし、段階的な適用があり、2031年以降に亡くなった場合に初めて「7年分フル適用」になります。「じゃあすぐに影響がないから大丈夫」と安心する前に、今後10年・20年のスパンで贈与計画を見直しておくことが大切です。この記事が、改正の全体像と今すぐ取れる対策を理解するきっかけになれば嬉しいです。

生前贈与加算とは?まず基本から確認しよう

「生前贈与加算」とは、相続が発生したとき(被相続人が亡くなったとき)、亡くなる直前に行われた贈与を相続財産に加算して相続税を計算する仕組みです。これがなければ、亡くなる直前に大量の財産を贈与して相続税をゼロにするという「駆け込み贈与」が横行してしまいます。それを防ぐための制度が生前贈与加算です。2023年以前は「亡くなる前3年以内の贈与」が加算対象でしたが、2024年1月1日以降の贈与から段階的に対象期間が7年に延長されることになりました。

加算対象になる贈与の条件

  • 相続や遺贈で財産をもらった人への贈与
  • 亡くなる前の一定期間内(改正前:3年、改正後:7年)の贈与
  • 暦年課税による贈与が対象(精算課税は別ルール)

加算されない場合

  • 相続財産をもらわなかった人(相続放棄した人等)への贈与は加算されない
  • 住宅取得資金・教育資金・結婚子育て資金の非課税特例を使った贈与は別途検討が必要
  • 延長した4〜7年前の贈与には100万円の控除あり(改正の緩和措置)

加算されると何が起きる?

贈与財産が相続財産に加わるため、相続税の計算基礎が増加し、相続税額が増える。一方、すでに支払った贈与税がある場合は相続税から控除されるため二重課税にはならない。

生前贈与加算と相続時精算課税の違い

生前贈与加算は暦年課税の贈与に適用されるルール。相続時精算課税を選択した場合は、この7年ルールではなく、精算課税の特別ルール(全額を相続財産に合算)が適用される。制度の選択が重要。

生前贈与加算の7年ルールを示すタイムラインのイメージ

2024年改正の内容:3年から7年に何が変わったか

2024年1月1日以降の贈与から、生前贈与加算の対象期間が「亡くなる前3年以内」から「亡くなる前7年以内」に延長されました。ただし、いきなり全員に7年が適用されるわけではありません。段階的な移行期間が設けられており、亡くなった年によって加算対象期間が異なります。以下の表で具体的に確認しましょう。

亡くなった時期 加算対象となる贈与期間 最大加算年数 備考
〜2023年12月31日 亡くなる前3年以内の贈与 3年 改正前ルール
2024年〜2026年 2024年1月1日以降の贈与のうち亡くなる前3年以内 最大3年 移行期(改正の影響小)
2027年〜2030年 2024年1月1日以降の贈与のうち亡くなる前の一定期間 3〜6年(移行) 段階的に延長
2031年1月1日以降 亡くなる前7年以内の贈与すべて 7年(フル適用) ただし4〜7年前の100万円控除あり

重要なポイントは、2024年1月1日以降の贈与が対象になるという点です。2023年12月31日以前の贈与は何年分あっても加算されません。つまり現時点(2026年)では、2024年・2025年の贈与のみが対象です。フル適用(7年分)になるのは2031年以降に亡くなった場合からです。

緩和措置:延長した4〜7年前の贈与には100万円控除

改正で一気に7年に延長されることへの緩和措置として、「延長された4年分(亡くなる前4〜7年以内の贈与)については、贈与額から総額100万円を控除した額を加算する」という特例が設けられました。この100万円控除は4〜7年の合計額に対して適用されます。

【100万円控除の仕組みを具体例で理解する】

例:2031年以降に亡くなった場合(7年フル適用)で、毎年110万円の暦年贈与を7年間続けていたケース

  • 直前3年以内の贈与:110万円×3年=330万円 → 全額加算
  • 4〜7年前の贈与:110万円×4年=440万円 → 440万円-100万円=340万円を加算
  • 合計加算額:330万円+340万円=670万円(改正前は330万円)

→ 改正前より340万円多くが相続財産に加算される計算

この100万円控除は、毎年の贈与が少額(25万円以下)であれば実質的に加算される金額をゼロにできる可能性があります。ただし110万円の贈与を続けた場合は上記のとおり加算額が増加します。暦年贈与を継続する際は、この100万円控除を意識した計画が重要です。

改正が暦年贈与(年110万円)の効果に与える影響

「7年に延長されたなら、暦年贈与を続ける意味がなくなった?」という疑問が多く寄せられます。結論としては、暦年贈与の有効性は変わらず、長期的に続ければ続けるほど節税効果は大きくなります。ただし、亡くなる直前の数年間の贈与は相続財産に戻ってしまうため、早めに・長期的に行うことの重要性が増しました。

贈与継続年数 総贈与額 加算される金額(2031年以降死亡) 相続財産から外れる金額
5年間 550万円 550万円(全額) 0円
10年間 1,100万円 670万円(3年分330万円+4年分340万円) 430万円
15年間 1,650万円 670万円 980万円
20年間 2,200万円 670万円 1,530万円

上表のとおり、7年を超えて贈与を続けた場合、加算されるのは「常に直近7年分(最大670万円)」だけです。8年目以降の贈与は相続財産から完全に外れるため、長期間続けるほど節税効果は大きくなります。ポイントは「7年では効果が出にくい、8年以上続けてこそ意味が出る」と覚えておくことです。できるだけ早く・多くの受贈者に・長期間続けることが改正後の鉄則です。

田中由美が見てきた改正前後の相談事例

相談の現場では、「改正を知らずに継続してきた方」と「改正を受けて早めに動いた方」で、将来の見通しが大きく異なります。私が実際に受けてきた相談から、典型的な2つのケースを紹介します。

【事例A】改正を知らずに続けていたケース

Aさん(60代)は、父から毎年110万円の贈与を10年間受けていました。「もう相続税対策は十分」と安心していましたが、改正を知ってショックを受けました。父が2031年以降に亡くなった場合、直近7年分(最大670万円)が相続財産に戻ります。ただし残り8〜10年前の3年分(330万円)は加算されないため、長期間行ってきたこと自体は意味があります。改正後の計画を税理士と確認し、今後は孫への贈与を優先する方針に切り替え、精算課税の活用も含めて見直すことになりました。「過去の贈与を後悔するより、今できることを最大化する」という考え方が重要です。

教訓:改正の影響を定期的に確認し、計画を見直す習慣を

【事例B】改正を機に計画を見直したケース

Bさん(55歳)は改正のニュースを知り、すぐに税理士に相談しました。父(80歳)の財産は約1億円で、相続税が発生する規模。毎年の暦年贈与を父だけでなく、母からも始め、受贈者を子2人・孫3人に広げました。合計5人×2人(父母)×110万円=1,100万円/年の贈与を開始。7年後には7,700万円が相続財産から外れる計算です。また、値上がりが見込まれる株式は相続時精算課税で父から移転。役割分担を明確にした総合対策に切り替えました。

教訓:改正を機に「贈与者を増やす・受贈者を増やす・早めに開始」が有効

生前贈与の対策を考える日本人夫婦のイメージ

改正後の暦年贈与の賢い続け方:実践的な対応策

改正後も暦年贈与は有効ですが、より計画的に行うことが重要になりました。以下のSTEPで対応策を確認しましょう。

STEP 1:贈与者の年齢と健康状態を確認する

贈与者の年齢が70歳を超えている場合、7年以上継続できるかが焦点になります。70歳ならあと15年以上の余命が期待でき、贈与8年目以降に節税効果が出始めます。75歳以上の場合は、7年以上継続できるか不確実なため、暦年贈与一本槍ではなく精算課税や他の手法も組み合わせることを検討します。健康状態によっては贈与そのものができなくなるリスクもあるため、元気なうちに計画を立て実行することが何よりも重要です。

STEP 2:受贈者を増やして贈与額を拡大する

年110万円×1人では7年で770万円の贈与ですが、子3人・孫3人の合計6人に贈与すれば7年で4,620万円を移転できます。加算対象になるのは最大670万円×6人=4,020万円ですが、それでも8年以降は全額が相続財産から外れます。受贈者を増やすほど節税のスピードが上がります。特に孫への贈与は生前贈与加算の対象外なので、孫が多い場合は孫への贈与を最優先に考えることで節税効果を最大化できます。ただし、受贈者の生活状況・教育費の必要性・税申告の手間も考慮して計画を立てましょう。

STEP 3:精算課税と役割分担する

父は相続時精算課税で値上がり期待の株式や不動産を移転し、母は暦年課税で毎年コツコツ贈与するという役割分担が有効です。精算課税と暦年課税は「贈与者が異なれば」同時に使えます。父からは精算課税で大きな財産を動かし、母からは暦年贈与を長期継続する組み合わせで、異なるリスクに備えた総合対策が立てられます。それぞれの制度の特性を活かすことで、贈与額を最大化しながら税務上のリスクを分散できます。

STEP 4:贈与の証拠を必ず残す

7年分の記録が必要になるため、贈与契約書・通帳の振込履歴・印鑑の独立性(受贈者が自分で管理)が一層重要になります。贈与が「名義預金」と認定されると加算対象外のつもりだったものが相続税の対象になるリスクがあります。毎年の贈与契約書の作成と、受贈者が自分で管理する口座への振込が基本です。また、贈与のたびに「贈与年月日・贈与者・受贈者・贈与額・贈与財産の内容」を記録した「贈与記録ノート」を作成しておくと、7年後の税務調査への対応が格段に楽になります。家族全員で共有できるフォルダやファイルに保管し、定期的に確認する習慣をつけましょう。将来の相続発生時に家族が困らないよう、記録の整理は早めに始めることをお勧めします。

生前贈与加算の対象にならない贈与の活用

生前贈与加算は「相続や遺贈で財産をもらった相続人」への贈与が対象です。逆に言えば、加算対象外になる方法もあります。また、特定の目的の贈与については非課税特例があり、加算の対象外になる場合があります。

贈与の種類 生前贈与加算の対象 ポイント
暦年贈与(相続人へ) 対象(7年以内) 改正の影響を直接受ける
暦年贈与(相続人以外・孫等) 原則対象外 孫(子がいる場合)への贈与は加算されない。ただし代襲相続人になる場合は対象
住宅取得資金の非課税贈与 非課税部分は対象外 非課税限度額を超えた部分は暦年課税となり加算対象になりうる
教育資金の一括贈与(非課税) 管理残額に注意 贈与者死亡時の残額は相続財産に加算される(2023年改正)。適用条件を要確認
相続時精算課税の贈与 7年ルールは非適用 精算課税は全額を相続財産に合算する別ルール(年110万円基礎控除分は除く)
結婚・子育て資金の一括贈与 管理残額に注意 贈与者死亡時の管理残額は相続財産に加算。利用には要件あり

特に注目すべきは「孫への贈与は原則として生前贈与加算の対象外」という点です。子が生存している場合、孫は通常の相続人ではないため、孫への暦年贈与は7年ルールの影響を受けません。これを利用して、孫への贈与を積極的に行うことが改正後の有力な対応策の一つです。ただし、孫が代襲相続人になる場合(子が先に死亡している場合)は加算対象になるため注意が必要です。

改正後の生前贈与シミュレーション:具体的な数字で確認する

改正後の影響を具体的な数字で確認しましょう。前提として、2031年以降に亡くなった場合(7年フル適用)を想定します。

【ケース①】子2人に毎年110万円ずつ10年間贈与した場合

  • 総贈与額:110万円×2人×10年=2,200万円
  • 相続財産に加算される額(7年フル):直前3年分330万円×2人+延長4年分(440万円-100万円)×2人=1,340万円
  • 相続財産から外れた額:2,200万円-1,340万円=860万円
  • もし相続税率が20%なら:860万円×20%=172万円の節税効果

→ 7年以上続けた分だけ確実に節税効果が出る

【ケース②】孫3人に毎年110万円ずつ10年間贈与した場合(子が存命)

  • 総贈与額:110万円×3人×10年=3,300万円
  • 相続財産に加算される額:孫は相続人でないため加算なし(代襲相続でない場合)
  • 相続財産から外れた額:3,300万円(全額)
  • もし相続税率が20%なら:3,300万円×20%=660万円の節税効果

→ 孫への贈与は改正後も7年ルールの影響を受けない強力な手段

【ケース③】子1人に10年間+孫2人に10年間、父母から贈与した場合

  • 父から子:110万円×10年=1,100万円(うち加算:670万円、非課税:430万円)
  • 母から子:110万円×10年=1,100万円(うち加算:670万円、非課税:430万円)
  • 父から孫2人:110万円×2人×10年=2,200万円(加算なし・全額非課税)
  • 総贈与額:4,400万円、相続財産から外れる額:4,400万円-1,340万円=3,060万円
  • 相続税率20%なら:3,060万円×20%=612万円の節税効果

→ 父母・子・孫を組み合わせた総合贈与が最大の効果を生む

改正前後で変わらないこと・変わったことを整理する

改正を機に「暦年贈与は意味がなくなった」と誤解している方も多いですが、変わっていないことも多くあります。正しく理解し、誤った情報に惑わされないために整理しましょう。

変わらないこと

  • 年110万円の基礎控除は継続(贈与税ゼロ)
  • 贈与契約書の必要性・重要性は変わらない
  • 孫(相続人でない者)への贈与は加算対象外
  • 7年を超える贈与は相続財産から完全に外れる
  • 贈与時に贈与税を支払った場合は相続税から控除される
  • 長期間継続するほど節税効果が大きくなる基本原則(8年以上続けた分から効果が出始める)

変わったこと

  • 加算対象期間:3年→7年(2024年以降の贈与から段階適用)
  • 7年フル適用開始:2031年1月1日以降に亡くなった場合から(それ以前は段階的)
  • 延長4年分(4〜7年前)に100万円の総額控除あり(緩和措置)
  • 亡くなる直前7年以内の節税効果が制限された(以前の3年から延長)
  • 長期的・計画的な贈与の重要性がさらに高まった
  • 受贈者を増やし早期に開始する戦略がより一層有効になった

「名義預金」と認定されないための注意点:7年分の記録管理

7年ルールへの延長で、贈与の記録管理の重要性がさらに高まりました。相続税の税務調査では、「贈与があったかどうか」を税務署が厳しくチェックします。記録が不十分だと、せっかく行った贈与が「名義預金」と認定され、相続財産に加算されてしまう恐れがあります。

名義預金と判定される典型的なパターン

  • 受贈者(子・孫)が口座の存在を知らない
  • 通帳・印鑑・カードを贈与者(親)が管理している
  • 受贈者が実際に使っていない(残高がそのまま)
  • 贈与契約書がなく、振込の事実だけがある
  • 贈与税の申告をしていない(110万円超の場合)
  • 毎年同額・同日の振込で「定期的な資金移動」と見なされる

名義預金と言われないための7つの対策

  1. 毎年贈与契約書を作成する:日付・贈与者・受贈者・贈与金額・贈与財産を記載し、双方が署名押印
  2. 贈与者の口座から受贈者の口座への振込で行う:現金手渡しは避ける。通帳に記録を残す
  3. 受贈者名義の口座は受贈者自身が管理する:通帳・印鑑・カードすべて受贈者が保管
  4. 受贈者が贈与された財産を実際に使う:使わずずっと積み立てている場合は説明が必要
  5. 贈与の金額・時期を毎年変える:同額・同日では「あらかじめ決まっていた」と見られやすい
  6. 110万円を超えた場合は贈与税の申告をする:申告の有無が贈与の証拠になる
  7. 贈与契約書・通帳のコピーを7年以上保管する:税務調査では過去の贈与について確認されることがある

7年分の記録を保管するのは手間がかかりますが、税務調査で名義預金と認定されたら節税効果がゼロになるだけでなく、延滞税・加算税が課せられる可能性もあります。面倒でも毎年の記録をきちんと残すことが、長期的な節税の基本中の基本です。また、贈与契約書をフォーマット化し、毎年使い回せるテンプレートを準備しておくと管理が楽になります。

暦年贈与の加算と相続税の計算:二重課税にならない仕組み

「贈与税を払ったのに、相続税でも課税されたら二重課税になる」と心配する方がいますが、生前贈与加算には二重課税を防ぐ仕組みが組み込まれています。加算された贈与財産に対して過去に贈与税を支払っていた場合、その贈与税額は相続税から控除されます。

生前贈与加算があった場合の相続税計算の流れ

STEP 1

相続財産に贈与財産を加算

相続財産+加算対象の贈与額=課税対象

STEP 2

相続税を計算

加算後の課税対象に対して相続税率を適用

STEP 3

贈与税額を控除

すでに支払った贈与税を相続税から差し引く

結果

実際に納める相続税

相続税-贈与税控除額

この仕組みにより、二重課税は防がれています。ただし、相続税率のほうが贈与税率より低い場合(財産規模が小さい場合)は、贈与税控除額が相続税を上回り、還付が発生することもあります。逆に相続税率が高い場合は、相続時に追加納税が必要になります。贈与税と相続税の関係は複雑なため、贈与を行う前に相続税額の試算を税理士に依頼し、実際の手取り額を確認することが重要です。

年代・財産規模別:改正後の最適な生前贈与戦略

改正後の生前贈与戦略は、贈与者の年齢と財産規模によって大きく異なります。自分のケースに当てはまる戦略を確認しましょう。

贈与者の年齢 財産規模 推奨される戦略 優先度
60歳未満 1億円以上 暦年贈与(子・孫に複数人へ)+精算課税で値上がり資産を早期移転 ★★★ 早期開始が最重要
60〜70歳 5,000万円〜1億円 暦年贈与(孫への贈与を優先)+住宅・教育資金の非課税特例の活用 ★★★ 孫活用が鍵
70〜75歳 3,000万円〜1億円 孫への暦年贈与を最優先。値上がり資産は精算課税。子への暦年贈与も継続しつつ効果測定 ★★☆ 孫+精算課税
75歳以上 3,000万円以上 精算課税で早期に大きく移転(暦年の7年より確実)。孫への暦年贈与も並行。生命保険の活用も検討 ★★☆ 精算課税+保険
任意 3,000万円未満 相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)以内なら相続税不要。過度な節税対策は不要。ただし財産が増える可能性がある場合は早めに確認を — 優先度低

上表はあくまで目安です。相続人の数・財産の種類・家族構成によって最適な戦略は変わります。特に70歳を超えてから初めて贈与対策を考える場合は、暦年贈与の7年ルールの効果が限定されるため、精算課税や生命保険の活用など、より幅広い手法を組み合わせることが重要になります。相続税の専門家(税理士)に試算を依頼し、自分に合ったプランを作ることをお勧めします。

暦年贈与と精算課税の使い分け:改正後の最新比較

生前贈与の二大手法である「暦年課税(暦年贈与)」と「相続時精算課税」の使い分けは、改正後もより重要になりました。どちらを選ぶか、あるいは組み合わせるかを正確に理解しておきましょう。

比較項目 暦年課税 相続時精算課税
基礎控除 毎年110万円(贈与者ごと) 毎年110万円(2024年改正で新設)
非課税限度額 110万円/年(超過分に累進課税) 2,500万円(累積・超過分は一律20%)
相続財産への加算 死亡前7年以内の贈与を加算(延長後) 全贈与額を加算(年110万円控除後)
取り消し 毎年選択可能 一度選択したら取り消し不可
向いているケース 長期的に少額ずつ移転・孫へ贈与・将来の財産評価が変わらないケース 早期に大きく移転・値上がり資産・事業承継・住宅資金支援
向いていないケース 贈与者が高齢(目安75歳以上)で7年以上の継続が不確実なケース 値下がりが予想される財産・相続税がかからない規模の財産
組み合わせ 父→精算課税、母→暦年課税(贈与者が異なれば同時利用可能)

2024年の改正で精算課税にも年110万円の基礎控除が新設されたため、両制度の差が縮まりました。ただし、暦年課税は「7年超えた分は完全に非課税」という大きなメリットがある一方、精算課税は「2,500万円まで一気に移転できる」「値上がり資産の評価額を固定できる」という強みがあります。どちらか一方に絞るのではなく、贈与者ごと・財産の種類ごとに使い分けることが改正後の正解です。

生前贈与加算の改正で見直すべき相続対策の全体像

7年ルールへの延長は、相続税対策全体の見直しを促すものです。暦年贈与だけでなく、生命保険・小規模宅地等の特例・精算課税・家族信託など、複数の手法を組み合わせた総合的な相続対策が重要になります。

① 生命保険の非課税枠活用

死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」まで非課税。相続財産を直接減らしながら、受取人(相続人)に確実に財産を渡せる手法。生前贈与加算の対象にならないため、7年ルールの影響を受けない。相続対策の柱の一つとして見直しを。

② 小規模宅地等の特例の確保

自宅の土地(特定居住用宅地等)は330㎡まで80%減額できる。精算課税で自宅を早期移転すると特例が使えなくなるため注意が必要。不動産の生前贈与と小規模宅地等の特例はトレードオフになる場合があり、専門家の試算が必須。

③ 家族信託の活用

認知症になると贈与行為が法的に困難になる。家族信託を設定しておくことで、認知症後も受託者(子等)が財産を管理・運用でき、計画的な資産移転が継続できる。贈与対策と並行して認知症対策も行うことが重要。

④ 遺言書の作成・定期的な見直し

生前贈与を進める中で遺産分割の方向性が変わる場合がある。誰に何を残すかを明確にした遺言書を作成し、贈与計画と整合性を保つことが重要。遺言書は定期的に見直し、家族の状況変化に合わせて更新する。

7年ルールへの対応は「暦年贈与を増やすだけ」ではありません。生命保険・小規模宅地等の特例・精算課税・家族信託・遺言書など、複数の手法を組み合わせた総合的な相続対策として捉えることが大切です。それぞれの手法には得意・不得意があるため、専門家に依頼して自分の財産状況・家族構成・健康状態に合ったプランを作ることを強くお勧めします。

贈与税の申告手続き:改正後に確認すべきポイント

暦年贈与を行う場合、年間110万円以内であれば贈与税の申告は不要です。ただし、申告不要でも贈与の記録は必ず保管しておく必要があります。特に改正後は7年分の記録が求められるため、申告手続きの知識もあわせて確認しておきましょう。

申告が必要な場合

  • 年間の贈与合計が110万円を超える場合(暦年課税)
  • 相続時精算課税を初めて選択する年(届出書が必要)
  • 精算課税で贈与を受けた年(毎年申告が必要)
  • 住宅取得資金・教育資金等の非課税特例を受ける場合

申告の手続き

  • 申告期限:贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日
  • 提出先:受贈者(もらった側)の住所地の税務署
  • 提出書類:贈与税申告書(第一表・第二表)+必要な添付書類
  • e-Taxによるオンライン申告も可能

保管すべき書類(7年以上)

  • 贈与契約書(毎年作成したもの)
  • 振込の記録(通帳のコピーまたはネットバンクの明細)
  • 贈与税申告書のコピー(申告した場合)
  • 受贈者の通帳・印鑑の管理状況を示すもの

7年ルールへの延長により、「7年前の贈与の記録が必要」になる可能性があります。現時点(2026年)から7年前は2019年です。2019年〜2023年の贈与記録は改正前の3年ルールが適用されますが、2024年以降の贈与については2031年以降に亡くなった場合に7年分の記録が税務調査で確認される可能性があります。早めに記録の整理を始め、7年分を安全に保管できる体制を整えておきましょう。

よくある質問(Q&A)

Q. 2023年以前に贈与した分は7年ルールが適用されますか?

A. いいえ、適用されません。生前贈与加算の延長は「2024年1月1日以降に行われた贈与」から段階的に適用されます。2023年12月31日以前の贈与は、いつ亡くなっても改正前の3年ルールの対象です。2020年に行った贈与は、2031年以降に亡くなっても加算対象にはなりません。過去に長期間贈与を続けてきた方は、2023年以前の部分については改正の影響を受けないため、これまでの贈与計画の価値は守られています。今後も贈与を続けるにあたり、2024年以降の贈与が7年ルールの対象になることを意識して計画を立てましょう。

Q. 今65歳で贈与を始めたいのですが、意味がありますか?

A. 十分に意味があります。65歳で始めて85歳まで生きた場合、20年間の贈与のうち最後の7年分(最大670万円)が加算されますが、残り13年分は加算されません。子・孫に複数人贈与すれば、総額では大きな節税になります。また、孫への贈与は加算対象外なので、孫への贈与を優先するのも一つの方法です。早く始めるほど有利です。「今から始めても遅い」と思わず、今日から動き始めることが最善の対策です。贈与を始めた時点から節税の時計が動き始めると考えてください。

Q. 110万円以下の少額贈与でも生前贈与加算の対象になりますか?

A. 相続人への贈与であれば、110万円以下でも生前贈与加算の対象です。ただし、4〜7年前の贈与については総額100万円の控除があります。つまり4〜7年前の贈与が合計100万円以下であれば加算額はゼロになります。この緩和措置を活用して、少額の贈与(年25万円以下など)を続ける方法も検討できます。贈与額を抑えることで加算リスクを下げながら、長期的には確実に財産を移転できます。財産規模が大きい場合は110万円フルに贈与して長期継続するほうが得策ですが、少額でも継続することに意味があります。

Q. 相続放棄した人への贈与は生前贈与加算の対象ですか?

A. 相続放棄した人への贈与は加算対象外です。生前贈与加算は「相続や遺贈によって財産を取得した人」への贈与が対象です。相続放棄した人は相続によって財産を取得しないため、加算の対象になりません。ただし、相続放棄するかどうかは贈与時点では分からない場合が多く、事前にコントロールするのは難しい点に注意が必要です。相続放棄は相続が発生した後に行う手続きであり、生前に「将来放棄する人に贈与しよう」と計画しても、実際に相続が発生したときに放棄するかどうかは当事者次第です。生前贈与加算の対象になるかどうかは、相続発生時点の相続の状況によって確定します。贈与戦略を立てる際は、この点も専門家と相談のうえ確認してください。

この記事のまとめ

生前贈与加算改正のポイントと対応策

  • 2024年1月1日以降の贈与から段階的に加算対象が3年→7年に延長
  • 7年フル適用は2031年1月1日以降に亡くなった場合から
  • 延長した4〜7年前の贈与には総額100万円の控除(緩和措置)あり
  • 7年を超えて贈与を続ければ、それ以降の贈与は相続財産から完全に外れる
  • 孫(相続人でない者)への贈与は原則として生前贈与加算の対象外
  • 対応策:贈与者を増やす・受贈者を増やす・早期に開始・長期継続する
  • 精算課税と暦年課税を組み合わせた総合対策が改正後の基本
  • 贈与の記録(贈与契約書・振込履歴)は7年分の保管が必須

生前贈与加算の改正は、長期的な相続対策の見直しを迫るものですが、早めに対策を始めれば十分に節税効果を得られます。自分に合った最適な贈与計画は個人の財産状況・家族構成によって異なります。「贈与を始めるのが早ければ早いほど有利」という基本原則は改正後も変わりません。今すぐ家族で話し合い、専門家に相談して行動に移すことが最善の対策です。まずは相続税の専門家に相談し、改正後の計画を立て直すことをおすすめします。なお、贈与計画は一度立てたら終わりではなく、家族の状況変化・税制改正・財産状況の変化に合わせて定期的に見直すことも重要です。改正への正しい理解と適切な対応が、将来の家族を守ります。

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